第12話盗難騒動
18-12 盗難騒動
翌日河野の怒りの話を聞いた順子は不安を募らせて、修平に時々でも良いので結衣の事を聞いて欲しいと電話で頼んでいた。
修平は悠斗がいるから大丈夫だよと楽観的に言ったが、順子は胸騒ぎがしていたのだ。
同室の生徒は水上翔子で北海道の大きな牧場主の娘、母親が結衣に挨拶をしたが、自分には結衣の両親から挨拶が無いと、早速寮長に文句を言った。
寮長が真中さんは、両親も身寄りもない生徒さんだから無理ですよと伝えると、学校は何故その様な生徒を入学させるのか?と文句を言って、娘の私物でも無くなったらどうしてくれるのと、部屋を変えてくれる様に声を荒げた。
寮長が実は部屋割りは、成績順で振り分けていまして、同レベルの生徒さんを同室にしていまして、お嬢様はとても優秀な成績ですから、彼女と同じ部屋に成ったのですよと説明した。
あの子は勉強が出来るの?と聞いて寮長が新入生ではベスト五に入っていますよと答えたので、大人しく帰って行った。
「翔子、貧乏な子供に負けたら恥よ」そう言って、銀座のホテルに母親洋子は帰って行った。
ここの生徒は見栄だけで学んでいる様な物で、就職目的はなく成績が発表されて上位にいる事での優越感が目的だった。
結衣はこの四年間に勉強をして、国家公務員一般職試験に合格して資格を取ろうと考えていた。
この学校からは多分誰も受けない試験を目指しているのだ。
哲二夫婦は、学園の理事長近衛に結衣の様子を逐一伝える様に依頼をしていて、学部長佐伯、星崎寮長、生活監督係延原等に監視をさせる事に成っていた。
自分の息子の行動は修平に逐一連絡させて、名目は勉強をしているか?変な女性にお熱をあげていないか?の報告、特に付き合って居る女性は細かく連絡させている。
修平は結衣との交際は殆ど昔からの付き合いで、両親も承知しているから、連絡は簡単で良いのだと理解して、結衣以外の事が判ったら、連絡しようと思っていたから全く無かった。
この様にして結衣と悠斗は監視下の元での東京での生活が始まった。
連休が出来ても、結衣は修平の紹介の家庭教師のバイトに明け暮れて、悠斗も同じく家庭教師のバイトを少ないがしていた。
結衣は休みの昼間のみ、悠斗は平日の夜、勿論修平も同じ様にバイトをしている。
時々二人は会って食事をするが、殆どが昼食、朝夕は寮で食事を休日も食べる結衣、寮の裏方は結衣と寮の職員の為だけの食事を作る事も屡々だ。
殆どの学生は連休には、自宅に帰る事を理由に外出して帰らないから、結衣は殆ど連休の初日の夕食は一人、五百人の生徒がいなくなる。
梶原が「寂しくないのかい?」心配な成って尋ねる。
「平気ですよ、もう随分前から一人ですから、施設に比べたらここの食事はとても美味しいから、太りそうです」と笑う。
「そうなの?美味しいの?」
「はい、とっても美味しいです、施設ではおかずの数も少ないし、質も悪いです、ここの料理は最高です」
「そうよね、お金持ちのお嬢様が満足出来る料理だからね、でも沢山残すのよ、美容に悪いとか、食べ過ぎは肥えると言ってね」
「こんなに、美味しい料理残すの?施設に持って行ったら喜びますよ、こんな料理は年に一度位しか食べられませんから」
「大変なのね」梶原は結衣が益々気に成る生徒に成っていった。
その連休明けに事件が起こった。
結衣の隣の部屋の生徒の持ち物が無く成ったと騒ぎ出したのだ。
ダイヤのピアスが消えたと寮長に訴えて、星崎は直ぐに結衣を呼び出して尋ねたのだ。
その行動は直ぐに、寮の生徒が知る事に成って、話は結衣が獲ったかと疑われた?の話に飛躍して伝わってしまった。
学校全体に結衣の存在が知れ渡った瞬間で、今まで素性を知らなかった生徒まで知ってしまった。
「私がピアスを持っても使えないです」と耳を見せる結衣に、寮長は「別に貴女を疑っていないわよ、誰も居なかったから、貴女は隣の部屋だったから、不審な人を見てないか聞いただけよ」
それだけの会話が寮全体には、疑われたのは施設の出身だからに変わって広がった。
星崎寮長はこの学校の寮で、私物の紛失は始めての出来事だと学校の延原に進言した。
理事長を始めとして、星崎、延原、佐伯の四人は考えが一致して、犯人は真中結衣の可能性が高いが、近藤社長に頼まれた経緯から今回は黙って見守る事にしたのだ。
事実は、ピアスを無くしたと騒いだ神崎の彼氏が持っていて、後日彼女の元に帰ってきたが話が大きく成りすぎて、こっそり実家に送り着けて隠してしまった。
星崎寮長から「幾ら程の品物だったの?」と聞かれた神崎は「大した金額では無いので、お父様がまた買って下さるから、ご心配には及びません」と答えて事件は闇の中に消えてしまった。
彼氏と遊んで忘れた事が、実家に知られるのと学校に知れ渡る両方の危険に曝されて、神崎自身は内心心配をしていた。
結衣は事件の後大学の中では危険人物だと思われて、殆ど誰も話しかけてこない状況に成って、唯一彩子だけが「貴女、大変な事に成っているわね」と一週間後に話しかけて来た。
「何が?ですか?」
「何も知らないの?」
「寮の貴女の隣の神崎さんって子のダイヤのピアスが無くなった話よ」
「私、何も知りません、寮長にもその様に答えました」
「でも、学校の中では貴女が犯人にされているわよ」
「えー、そんな」と改めて驚く結衣だ。
彩子はこの学校は貴女には合ってないと言いたいから、わざと教えていた。
早速夜に成って神崎の部屋を尋ねて、色々と聞いた結衣だが、もういいのよ!大した物では無いから、気にしなくてもと言われたが、執拗に形は?色は?と尋ねたが逃げる様に、結衣の話を断ち切った神崎だった。
我慢出来ない結衣は日頃から仲良くしてくれている梶原に、今の自分の立場を話して協力を頼んだ。
梶原から、掃除の係の人達に連絡がされて、あの真中ちゃんが犯人にされているの?それは大変じゃないの?情報を集めようと行動を開始したのだ。
その日の夕方、集まった数人が「とんでもない事に成っているよ、あの子が犯人に成って、施設の子だと学校の生徒の殆どが知っているみたいよ」
「そうよ、あの子を警戒して、近づかない様にしているみたいよ」
「冷たくされて、可哀想よ」
「何とか私達で探しましょう」と口々に言いだした。
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