78話 ゲーム大会

 依然、世界各国、特に日本では小型兵器の襲来が相次いだ。ハルカが殺された後は鋼鉄兵器も姿を見せず、どこからも大きな被害の報告はあがっていない。

 こんなことを言っては不謹慎ではあるのだが、ハクトたち対飛隊は今この時は暇を持て余しているのだった。もちろん、日々訓練はするのだけども、それだけだ。

「やっほ~!また来たよ~」

 なんだか久しぶりに聞いた声と共に、部屋の戸が開いた。いつだったか遊びに来た、ハクトの幼馴染のアキナだ。

「また突然来て……今度はどうしたんだよ」

「なっ!その言い方じゃあ嬉しくないみたいじゃんかあ」

 ハクトが戸惑っていると、アキナはオーバーに口を膨らませて見せた。

「……って言っても私が寂しいから来ちゃっただけなんだけどね!てへぺろ☆」

 いつかその舌を出す時に、その犬歯に刺さりそうな気がするのはハクトだけではあるまい。

「なんかして遊ぼうよ~!琴里ちゃんとメッシャちゃんもさ!」

「ん、じゃ何する?スマ〇ラやる?太鼓〇達人やる?」

「いいネ!みんなでゲームなんて滅多にやらないシ」

 なんで琴里とメッシャも乗り気なんだか……。前に一回あっただけだろうに。

 しかし、ゲームというのはお互いを知らなくても楽しめるものである。オンラインゲームなど本名すら知らないでやっているのだから。交流するのにはいい道具だ。

「うーん、私はマリ○カートとかがいいな~」

「よし、じゃ決定ね」

 琴里はいつの間に持ち込んだのか、タンスから携帯ゲームを4つ取り出してそれぞれに配った。もちろんハクトにも。

「え、僕もやるの!?」

「当たり前でしょ~?人数が多い方が楽しいんだからさ」

 アキナが楽しそうなのは何よりなんだが……ハクトはどうにも気が進まない。最終的に受け取ったが。

 ゲームは古典的なボタンで操作するゲームで、基本はアクセルブレーキハンドルと、アイテムを使うボタンしか使わない。

 スタート直後は混み合って互いによくぶつかる。

「やったなこのやろ~!」

 アキナとメッシャはワンアクションごとに声に出しているが、琴里とハクトはゲームをするときに黙るタイプだ。

 結果、最後にド派手なアイテムを使って琴里がごぼう抜きし、一位になった。

「やられた~!やっぱ琴里ちゃんは強い!流石プロゲーマー」

「まあ、このくらい当然だよね」

「もういっちょやろう!もういっちょ」

 普段、宿舎では暇を持て余しているからか、アキナは異様な熱中ぶりだった。かく言うハクトも、久し振りのゲームで内心楽しかったのも事実だ。

 そんなことも相まって、対飛隊ゲーム大会は夕飯まで続いたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る