第12話
竜人たちは町中を商店街に向かって歩いていた。
「当初の目的通り奴隷の解放の目処もたったしどうしようか。」
「もちろん次は舞姉さんを探すに決まってるじゃないですか。まさか一人で行くなんて言わないですよね? 私たちは家族なんですから。」
「私も頑張って舞お姉ちゃんを探すね。」
まあそうなるよなと竜人も半ば確信はしていた。取り敢えず、奴隷解放が済み次第王都に向かい情報集めと、戦力強化が課題だなと竜人は考えていた。
「これからの事を考えると武器や防具の強化と戦力強化は必須だよな。丁度アースドラゴンの素材もあるし、後でギルドマスターに装備の加工に腕のいい職人でも紹介してもらおう。」
「お兄ちゃん、あの屋台で売ってるお菓子が食べたい。」
ミーナはそう言うとクレープの様な生地に果物を切って挟んだおやつを指差した。
「そうだな、丁度お腹もすいたし屋台で食事でもしていくか。」
そう言うと三人と三匹は屋台で買った料理を広場で食べることにした。
食事が済んだ三人は旅の準備のための買い物を始めると、途中でアクセサリーが売っている雑貨店を見つめていたエリスに竜人は気が付いた。
「ちょっと寄っていくか?」
「別にそんなつもりじゃないんです。」
そう言って否定したエリスだったが、竜人が家族になった記念にプレゼントを贈らせて欲しいとお願いして中に入ることになった。「わー」とミーナは声を上げ、エリスも目を輝かせてアクセサリーを見ていた。
(二人とも生活に余裕なかったし、贅沢品なんか買えなかったんだろうな。せめて年相応のお洒落くらいはさせてやらないとな。)
「兄さんどうですか?」
「お兄ちゃんこっちは?」
二人は幾つかのアクセサリーを着けては竜人に感想を求めてきたので、似合っている、可愛いよと伝え二人はそれぞれ髪飾りとネックレスを買うことに決まった。
値段のことでエリスが遠慮しようとしたが、竜人は二人ともとっても可愛いのでぜひ贈らせてくれと押しきる形で合計金貨四枚を支払った。
「兄さんありがとうございます!」
「お兄ちゃんありがとう。」
「いえ、どういたしまして。」
二人の笑顔後みられて竜人は幸せを感じていた。これからも出来る限りの当たり前の幸せな日々を二人に送って貰えるよう気合いをいれる。
それから三人は町のなかを観光して、夕方に差し掛かる頃には宿に戻ることにした。
それから三日間穏やかな日々を過ごしていた竜人たちはギルドマスターからの呼び出しにギルドに出向くことになった。
「よく来たの。奴隷解放の件は話がついた。これから教会の方に出向いてもらえるか。先方にはもう準備を済ませておる。」
「何から何までありがとうございました。このご恩は忘れません。」
そう竜人が言うと姉妹も「ありがとうございました。」とお辞儀をした。
「何、二人は被害者なのじゃ。それほど気にすることはない。さあ、早く行って二人を解放してくるとよい。」
竜人たちは再びお辞儀をすると教会の方へ向かっていった。
「あなたが竜人さんでよろしいでしょうか?」
「はい、妹たちのことよろしくお願いします。」
竜人はお布施として白金貨六枚を後ろに控えていた教会の関係者に渡す。
「では二人ともこちらへ」
そう言って神父が二人を儀式の部屋へ促していった。
そして待合室に残された竜人は儀式が終わるのを待つことにした。十分が過ぎた頃、妹たちは竜人の元に戻ってきた。
二人とも涙を浮かべ竜人に抱きついて来て、竜人も二人を受け止める。
エリス・ミーナ
所属
柳竜人の眷族
二人とも奴隷の文字が外れていた。竜人はようやく肩の荷が一つ降りたことを噛み締めていた。
「さあ、今日はご馳走にしよう。みんな何が食べたい?」
そう言うとミーナが甘いものと訴えたので、スイーツの食べ歩きをすることに決まった。
翌日ギルドマスターから腕の良い工房を紹介された竜人はアースドラゴンの皮とウロコを使った防具を作って貰うことにした。
○アースドラコンローブ(アースドラゴンの皮を使用)×二
防御力500 魔法防御600
物理、魔法防御に優れた魔法のローブ
○アースドラゴンの軽鎧(アースドラゴンのウロコと皮を使用)
防御力650 魔法防御450
物理、魔法防御に優れている。動きやすいよう最低限の場所のみを守れるように作られた。
防具が完成した翌日にギルドマスターに出立の挨拶をすると、ギルドマスターより王都の冒険者ギルド南区支部のギルドマスターへの紹介状をもらうことができた。
「この紹介状を見せれば、少しばかりは便宜をはかってもらえるじゃろう」
竜人はお礼を述べると、馬車に乗り再び王都に向かうため旅立つことになった。
王都への移動中エリスとミーナは、闘いの訓練や体力を付けるため馬車と並走して走り込みをしたりしていた。
そんなある日朝から激しい雨が降っていたため木と木の間にシートを敷き、馬が濡れないように雨宿りをすると馬車の中で一日を過ごすことになった。
最初は動物たちと戯れたりして遊んでいたが、次第に暇になっていった三人は竜人の世界の話をすることになった。
「兄さんの世界はどんな様子なんですか?」
「そうだね、此所とはずいぶんと違うところだったよ。まずは向こうには魔物や魔法といったものは存在していないんだ。その代わりに科学というものが発達していて、馬がいなくても動く馬車や何百人ものせて走る鉄の箱、さらには何百も乗せて空を飛ぶ乗り物まであるんだ。」
「うわー、すごい!どうやって動いてるの。」
「詳しくは難しいけど、燃える水を使って燃料にしているんだ。さらには、月にまで行ったことのある人も居たんだよ。」
「まるで想像もできません。」
姉妹は凄く驚いた様子でいた。
「あとは、俺の住んでいた国では戦争は大分前にやったけども、比較的平和なところでみんな学校に勉強をしに行くこともできたんだ。」
「平民でも学校に行けたんですか?」
「一応俺の居た国には貴族とかの身分差はあまり存在していなかったんだよ。」
「それは凄いですね。兄さんの家族はどんな方がいらっしゃるのですか?」
エリスは竜人の家族のことが気になり尋ねた。
「まずは舞ねーちゃんだな。ねーちゃんはとにかく俺の憧れで綺麗で強くて優しくて何でもできる超人のような人なんだ。」
「すごい方なんですね。兄さんよりも強いんですか?」
「ああ、勝負にならないくらいにはね。あとは両親がいて、父さんが公務員と言って役所務めるしていて、母さんが専業主婦で家のことを全てしていたんだ。あとはじーちゃんにばーちゃんがいて、じーちゃんは規格外の人でねーちゃんに戦いで唯一勝てる人だった。まあ、ばーちゃんには頭が上がらなかったけどな。」
「うふふ、随分と楽しそうな家族なんですね。」
「まあ、毎日楽しかったよ。もちろん今も新しい家族がいるから寂しくないけどね。」
「兄さん」「お兄ちゃん」と二人は竜人に抱きつき、頭を撫でられている。
「でも舞姉さんが見つかったら元の世界に帰るんですよね。」
エリスはそう不安そうに呟く。
「その時は二人も一緒だ。二人とも付いてきてくれるか?」
二人は勿論と答えた。動物たちにも鳴き声を上げ竜人は悪いと言いながらもちろんみんなもと付け加える。
「まあなんにしてもねーちゃんを見つけてからだな。」
そう言った竜人に姉妹も了承していた。
その後もいろいろな話をして、随分と話し込んだのか日が傾いて来て雨も上がっていたため竜人たちは夕食の準備を始めた。
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