第25話彩子の行動

18-25     彩子の行動

遅めのお昼に名物の穴子丼を食べると、土産物屋に入ってもみじ饅頭を買って,しゃもじに二人の名前を書いて貰って大事そうに持ち帰る。

「もう、帰らないと,間に合わないわ」結衣が携帯の時間を見て言うと「本当だ、急ごう」手を繋いだ二人は,土産物屋の通りを早足で通り過ぎて行く。

「秋にはゆっくり、来よう」

「そうね、見る場所一杯よ、ロープウェィも有るわ」後ろ髪を引かれながら,フェリーに駆け込む。

急いで空港に向かって、到着したのは三時過ぎ「間に合ったね」

「楽しかったわ」

「僕も結衣とこんなに長い時間一緒に居たのは初めてだった」

「良かった?」

「うん、総て良かったよ、愛しているよ」

「私もよ!」

ラブラブの二人は楽しく機上の人に成った。

勿論飛行機の座席でも肩を寄せ合って、離れない二人は最高の幸せを噛みしめていた。


悠斗はタクシーで寮の近くまで送って、軽くキスをしてお互い手を振って別れて寮に滑り込んだ。

寮には殆どの学生は帰っていない。

土産を持って自分の部屋に行くと早速着替えて、梶原に土産を持って向かう。

「お帰り、楽しかったかい」と満面の笑みの梶原に「はい、お世話に成りました,楽しかったです」

「そうかい、彼氏と上手くいったかな?」

顔を赤くして「はい」と答えて「これは、梶原さんにこれは皆さんで」とお土産の菓子を差し出した。

「無理しなくても良いのに、ありがとうね、夕食出来ているよ」と向こうから結衣の処に運んで来た。

「誰も帰ってないの?」

「二人だけ、居たけれど誰も居ないのと同じだわ」と笑って、梶原はもみじ饅頭の箱を持って炊事場に入った。


七日に成って学校は元の賑わいをみせて、結衣もバイトに復帰して平穏に時間が流れた。

彩子は悠斗が会ってはくれるが、それ以上の関係になれない事に徐々に苛立ちを感じていた。

彩子の頭の中では悠斗は勉強の虫で、全く女遊びをしていないから、女性の扱いを知らないのだから自分が積極的に教えなければ、時間だけが経過して自分も楽しく無いと考えていた。

彩子が実家の美代に先日電話で、悠斗が遊びに連れて行かないのは、お金が無いからバイトをしているのが原因なのでは?と苦情を言ったらしく、実家からカードが届いて「これで、彩子さんを遊びに連れて行ってあげなさい」美代が電話をしてきたのだ。

その為、お金が無い、バイトをしなければのいい訳が通じなくなって、それからは、カードを使って食事とかプレゼントが買えるので多少彩子は大人しくしていたが、旅行を強請られて困る悠斗だ。

勿論、結衣にこのカードで彩子以上の物をプレゼントしていた。

「悠斗、こんなに色々貰って良いの?」

「使わないと、母に叱られるから」夏の洋服、靴、バッグ、実用品が多いが結衣には、とても助かっていた。


誘ってもお茶を飲みに行く程度で、時々食事に付き合う程度で、全く積極的では無い悠斗に痺れをきらして「何処か旅行に連れて行ってよ」と言われて困り果てる悠斗。

修平に相談すると、ここで怒らせるのは良くないのでは?そう言われて仕方無く七月夏休みに成ったら行こうと言うと「海外が良いな」とお強請りをしている。

修平がお金使えるなら、海外に結衣も一緒に行けば楽しいよと言われたが、悠斗には意味が判らないのだった。


修平は彩子の生活と異性との交際を調べて貰っていたのだ。

派手な私生活、五月の連休も東京の彼氏と鎌倉から江ノ島に旅行に行って、楽しい一時を過ごした事の連絡を受けていたのだ。

修平には結衣と悠斗を一緒にさせてやりたい、二人は愛し合っているだが、両親は結衣の施設育ちと仕事関係の彩子を比較して、とても結衣を嫁には出来ないと思っていたからだ。

修平は友人に頼んで、密かに彩子の東京生活を調べて、数人の男性の存在が判ったのだ。

何処かで、彩子の前にこの男を出現させて,破談に持っていくのも面白いとも考えていたから海外なら、逃げられないから確実かもと思う修平だった。


彩子から見れば悠斗はお金持ちの息子で、結婚の対象では有るが、恋愛は別の人との考えが有った。

悠斗は美男子の方で自分ではお気に入りなのだが、真面目で面白くない存在なのだ。

彩子は東京に片岡京介と町田俊一の二人と別々に付き合っていて、最近は二人共に肉体関係に発展していた。

三人とも遊びを割り切って遊んでいるから、結婚は全く関係無いのだ。

五月の連休に始めて関係が出来たのが片岡で、町田は以前付き合っていて一時別れたがまた関係が戻った様だ。

修平は町田の方は知らないが片岡の事は友人が教えてくれたのだ。

何故なら、片岡と友人勝部均は知り合いだったから、片岡京介は二枚目だからホストクラブでバイトをしている学生、奨学金の返済の為にこの道に入っていた。

彩子は友人と行った合コンで知り合って、この五月の連休にようやく関係を持って現在お熱があがっている。

世間は狭いとこの話を聞いた時修平は驚いたのだ。

片岡京介も母子家庭で、勉強は出来たが中々学費と東京での生活は苦しいのが現状、勝部も同じ様な境遇、勿論修平は妹由奈と二人切りの兄弟だ。

勝部は自分より遙かに環境の悪い修平が兄貴の様にしたって、仲良く成っていたのだ。

修平は勝部に自分の事を殆ど話していた。

何故大学院に居るのか?その意味も勝部は理解して付き合っていた。

お金持ちに使われているが、自分が東大の大学院まで進めたのも事実で、悠斗はとても良い男で施設の女の子を心から愛しているから、何とか結婚迄導きたいと勝部に話していた。

修平は早く就職して働きたいと思っているが、中々哲二が許してくれないのだ。

結衣と深い関係に成っていないか?監視役も担っていたからだ。

毎回嘘の報告をしている修平、最近ではこの勝部の写真を使って、結衣に東京に良い男性が出来るかも知れませんので、御安心をと伝える周到振りだった。



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