41話 第一の強敵
『兵器の場所は上野ビル街。兵器の数は一機だ』
首からエルの声が聞こえてくる。上野ビル街ということは、ハクトの初戦闘のときにエルが操縦していた兵器が壊れたのと同じ場所だ。
近場への飛来は久し振りだ。ハクトたちは基地から直接隊列を成して現場へ飛んでいく。
前回の襲撃の爪痕が色濃く残る、ビルがいくつも倒壊しているビル街で、その兵器は暴れ回っていた。ハクトたちが到着した丁度その時、兵器はまだ被害を受けていなかったビルによじ登り、その上部を切り崩した。60階建てのビルの30階以上が木っ端微塵になり、その瓦礫が下階層を崩壊させ、ビル丸ごと一棟が粉塵と化した。
ビルの中にはほぼ全員が逃げ残っていたはずだ。前の通りにも大量に逃げている人がいたが、その上にビルの瓦礫が無慈悲に降り注いだ。避難が間に合わなかったどころの話ではない。この一瞬で、ハクトたちの目の前で、数千人の命が失われた。瓦礫の中にはポツポツと赤く染まった部分も見受けられる。
『……駄目だ。今回は避難誘導をしている暇がない。逃げ遅れた人に構うな。兵器破壊が先決だ』
エルの苦し紛れの指示が聞こえた。美鈴は頭を抱え、目を強く瞑っている。
『ラジャー。ネットかける』
琴里がパネルを操作すると、すぐに轟音が聞こえてきた。そして、一際大きい音が聞こえたかと思うと、筒上の物が高速で兵器に向かって落下し、着弾寸前で網が飛び出し兵器に覆い被さった――かに見えた。
次の瞬間、網は弾かれ、近くのビルに激突し、破壊した。兵器が網がかかる時にピンポイントでアームを振ったのだ。初めての事態に更にハクトたちの緊張は高まった。
『も、もう一度やってみる』
琴里は顔に焦りの色を浮かべながら、戦闘機を旋回させ、センサーのついていない兵器後方から再び攻撃を仕掛けた。しかし、兵器は見えていないはずなのに、後方からの攻撃も弾き飛ばし、そのまま隣のビルに手をかけた。
『まずいよ。もうネットの残弾ない』
琴里の声はどういう心情からか震えている。叫びにも近いような声だ。
『仕方ない。捕獲は諦め、直接攻撃に入る。美鈴、メッシャ、頼む』
『OK』
メッシャが返事をし、攻撃の姿勢をとる。美鈴も返事はしなかったものの、矢を取り出して弓を構えた。
そして、二人がほぼ同時に打ち出し、バレーボールと矢が一直線に兵器に向かっていく。……が、それすらもアーム一振りで弾かれ、離れた場所で爆発を起こした。
『……次は出来るだけ真上から撃て。真上はアームが届きにくいから同時に撃てば迎え撃ちにくいはずだ』
エルの指示で、すぐさま二人は兵器の頭上へ移動する。そして、二人で息を合わせ、真下に向かって全力で弾を撃ち込んだ。
その時だった。兵器はそのしなやかなアームを使い、横に素早く飛んで攻撃を交わした。――だけでなく、そのまま真上に飛び上がり、弾を撃った直後で隙だらけのメッシャと美鈴の目の前に現れた。
『えっ……』
次の瞬間、兵器のアームが二人に向かって振り下ろされた。
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