第22話初めての宿泊

 18-22      初めての宿泊

小学校の前に車を止めて、降りる二人が「ここの小学生だったのだよ」と校門の処に歩いて行く二人。

「覚えている?」

「判らない」と言いながら校庭に入って行く二人すると、向こうの大きな木を見て「あれ、覚えている」と急に嬉しそうな顔に成った。

おおきな楠が五月晴れの空に緑の葉を、風に揺らしながら葉音で結衣を手招きをしている様に二人を引き寄せた。

楠の陰に鉄棒が大、中、小と二つずつ並んでいる。

「これ覚えているわ、高いのに手が届かなかったの、お父さんが身体を支えてくれて摑まったのよ」と自分で鉄棒を握り締めて涙が頬を伝っていた。

「悠斗、ありがとう」涙目で悠斗に向かってお礼を言う結衣、遠い昔を思い出したのか、しばらく鉄棒を握り締めていた。

何も喋らず二人はしばらく楠の陰の鉄棒にいて、ゆっくり学校の中に手を繋いで歩き出した。

「あれも、覚えているわ」と嬉しそうに指さす結衣、ウサギの小屋が中庭に有って、駆け寄って覗き込む結衣。

「居るわ、いち、に、さん。。。。。。」と数える結衣はその時、小学生に戻っていたのかも知れないと悠斗は思った。


しばらくして二人は悠斗が予め調べて置いた自宅の場所に向かった。

「ここが、結衣の家が有った場所だと思うよ」

「そうなの?」

その場所には全く異なる家が建って居て面影は全く無かった。

二人は近くに車を止めて、歩いて戻って来て結衣はその場所で手を合わせて祈った。

近くを見渡して「あの家、前田さんの家だ」と嬉しそうに叫ぶと直ぐに歩き出した。

家の前まで行くと丁度中から叔母さんが一人出て来て「前田の叔母様」と急に懐かしそうに結衣が叫んだ。

その女性は名前を呼ばれて、驚いた様子で結衣の顔を見ている。

「叔母様、私そこの家に住んで居た真中の娘です」と言うと「えー、あの一人助かった結衣ちゃん!」と驚いた声でまじまじと結衣の顔を見た。

「綺麗に成って、判らなかったわ、大きく成ったわね」と言いながら悠斗を見るので「彼氏の近藤さんです、墓参りに連れて来て貰いました」

「そうだったの、入りなさいよ、娘の良子も直ぐに帰るから、お茶でも飲んで行きなさいよ、本当に綺麗に成って驚いたわ」そう言いながら自宅に招き入れた。

悠斗が車を邪魔に成らない場所に置いてくると言って、行くと交代に良子が帰って来て「どちら様?」と結衣の顔を見ると、母が「お帰り、真中さんの結衣さんよ」とお茶を出しながら言った。

「えー!結衣なの?もの凄く綺麗だから驚いたわ」

「ご無沙汰、」と言いながら涙声の結衣、そこに菓子折りを持って悠斗が戻って来て「これ、東京のお土産です、どうぞ」と差し出した。

結衣が良く気が付くなと言う目で悠斗を見ていた。

「彼氏と墓参りに来たのだって」

「えー、驚きだわ!彼氏付で帰って来て、こんな美人に成っちゃって」と笑う良子としばらく昔話をして、携帯の番号を交換して「今、何しているの?」と良子が尋ねて「今は大学生よ、彼も学生よ」

「何処の大学?」

「聖璋女子よ」と言うと「えーー!」と大きな声で驚く良子。

「それ、お嬢様学校なのでは?結衣は施設に入ったのでしょう?」と恐々聞く良子に「彼の両親に助けて貰ったのよ」

「そうだったの、良かったわね」

「ありがとう、でも懐かしいわ」と結衣は心から旧友との再会を喜んでいた。


五時半に目的の錦帯橋温泉の中でも一番大きな旅館に到着した。

「良い旅館ね」とは言う結衣もこれからの事が頭に浮かんで、興奮と不安が入り交じった変な気分だ。

仲居の館内で入った部屋は豪華な露天風呂の付いた部屋。

「悠斗、良い部屋を予約したのね」と結衣が言うと「う、うん」と曖昧な返事、緊張が伝わってくる一瞬だ。

仲居が部屋の説明とお茶を用意していたが、殆ど二人は聞いていなかった。

小学六年と中学二年でお互いが知り合って、初めての旅行そしてこれから結ばれると思うと興奮と不安の入り交じった複雑な気分だ。

仲居が出て行くと「お風呂入る!」

「おふ。。。」お互いが同じ事を口にしていた。

直ぐに二人は口づけをして「結衣!」「ゆ、う。。」と言いかけた唇は悠斗の唇で塞がれる。

いつもより、興奮の悠斗が判る結衣、長い口づけが終わって「愛しているよ、結衣」

「私も大好きよ」悠斗が「結衣が欲しい」と呟くと頷く結衣、悠斗がワンピースの背中のジッパーを下に下げて「お風呂に入ろうか?」と小さな声で言うと頷く結衣。

結衣は悠斗から離れて、恥ずかしそうに服を脱ぐ、下着姿で綺麗にハンガーにワンピースを吊す結衣、上等の服が皺に成ると明日から着られないから、気を使っていた。

今日の為に下着も新品の結衣、悠斗も恥ずかしいのか下着姿で急いで露天風呂に行ってしまった。

結衣が恥ずかしそうに、露天に行くと悠斗は湯船に浸かっていた。

「悠斗、向こうを向いてよ、恥ずかしいわ」と結衣が言うと、向こうを向く悠斗、身体に掛け湯をして入る結衣を待っていたかの様に振り向く悠斗。

「綺麗だよ!結衣」

「ありがとう」

髪をアップに留めて、項の白さにどっきりする悠斗は結衣に抱きついて、再び口づけをする。

肌の白さ、胸の膨らみに興奮の悠斗、肌と肌が合っただけでもう我慢が出来ない悠斗は興奮の絶頂に成ってしまった。

結衣の手が悠斗の物に触れただけで、終わってしまったのだ。

「あっー」と吐息が出る悠斗に「どうしたの?」と驚く結衣。

「終わっちゃった、ごめん」と頭を掻いた悠斗だ。

緊張していた結衣の気が抜けて「そうなの?判らないから」と微笑んで、リラックス状態に変わった。

「悠斗、前田さんの家に手土産渡したけれど、用意していたの?」

「必要に成るかと思って、三個程買って来たのだよ」

「中々、気が付くわね」そう言うと結衣の乳房をさりげなく触る悠斗の行動に結衣は、悠斗とこれから一生一緒に生活するのだと思っていた。


何事も無く風呂から上がった二人は、食事処に仲良く手を繋いで向かっていた。

結ばれるのは明日か?結衣には悠斗の清純さが好きで、過去に女性と遊んでいない自分が始めてなのだと実感していた。

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