22話 同居三日目!
飛行訓練を終えたハクトの足と体幹はパンパンだった。バランスとるだけだと思われるかもしれないが、普段使わない筋肉を酷使するので、運動不足のハクトたちにはかなりきつい。
さらに平行に飛ぶには常時体を反らなければならないので、幾分バランスがとりやすくなっているといっても、厳しいものがある。
まあ若干一名――メッシャはすっかり使いこなして、上下左右に旋回、宙返りして遊んでいたが。
そして、筋肉痛になった足を労りながらエルお手製の夜ご飯(きつい訓練だったからか肉が多めだった)を食べ、毎度憂鬱なお風呂タイムが近付いていた。
「今日はお前と入るんだったな、ハクト」
食器の片付けを済ませたエルが着替えとタオルを持ってハクトのもとへやってくる。最近は美鈴が食器洗いを手伝っているので、すぐに片付くようだ。
ハクトは「あはは……」と苦笑いを浮かべる。初めてエルと同居し始めたときに「一緒に入るなんて選択肢はない!」なんて言っていたくせに、それが何をどう間違えばほぼ初対面の女の子たちとお風呂に入ることになるのか。
例の如く脱衣場の前の廊下でエルがタオルを身に付けるのを待ち、次いでハクトがタオルを腰に巻く。
浴室に入ると、既にエルは身体を洗い終わっていたようで、湿った髪の毛は水面につかないようにクルクルと巻いてある。その幼さ残る体つきは、ハクトに妹を思い出させた。
ハクトもさっとシャワーを浴び、足を折って湯船に……と思ったのだが、そのときエルがおもむろに立ち上がった。
「今日はお前も疲れてるだろう?私は先に上がるから、しっかり足を伸ばせ」
そう言ってエルは返事も聞かず、さっさと脱衣場へ戻ってしまった。
「え、あ、ありがとう」
ハクトの間抜けな感謝の言葉は小さな浴室にわんわんと反響した。
今日は誰と寝るものかとドキドキしていたハクトだったが、今日は一人で寝れるらしい。内心ガッツポーズで床に敷いてある布団にもぐったのはいいのだが、しかし今日酷使した腰が固い布団に悲鳴を上げ、結局この日もいつもとは別の意味で寝られなかったハクトなのだった。
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