30話 反省会
「と、いうことで、初めての勝利を祝してカンパイ!」
ハクトがコップを掲げるが、その他は既に飲み食いを始めている。
「ねぇ、もうちょっと喜ばない?だってあれだよ?あの兵器倒せるの僕たちしかいないんだよ?」
「別に喜んでないワケじゃないけど、とりあえずケーキ食べようよっていう」
琴里の言葉にそれもそうかと、ハクトも自らが作ったケーキにフォークを入れた。アクシデントもあり、ちょっとクリームが足りない気もするが、美味しければなんでもいい。
「ケイク美味しいネ!」
メッシャはいつの間にか二切れ目に手を出している。
「そ、そんなに食べたら太りますよぉ」
「フトル?私、いくら食べても太らない体質ダカラ」
メッシャがケロリと答える。そこらの女子高生に言ったら袋叩きにされそうなセリフだ。
「ありえませんありえません!甘いモノを食べて太らないなんてそんなこと!」
「美鈴、認めるんだ……私たちは運命に抗うことはできない……」
落ち込みモードの美鈴に琴里も加わり、モグモグ食べるメッシャをじーっと目を細めて見ている。
「そうは言うけど、二人はそんな気にするほど太ってないよね?」
女心を知らないハクトは火に油を注ぐような一言を軽く口にしてしまう。
「太ってますよ!お腹とかお尻とかお肉がついてとれないんです!最近は訓練のお陰で少し引き締まりましたけど……それでもまだぽっちゃりの域を出ません!」
「そうかなあ。僕からしたら二人とも痩せすぎなくらいだと思うんだけど……僕は65kgあるけど、それよりある?」
「さ、流石にそれよりは軽いですけど」
でも男と女では比べられません!身長も違いますし、とハクト。
「確かに男女間で体重の違いはある」
ここでずっと黙々とケーキを食べていたエルが分け入ってきた。美鈴がほらみろ!と言わんばかりにハクトを指差す。
「一般的に女の方が皮下脂肪を蓄えようとし、体重が重くなる。美鈴くらいの身長であればハクトくらいの体重はあっても問題はないはずだ」
「……だそうです」
エルの言葉にハクトが便乗する。美鈴は琴里と顔を合わせて納得いかないという表情をしている。
「それにだな、体重のみで考えれば脂肪よりも筋肉の方が重いのだから、筋肉がつけばつくほど体重は重くなるはずだ。つまり、兵器を使用しての練習をしている限りは体重が減ることはないだろう」
「……つまり私もケーキおかわりしてもいいってことですか?」
エルの説明に完全に主張を折った美鈴は、涎をたらしながら残りのケーキを見つめている。
「どうせ練習で代謝が上がるのだから糖分や炭水化物を多少多くとっても問題はないだろう。もちろん、お腹いっぱいで動けないなんてことがないようにな」
「やったあ!」
エルからお許しが出るや否や、琴里と美鈴は残っていたケーキを自らのお皿に移して食べ始めた。美味しそうに食べてもらえるとハクトも作った甲斐があるというものだ。
「ちょっ(笑)美鈴ほっぺにクリームついてるしー」
「えっ!?嘘!どこ?どこ?」
琴里が美鈴のほっぺについたクリームを人差し指でとって舐めるのはどこから見ても平和な日常の1コマにしか見えないのだが……しかしここは仮にも軍である。
「では、今後の戦闘について話をする」
お皿を片付け終え、一段落ついたところでエルが口を開いた。
「ひとまず、今後も今回と同じように鋼鉄兵器であれば、琴里が敵の動きを止め、私とハクトが避難誘導、美鈴とメッシャが攻撃という形をとる」
「了解です」
生真面目な美鈴は真剣に相槌を打つ。
「それ以外の兵器だった場合はその場で指示をする。勝手な行動はするな。そして、鋼鉄兵器だとしても油断はできない。常に細心の注意を払って戦闘に臨むように」
4人とも真面目にエルの話を聞いていたのだが、まさかこの後この言葉の意味を痛いほど味わうことになるとは知る由もないのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます