23話 女子二人のバスタイム

 美鈴は夕ご飯の後、少し緊張していた。というのも、この後はお風呂の時間が待っているのだ。

 二日前に個性豊かな四人と同居し始めて、なんと初日に唯一の男であるハクトと一緒に入ることになってしまったから、その日のお風呂の時間のことは緊張のあまり覚えていない。昨日は一人で入れる日であったからゆっくり足を伸ばせたものの、今日はまた別の同居人と入らなければならない。

 そして、その今日のお風呂のパートナーというのが何に対しても興味なさそうな顔をしている琴里だった。女の子同士なのだからハクトの時よりは恥ずかしさは少ないものの、始終気だるそうにしている琴里は正直ちょっと苦手だった。

「今日は美鈴とお風呂か~」

 その眠そうな目でニヤニヤしながら美鈴の体を上から下まで眺める。その顔からはやはり感情が読み取れない。

 ――やっぱり苦手だ。

「そ、そうだね!早く入ろ!」

「そだね~」

 琴里がさっさと脱衣場に入ってしまったので、美鈴も後を追って中へ入る。琴里はなんの躊躇いもなく服を脱ぎ、その白い肌を顕わにした。

 美鈴も服を脱ごうとするが、目の前に人がいるとなんだか憚られる。とりあえず下着以外は脱いだが、そこでまごついている間に琴里は服を脱ぎ終わってしまった。

「じゃあうち先に入ってるから」

 タオルを片手に琴里はそのまま浴室へ行ってしまった。美鈴も緊張しているせいでブラのホックを外すのに手間取ったが、どうにかこうにか琴里の後を追って浴室に入った。

 琴里はこの短時間でもう洗い終わってしまったのか、頭にタオルを巻き、湯船に浸かっている。美鈴はまだ完全に羞恥心が抜けていないので、若干体をタオルと手で隠しながらバスチェアに座った。

 そして、シャワーを手に取り、お湯を出す。直前に琴里が使っていたためか、最初からお湯が出てきた。

 そのまま体を洗おうかと思ったのだが、その時湯船からザパッと音がした。目の前の鏡を見ると、琴里が美鈴の後ろに立っている。

「背中流すよ」

「えっ……えっ!?」

 想定外の言葉に耳を疑う。

「ほら、シャワー貸して」

 美鈴の頭は混乱していたが、断ることは憚られ、言う通りにシャワーを渡す。琴里はシャワーを受け取ると、ボディスポンジを使って泡を作り、美鈴の背中を擦り始めた。

「強くない?」

「あ、うん……大丈夫だよ」

 琴里は相変わらず何を考えているか分からない顔をしながらも、丁寧に美鈴の背中を流している。正直、意外だった。

 ……と、今度は美鈴の腕にも石鹸を付けて洗い始めた。

「え、ちょっ……背中だけでいいよ!後は自分でやるから!」

「別にいいじゃん。うちがやる気になってんだから」

 美鈴が自分だけ洗ってもらっている背徳感で断ろうとするが、琴里はやはり無表情で美鈴の体を洗い続ける。

 そして次の瞬間、琴里の二本の手が美鈴のたわわな胸を鷲掴みにした。

「ひぃやあぁっ!?」

 美鈴は突然の事に自分でも驚くくらい大きい声を出す。

「ちょっ……琴里ちゃ……何やって……」

 美鈴が琴里に問おうとしている間も、一度まとわりついた指はいやらしく美鈴の胸を揉みしだき、泡だらけにした。

「これが洗ってあげたお駄賃ってことで。最初に会った時から美鈴のおっぱい揉んでみたかったんだよね~」

 鏡にはそう言いながら楽しそうにニヤニヤしている琴里が映っていた。

「琴里ちゃん……恥ずかしいよ」

「女の子同士だから別に恥ずかしくないし?全く、なんでこんな発育がいいんだ!少し寄越せこのヤロー」

 琴里は悪態をつきながら胸を揉む手に更に力を入れた。

「琴里ちゃん……激しいっ」

 美鈴は顔を赤くして目を瞑っている。

 ……しかし、次の瞬間には琴里は何事も無かったかのようにシャワーで泡を洗い流し、「じゃ、うち先上がるわー」と美鈴を置いて戻っていってしまった。

 後に残された美鈴は暫くぽかんとしていたが、火照った身体を冷ましてから軽く湯船に浸かった。

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