第11話お嬢様大学
18-11 お嬢様大学
その日の内に梶原から仲間に連絡がされて、真中結衣の事は寮の食堂関係者で知らない者は居なくなっていた。
ただ、みんなの意見はお金持ちの若社長が二号にでもする為に?と噂をされて誰一人同情の目では見ていなかった。
実際に会った梶原だけが、この子はとても良い子だと感じていた。
みんなが戻る前日、掃除の係が各部屋の清掃をして、生徒が来る準備をしていた。
ここの生徒は自分達の部屋でも個人の部屋の掃除位しかしなくて、殆ど清掃係が行うのだ。
小玉と云う叔母さんが、結衣の階の担当で結衣がアルバイトを捜しに出掛けた時に入室して、驚きの表情に成ったのだ。
部屋は綺麗に掃除をされて、共有部分の掃除も完璧にされていたが、結衣の部屋に何も無い事に驚いたのだ。
本箱もタンスもない、壁にハンガーで洋服が三着吊してある。
若い女の子の住んで居る部屋には見えなかったのだ。
百円ショップの鏡が机にあって、授業の真新しい本が壁の隅に無造作に積み上げて有るだけだ。
その情景は梶原達に報告されて、夕方には寮の裏方は全員知ってしまう事に成った。
本当に児童養護施設の子供で誰も身寄りがないのだ。
でも何故?その様な子供がこんな高い学校に来たのだろうと、探偵が始まったのは云うまでもなかった。
梶原は何かとんでもない裏が有るのでは?と不安に成ったが、助けてやろうとみんなに呼びかけて、真相の究明と結衣を助ける事で一致していた。
みんなはここの生徒が嫌いな分類に入っていて、結衣の様な生徒は自分達以下なので、応援したく成っていた。
早速その日から、結衣の事、援助の近藤哲二についての情報が梶原の耳に入ってくる。
数日で近藤の素性から、会社の規模、家族構成、はては性格まで集まって来るから恐ろしい限りだ。
寮の運営には沢山の人間が携わっていて、殆どが女性の為この様な話は大好きだ。
寮には五百人の生徒が住んでいて、学年事に棟が異なっていて食堂だけが全員食べられる様に成っていた。
「近藤工業って大きな会社よ、そこの社長が近藤哲二っていうのだけれど、慈善事業家でね、施設に個人的に応援しているらしいわよ」
「中々良い人ね」
「それがね、息子が二人居てね、長男は馬鹿ね、でもね!次男は賢いのよ、東大よ」
「おお、賢いのだね」
「どうやら、この次男に買ったおもちゃじゃないかな?」
「おもちゃ?」
「施設の子供が好きに成ってしまった子供におもちゃの様に買い与えた」
「えー!人間だよ」と驚く四~五人の女達。
「この人達の考えは我々とは違うからね」
「でも、本当に結婚させるかも?」
「それは無いと思うよ」
「でもこんな、お嬢様学校に入れるのよ、お金もかかるから、将来は嫁に」
「ここの学校の規則知っているでしょう、家族が無かったら、四年間殆ど旅行も出来ないよ」
「それが、狙いか?」
「子供におもちゃを買ったら、子供がおもちゃを一向に飽きないから、困ったと見たね、私は!」
「人間をおもちゃにするなんて許せないわ」
「あの子の部屋には、化粧品の一つも無かったよ、年頃なのにね」
「子供にはお金を与えてないと思うわね、与えると彼女に色々買い与えるから」
「そうだわね、大金持ちの子供なら、お金には困って無いと思うからね」
「引っ越しの時も二人男性が来ていたけれど、たいした物を買って来なかったからね」
その通りで、携帯電話も悠斗が無理をして買ったのだ。
両親に内緒のバイトを修平に頼んで、家庭教師を週に二日する事で携帯の代金を稼いでいた。
寮の職員は結衣の応援団に成って、今後も見守って何か有れば助けてやろうと結束していたのだ。
入学式には河野美加が関西から来てくれた。
その河野が驚きの眼差しに成ってしまったのだ。
両親揃ってが殆どで片親の学生は疎ら、その衣装の豪華さは驚きのファッションショー状態で、河野と結衣の服装は際だって見えたので、一気に学校の注目の人に成ってしまった。
河野も今まで色々な学校の入学式と卒業式には参加したが、この時程の屈辱は始めてだった。
生徒も全員化粧をして、華やかな服装、子供以上に母親の服装が着物、洋服様々で満開の桜の様だった。
河野は「こんな学校には二度と来たくないわ」と怒っていた。
結衣の服装も学生らしい服装といっても殆ど無いのだけれど、地味そのものだった。
恥ずかしい入学式が終わって、河野は急いで神戸に帰ってしまった。
入学式には悠斗も参加していて、家族の一員に成っていて、結衣には服装よりも悠斗が来てくれた事が最高の喜びと思い出に成った。
早速スマホのカメラで撮影をして、楽しそうに「誰かに撮影頼みましょうよ」と近くの学生に頼むと「レトロな服装目立って得ね」と嫌みを言われた。
「そう?私の彼なのよ」と笑顔で紹介する結衣に「近藤です、結衣をよろしくと挨拶した」
「私、武田悠奈よ、よろしく、彼氏は素敵ね!」と悠斗を褒めた時に彩子が悠斗を探してやって来た。
悠斗が紹介をしたいからと彩子を呼んでいたのだ。
「僕の知り合いの榊原彩子さん、彼女は真中結衣さん」と紹介した。
粗方話して有るのか「よろしくね」と右手を差し出して握手を求めた。
「真中結衣です、判らない事が多いので、教えて下さい。今後ともどうぞよろしくお願いします」と握手とお辞儀で結衣は低姿勢だった。
「真中さんはまだ子供の様ね」と彩子は悠斗に憧れを持っているだけだと感じ取って、問題外のライバルだと思った。
入学式の後の懇親会の様な物だったが、河野が早々と退席したので、結衣には悠斗と彩子の存在は助かったのだ。
彩子には悠斗とデートをしている心境、結衣と楽しい一時を過ごせる悠斗は東京での結衣とのデートを夢見ていた。
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