第26話

 翌朝目を覚ました竜人は身支度をしているとドアがノックされた。

「お早うございます、竜人様。」

 ラビアたちが朝の挨拶をしにやって来た。どうやら身支度はすでに済んでいるようだった。

「ああ、おはようみんな。昨日は良く休めたかい?」

「はい、お陰さまで疲れはすっかりなくなりました。」

「それはよかった。今エリスたちも身支度をしているからもうちょっと待っていてくれ。」


 しばらくしてエリスとミーナが部屋から出てきた。

「お待たせしました。皆さんお早うございます。」

「おはよー。」

「おはようございます、お嬢様。」

 朝の挨拶が済んだところで皆で食堂の方へと向かっていく。


 朝食を取りながら竜人は昨日ギルドであったことをみんなに説明する。

「迷宮の調査依頼は高ランク冒険者に依頼し直すことになったらしいんだが、俺たちは引き続き調査を継続することになった。」

「分かりました。でも昨日のことがあったのでもっと注意していかないと、下層の敵はもっと強くなると思いますし。」

 エリスが答える。


「ああ、昨日のサイクロプス以上の敵がでないとも限らないしな。そこで今日は新しい武器と防具を購入しようと思う。ラビアたちの分も用意しないといけないし、そのあとは訓練場で戦いかたの指導もしたいし。」


「それがいいと思います。」

 そうして朝食を終えた竜人たちはこの町で一番大きい武器屋へとやって来た。

「いらっしゃいませ、どのような武器をお探しですか?」


 店員が竜人に声をかけてきたので注文をする。

「武器は剣、槍、弓、短剣、杖を。あと、防具は鎧を三つに盾を一つできるだけ性能の良いやつを頼みたい。とりあえず予算は考えなくて良いので。」


「はい、分かりました。武器はこちらの方になります。」

 店員の誘導で奥へと進んでいくとたくさんの武器が並んでいた。

「予算を考えないとなるとこの店ではミスリル性のものになります。こちらのものは腕利きの鍛治師により作られたもので、品質には自信のある逸品です。王都にあるランド商会の本店より取り寄せたものです。」


「ランド商会と言うとエーマンさんのところか。なら安心できるな。」

「おお、代表とお知り合いのかたでしたか。」

「はい、以前取引で少しお世話になりまして。」

 竜人は鑑定を使い確認したが店員の言うことに間違いはなかった。


 みんなにそれぞれ武器を手にとって確認してもらうと、エリスはミスリルの杖、ミーナはミスリルの短剣、ラビアはミスリルソード、リジィーはミスリルの槍、ティーナはミスリルの弓と鉄の矢100本、ミスリルの矢20本を購入することにした。そして、万一のために全員にはミスリルの短剣を持ってもらうことにした。


 また、防具はラビアがミスリルの盾とミスリルの鎧、リジィーとティーナには動きやすいようミスリルの軽鎧を購入する。

 全部合わせて合計白金貨三枚と金板五枚となり端数についてはおまけをしてもらった。


 竜人の手持ちのお金が、白金貨一枚と金貨数枚になってしまった。

(まあ、良いものはその分値段も張るのはしょうがないか。)


○ミスリルの杖

攻撃力150 魔力400


○ミスリルの短剣

攻撃力250


○ミスリルソード

攻撃力450


○ミスリルの槍

攻撃力400


○ミスリルの弓

攻撃力350


○鉄の矢

攻撃力30


○ミスリルの矢

攻撃力150


○ミスリルの盾

防御力450 魔法防御300


○ミスリルの鎧

防御力500 魔法防御350


○ミスリルの軽鎧

防御力400 魔法防御300


 さすがはミスリル製、高い攻撃力と物理魔防とバランスが良い。あとはいかに体に馴染ませるかだな。

 ラビアたちだけでなくエリスたちも、ミスリル製の金額に驚いていたが竜人は命を預ける相棒に妥協するつもりはなかった。


 ティーナにはアイテム袋を一つ持ってもらうようにした。戦闘では後衛で矢を取り出すのに必要と判断したためだ。

 竜人がマジックバック、エリスとティーナがアイテム袋を一つずつ持つことになった。


 準備が整った竜人たちは、戦闘訓練ができる冒険者ギルドの地下室を借りるとラビアたちに戦闘の基礎を教えることにした。

 訓練場には初級の冒険者と見られる者たちの姿もあった。


 まず竜人はティーナを弓の練習場所に連れていくと、構えから放つまでの動作を見せて注意点等を細かく指導する。

 練習のため特殊技能の使用については禁止した。


 ティーナには訓練を続けてもらい、次にラビアとリジィーの戦闘訓練を行うことにした。

 盾持ちの戦闘については、日本でも経験のなかった竜人はギルドの指導員を紹介してもらうとラビアの訓練をお願いして、竜人は槍を持つとリジィーの訓練を見ることになった。

 様々な突きの型や払い、間合いの取り方など基礎を重点的に教え午前中を終えた。


 昼食後には大分コツを掴み始めた三人に、竜人一人と三人で戦闘訓練を行うことにした。

 ティーナのみ矢を練習用のものに変えたほかは、皆自分の武器を使用する。

 竜人も「暁」を鞘から抜くと三人と対峙する。


 竜人が先行して動く。狙いは後衛のティーナ、しかしすぐにラビアが盾を構えると竜人の進行を防ぐ。

 そこを横からリジィーの槍が竜人を狙う。竜人が距離を取ったところをティーナの矢が竜人を狙う。


 飛んできた矢を刀で弾くとラビアたちに話し掛ける。

「そうだ、基本的に戦闘においては後衛から切り崩しにかかってくる。前衛は後衛に対する攻撃を防ぎながら立ち回るんだ。後衛は全体の状況を常に把握して、前衛に対して攻撃を仕掛けようとしている相手に攻撃、牽制を仕掛け前衛を補佐するんだ。前衛が抜かれた場合を常に想定しておくんだ。」


 竜人はその後も三人に対して攻撃の手を緩めず、何度も注意しては様々な状況を想定しての訓練を続けた。

 そして、夕方6時を回ったのを確認すると今日の訓練は終了した。


「今日はここまでにしよう。」

「はぁはぁ、あ、ありがとうございました。」

 そう言うと三人はその場にへたり込んでしまった。

「明日は迷宮内で実践の戦闘訓練を行うので、疲れを残さないように今日はもう宿に帰って休むことにしよう。」


「兄さん、お疲れさまでした。」

「お姉ちゃんたちもお疲れさま、これ飲んで。」

 エリスは竜人に、ミーナは三人にそれぞれ飲み物を差し出してきた。

「ありがとうエリス。」

『ありがとうございます。ミーナお嬢様。』


「それじゃあ夕食を済ませたら宿へ帰って休もう。」

 夕食を済ませた竜人たちはその日は体を休めるため、宿屋へと帰っていった。


 次の日は実戦の連携訓練のため、再び一階層から潜ることにした。

「今日は実戦の連携訓練を行う。低階層だからといって油断しないようにな。この迷宮では何が起こるかわからない状況になっているからな。それと今日は迷宮内で夜営を行う。アルたちに頼りきってでは、いざというときに困ることになるからな。見張りを交代で行うことにする。」


 竜人は皆に予定を説明すると、迷宮内を移動する時は、前衛に竜人・ラビア・ピピ、中衛にエリス・ミーナ・ティーナ・クー、後衛にリジィー・アルの体制を取る。


 竜人たちは最短ルートではなく、別ルートで進むことにした。

「前方に敵を発見した。ゴブリン五体にコボルト八体だ。エリスとミーナ、アルたちは待機して危ないと思ったときは加勢してくれ。討伐は俺とラビアたちだけで行う。」


 討伐に向かった竜人たちは、後衛をティーナ、中衛を竜人、前衛にラビアとリジィーの陣形を取った。

「念のため中衛には俺がつくが、前衛は敵を後ろに行かせないように心掛けて立ち回ってくれ。ティーナは速やかに敵の数を減らすように援護を頼む。」

『はい!』


 ラビアたちは訓練で習ったことを忠実に行い、危なげ無く戦いは終了した。

 それからも何度か戦闘を繰り返し、特殊技能についても解禁して戦ったが相変わらずのチート能力であった。


 ラビアの守護女神の盾アイギスは、発動すると正面に半透明の巨大な盾が現れどんな攻撃も防いでいた。試しにアルに全力の攻撃を仕掛けてもらったが、易々と防いでしまった。

 斬鉄剣一刀両断は、その名の通り敵をまっぷたつに切り裂いた。敵が弱かったのもあったせいか力をそれほど込めなくても良かったとのことだった。


 リジィーの四元素の槍フォースエレメントルーンは、地水火風の四属性攻撃を槍に付与し、敵の弱点を容易に突くことができた。

 召還槍アラドヴァルを使えば中、遠距離攻撃も可能で呪文詠唱で手元にすぐ戻せるためオールレンジでの戦闘を可能にした。


 ティーナの遠矢射るアルテミスは、百メートルの距離でもピンポイントの狙撃ができ、パーティーの先制攻撃能力は向上した。

 そして簡易魔造矢クリエイトマジックアローは、攻撃力こそ低くなるが矢をつがえる時間が短縮できるため連射による隙のない攻撃が可能となった。


 三人とも未だ使いこなせてはいないが、それでも強力な能力であった。

 そして、三階層の行き止まりの広間についた竜人たちは、本日の攻略を終了すると夜営の準備をすることにした。

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