43話 反撃
『琴里、メッシャ、離れた場所から攻撃を繰り返してくれ』
動かなくなった美鈴を見つめ、呆然としていた琴里の耳にエルの声が飛び込んできた。エルの声は震えていた。怒りなのか、悲しみなのか、はたまた恐怖なのかは分からない。
「……でもあんなヤツどうやって倒すつもり!?」
琴里の声もまた震えていた。声だけではない。指も恐怖のために小刻みに震え、まともにキーボードを打てる状況ではなかった。呼吸も乱れ、耳鳴りがし、動悸が治まらない。操作主を失った機体は上空で同じところをグルグルと旋回している。
『……信じてくれ。頼む』
琴里は遠目からエルがハクトを運んだのを見ていたが、そう言ったすぐ後にエルの影はビル群の下方に消えた。信じろとは言ったって、目の前で仲間が殺されているのに勝てるという希望を再建するのは人間、しかも女子高生には到底難しい。
『琴里』
その時聞こえてきた声の主は、意外にもメッシャだった。
『こいつ、止められるのはワタシたちしかいないんだヨ。ダカラ、ワタシたちが戦わない、みんな勝てない』
メッシャは気の動転している琴里を諭すように一言一言噛み締めて言った。すると、その直後に琴里から少し離れたところから、メッシャが弾を撃ち込み始めた。全部弾かれることは分かっているけれども、ただエルの言葉を信じて、何度も何度も弾を撃ち続けている。
メッシャの姿は琴里の微かな希望を復活させた。琴里は自分の頬を両手でピシャリと叩くと、腕を捲ってキーボードの上に乗せた。
「標的捕捉、回転弾発射用意」
声だし確認しながら戦闘機の高度を下げ、画面に映る映像を注視する。
「発射!」
エンターキーを叩くと戦闘機下部からミサイルが発射され、兵器に向かって飛んでいく。兵器は先程同様アームで防ぐが、ミサイルの爆風に少しばかりよろめいたように見えた。
「マシンガン発射用意」
機体を反転させると、さらに琴里は機体横についているマシンガンの向きを修正して再び兵器の頭上へ向かわせた。
「発射」
左右からマシンガンが連続で発射される。うち5、6発が着弾し、爆発した。兵器も流石にこの数を受け止めきれなかったようだが、この程度の攻撃ではその胴体はビクともしない。
しかし、これでいいのだ。あくまで琴里とメッシャは陽動要員。
「任せたよ、エル」
琴里はエルに希望を託し、少ない残弾で攻撃を続け、その時を待った。
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