第26話白浜の旅

18-26    白浜の旅

七月に成って,哲斗は大学院を勝手に卒業してしまった。

オーストラリアの女、下宿先のマンションも総て解約の手続きをしたが、元々頭が悪く直ぐに帰れると思っていたのに、学校からしばらく待てと云われて待機状態に成って今はホテル住まい。

卒業証書も貰わずに帰る予定だったのだ。


結局悠斗は彩子を海に連れて行く事にして、和歌山の白浜に行ってそのまま実家に帰る事にしたのだ。

バイトの名目が無くなって、東京に居られない状況に成っていたのだ。

修平は勝部に頼んで片岡を新幹線に行かせて、彩子の肝を潰してやろうと考えていたのだ。

結衣も同じ新幹線で帰る事にしていたのだ。

「白浜に行こうか?」

「バイトが?」

「休んで行こうよ、施設にも一度帰りたいだろう」

その言葉に完全に結衣は「一度みんなに会いたい、園長先生にも会いたい」

一度切れた思いは大きく成って、結衣はバイトを一週間休んで悠斗と一緒に新幹線に飛び乗ったのだ。

生まれて始めて乗るグリーンに興奮の結衣、彩子は一人で異なる時間に乗せられる事に成る。

一時間早い新幹線に乗る悠斗と結衣、修平に言われて異なる時間を彩子に伝える悠斗、その新幹線には片岡が筋向かいの席に座る設定に成っていた。

(僕は用事で新横浜から乗るよ、先に乗っていて)とメールを送る悠斗。

「彩子さんは行かないから、二人でゆっくり楽しんで来て、結衣を頼むよ」

「兄貴何を企んでいるの?」

「彩子さんより結衣だろう?」

「勿論だよ、結衣と夏休みに旅行なんて最高の気分だ」

悠斗は何が起こるのだ?と心配に成ったが、修平を信頼していた。

悠斗と結衣が出発してから、一時間後指定の切符を持って八号車に座る彩子。

今回の旅行で悠斗とSEXをして、自分の虜にしようと目論む彩子は座ると同時に信じられない顔に成っていた。

「彩子さん」と片岡も気づいてと言っても知っているのだが「き、京介。。。」思わず口ごもる彩子。

「どちらに?」

「あ、あ実家に帰る。。。」

「そこの席空いていますか?」と彩子の隣の席を指さすと、「これ。。。」と言うと電車が発車して「少し、待って下さい」と彩子は車掌室に駆け込んで、席の移動を願い出て十号車の二つ席を用意して貰って戻ってきたのだ。

苦肉の策だだった。

悠斗が乗る迄にこの車両から消えなければ「良い処で会ったわ、一人で退屈していたのよ、別の車両に二つ空きが有ったわ、移動しましょう」

「そうなの、ここは誰か?」

「そのようね」と荷物を持って十号車に自分から歩いて向かった。

「大きな会社のお嬢さんだよ、上手く遊べばお金貰えて贅沢出来るよ」と勝部に先日教えられていた片山。

「男遊びが結構好きで、京都方面に行くらしい、さらってしまえ、京介に気が有る今がチャンスだ」と嗾けられて京介は面白さも手伝ってやって来た。

「実は,一緒の男は彩子と別れたがっている、手伝えばお金も貰えるから、丸儲けだろう」

「俺は、お金が貰えて彩子さんと楽しめるのか?」

「後は自分で頑張れよ、お金は彼女からも貰えるかも知れない」勝部にその様に言われていたのだ。


十号車に座っても落ち着かない彩子、八号車が気に成る。

(急用で旅行に行けません、すみません)と新横浜に到着のメールを送った彩子、間に合うか心配だ。

通路でメールをしていると、向こうから片岡がこちらにやって来るので、慌ててトイレに逃げ込む彩子。ここでの三人がご対面は逃げ場が無くなると思う彩子だ。

しばらくして、新横浜を電車は発車して恐る恐るトイレを出る彩子。

(残念、彩子さんが行かないなら、僕はマンションに戻ります)と悠斗のメールにようやく安心顔に成った彩子は片岡の待つ十号車に向かった。

急に口数が多くなった彩子に、楽しそうに喋る片岡。

二人は京都迄行く事にして、お互いが意気投合に成っていた。

彩子には二度目の片岡との旅行に成ってしまった。

ホストのバイトをしているので、彩子を退屈させないで上手に遊ぶ片岡と、興味を持つ彩子はお互いが遊びだから楽しいのだった。


悠斗と結衣は修平の計らいで、楽しい白浜旅行に成っていた。

新大阪で下車して水着を買いに行く二人、悠斗がビキニを買って「私、恥ずかしいわ」と怒る結衣。

「特急くろしお」に乗って白浜の旅館に到着した時は夕方で、泳げない時間に成って彩子が泊まるので豪華な部屋、目の前にビーチが広がり直ぐにでも泳げる場所のスィートルーム。

「悠斗、贅沢しすぎでは?」

「この部屋、実は彩子さんが予約いたのよ」

「えー、本当は彩子さんと来る予定だったの?」と驚く結衣。

「違うよ、修平さんが上手に手配してくれて、結衣と泊まれる様に成ったから来たのだよ」

「そうなの、ありがと。。」と言いながら既に悠斗の唇に自分の唇を重ねていた。

お互いの気持ちを改めて確認した二人は「結衣の居ない世界は考えられないよ」

「私も悠斗無しでは生きて行けないわ」と語り合ってその夜を過ごしていた。

翌日は海水浴に「生まれて始めてよビキニ」と白い肌にピンクのビキニが映えていた。

今夜もう一泊して、明日施設に向かう予定の結衣、悠斗は大阪の実家に帰る予定。

夕方まで遊んだ二人は「日焼けしちゃった」と笑う結衣の顔に二日間の喜びが溢れていた。

翌日朝寝坊の二人は昼前に大阪に向けてお土産を悠斗に買って貰って「このカード持ってて、他に何か必要な物買う時に使って」

「悠斗は必要無いの?」

「しばらく実家だから、東京で会った時返してくれたらいいよ」

「そうなの、ありがとう」

そうして二人は別れて結衣は施設に久々の帰宅と成った。

もう結衣と一緒に育った子供達は殆ど居なくて、鈴木葵が一人高校三年生で残っているのみ、小学生の子供が元気よく遊んで、お土産のお菓子にそれぞれがお礼を言いながら口一杯に頬張る。

自分も昔はこんな感じだったのか?食べ物が少なかった記憶が蘇る。

「沢山有るから、これも開けて良いわよ」と異なるお菓子の箱を開けると、片手に持っているのにもう一つの手で異なるお菓子を掴む。

「ありがとう結衣さん、男の子が多いから沢山食べるのよ」

七十歳を過ぎて、中々子供達の面倒を見られない順子が微笑みながら言った。

「近藤さんの息子さんとはどうなの?」

「はい、昨日まで白浜に一緒に行っていました」

「そうなの、上手く交際しているのね、ご両親は許して下さったの?」

「まだの様です、悠斗さんは卒業迄には説得するから安心して待っていて欲しいと言われています」

「ほんとうに二人は昔から仲が良かったからね」と順子が昔を懐かしむ。

「明日は休みだから、みんな集まるそうよ」

「はい、楽しみです」

修平と結衣以外は全員近くに住んでいて、明日の土曜日の夜、子供達も交えてバーベキューをする予定に成っていた。

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