40話 返答

 夕飯を食べたあと、各々、いつものように決められたペアで布団に入って電気を消す。今日は琴里と美鈴、ハクトとエルの組み合わせで、メッシャが一人床で寝る日だった。

 ――告白から半日しか経っておらず布団の中で琴里と美鈴は少し距離をとって何も話さなかった。暫くは琴里も訓練のことなんかを考えて気を紛らせようとしたのだが、やはりどうしても気まずく、むくりと起き上がってベッドを降りた。そのまま外へ出て、夜風に当たりながらゲームでもしようと思ったのだ。

 しかし、その右腕を後ろから誰かが掴んで引き留めた。ビクッとして振り返ると、さっきまで横になっていた美鈴がベッドの上に四つん這いになり、右腕を伸ばして琴里の右手首を掴んでいるのが、夜間照明に照らされてうっすらと見えた。

「まって」

 美鈴はそう言って琴里の目をまっすぐに見つめてくる。

「話したいの」

 美鈴の真摯な物言いに琴里は言い訳をして逃げるようなことができるはずもなく、内心不安を抱きながらベッドの美鈴の横に戻った。今度は二人向かい合わせになり、おでこがくっつくくらい近くにいた。

「私ね、あのあとずっと考えてたの」

 美鈴は伏し目がちに話し出す。琴里も、不安と恥ずかしさでまともに美鈴の顔が見れなかった。

「私、レズビアンとかそういう人には今まで会ったことなかったし、よく分からないから琴里が私のこと好き、とかもよく分からないけど……でもね、多分私も同じくらい琴里のことが好きだと思う」

 琴里は瞳孔を開いて美鈴の顔を凝視した。美鈴は少し顔を赤くしてもじもじしている。

「で、でも、美鈴は相手が男の人じゃなくてもいいわけ?」

「よく考えてみたけど、でも男の人と女の人、どっちが好きかなんてやっぱり分からない。だから、琴里が私を好きだったら、それに応えたい」

「……でもでも、知ってるかもしれないけどあたし、めっちゃ変態だから。美鈴が嫌がってんのに無理にエッチなことさせちゃうかもしれない。それでもいいの?」

 最終確認だった。もう琴里の想いは暴走寸前だった。ここで拒否してくれなければもう止めることはできない。

 それに対し、美鈴は上目遣いで琴里の顔を覗いた。そして、また下に目を逸らすと、ゆっくり小さく頷いた。

 次の瞬間、琴里はマウストゥマウスでキスをしていた。お互いの口から吐息が漏れる。もう歯止めは利かなかった。利かせるつもりもなかった。

 二人の夜の営みはそのまま丑の刻まで続いた――。


※ ※ ※


 部屋に目覚まし時計の音が響き、ハクトがむくりと起きる。その目には既に着替え終わってテレビを見ている琴里と美鈴が映った。

「あれ?二人とも今日は早いね」

「ちょっとシャワー浴びてたんだわー」

「朝にシャワーってちょっと新鮮でした」

「ふーん?」

 昨日は二人の様子がギクシャクしてたようだったが、どうやら今は元の通りらしい。

「さーて、今日も1日頑張りますか……」

 ――そう、ハクトがベッドから立ち上がった瞬間だった。

 けたたましいサイレンと共に部屋の赤色灯が回りだす。この戦闘が対飛来兵器特別攻撃隊の運命を大きく変えることになろうとは、ハクトも、そして他のメンバーも知る由もなかったのだった――。

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