一幕【用語詳説】

用語集・五十音




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◆イヌモノミシリ【穢不慣】


 空気中に満ちる微弱なイヌモノを、特殊な条件下等で身体の許容以上に短期間で取り込んだ者にみられることがある症状。または遠方への無理な旅で慣れぬ土地のイヌモノに当てられた者や、もともと精神的な疾患を抱えている者等が強い心的外傷を受けたりした際にイヌモノに飲まれることで稀に発症する病ともされる。

 重症化すると倦怠感や精神的な不調等、更に進行すると幻覚や幻聴等が症状として現れる。症状が酷い場合はそれに伴う自傷行動や心因性の発作や多臓器不全等を誘発する恐れもある。だがイヌモノは本来なら無毒無害であり、心身が安定してしまえば障りもない。そもそもイヌモノは目に見えず触れられもしない曖昧な存在であり、人の体内で常に自浄されるものだとされ、通常は安静にさえすれば数日で回復に向かう。




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◆カメアシュマリ【化狐シトマクゥ


 説明のつかない奇妙な事柄。その場に存在する筈のない存在。未知、正体不明の何かへのとりあえずの形容など。広域で、人智じんちおよばぬ怪異かいいへの表象的な共通認知とされる某之怪シトマクゥの一種。

 狐が正体とされる、奇妙で不穏な出来事のこと。またはそれを起こす悪狐そのものを指す。

 人が野山で不必要な殺生などを繰り返して、その因果として人に怨み辛みを募らせた野狐が悪しき存在へと転じてしまい災禍を呼ぶとされる民話から。


 追記。上記の民話の他にも同名の伝説があり。誰かが喪った親しき者に成り代わり、いつの間にか共に暮らしており、寄り添って過ごして暫しの平穏を与えるが、その正体に気が付いてしまえば最後、より大きな喪失をもたらして姿を消してしまう女狐が居る、という悲恋譚のような伝説がある。




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◆ことなりもの【異成り立ち者】


 彼土ひどの者。異なる成り立ちをした彼方より、偶発的な事象で世の階や境界を渡り此土しどに流れ着いた、紛れ込んだ、降り立ったとされる者達のこと。

 その存在が誠であるとの証明は難しいものの、彼等によってもたらされたと伝わる知識や技術はまごうことなき本物であり。その末路を綴った多くの文献の記述も同様。飢饉に苦しむ土地にふらりと現れ、その知識だけで多くの人間を飢餓から救い、現れた数日後には亡くなるも丁重に弔われ、長い年月が経った今なお大切に祀られている土地もある。

 曰く彼等の身体は此土の環境には適応しておらず、例外なくとても短命であるとされている。


 



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◆ことなりたちよ【異成り立ち世】


 彼土。此土とは異なる成り立ちをした彼方の世。

 世は、人が認知する此土だけではなく。より高次の視点で観測できたならば、世とは生命という苗が植えられ様々な成り立ちを経た土塊の入った鉢や杯であり、異なる世界の盆器が無数に連なる盆景のようなものが森羅万象であるとされる思想。その世界観。



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◆シトマクゥ【某之怪】


 説明のつかない奇妙な事柄。その場に存在する筈のない存在。怪物、怪奇、怪異。未知、正体不明の何かへのとりあえずの形容など。広域で、人智じんちおよばぬ恐怖や不安への表象的な共通認知である。

 某之怪シトマクゥ。その語源は古い言葉から『背後の恐怖』の意であり。人の持つ根源的な感情を表した言葉。

 なお、某之怪シトマクゥとされるものは本来、あくまでも『実害』が存在しない怪までである。そこに『実害』が存在する事象は【禍淵マガフチ】と扱われる。




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◆しとね【茵】


 上に腰掛けたりする用途の敷物の呼び名の一つ。

 間違っても誰かに投げ付けたりしてはいけない。客人や目上の存在に投げつけるなぞ以ての外だ。




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