第11話
翌日十時頃再びギルドに来た竜人たちはギルドマスター室に通されることになった。
「おお、よく来た。まずは報酬の話からにしよう。」
そう言うと隣に控えていた秘書がテーブルの上に袋を二つ置く。
「まずは常時依頼の報酬じゃが金貨三枚と銀貨五枚となる。そしてアースドラゴンについては、討伐報酬が白金貨十枚となっている。こちらはこの町の伯爵でおられるネイル・アレクサンダー・ショウ伯爵より被害が町に被害が出なかったとのことにより、特別報酬がだされたものじゃ。それと素材の買い取りのほうは、白金貨八枚と金板五枚となる。こちらも感謝を込めて少し色をつけておいた。受けとるがよい。」
「ありがとうございます。」
そう言うと竜人はアイテム袋にお金をしまう。
(しかし、すごい金額になったな。白金貨十八枚と金板五枚、金貨三枚、銀貨五枚か。常時依頼がほとんどおまけだな。これだけあれば・・・・・・)。
今まで異世界で過ごして来て貨幣の価値を大まかに金貨一枚が三万円から四万円と考えていた(地球とは物価が違うためおおよそではあるが)竜人は、最低でも五千万円ほど手に入れたことにギルドマスターにお願いをすることにした。
「ギルドマスター、実は折り入ってご相談したいことがあります。」
そう言うと竜人は姉妹が奴隷になった経緯と解放するために行動していることを説明した。ギルドマスターは深く考え込むとやがて話し始めた。
「そうじゃったか、なんと痛ましいことじゃ。あいわかった、わしのほうから伯爵にお願いして教会の神父に口利きをお願いしてみよう。奴隷解放には一人白金貨三枚ほどかかると思うが。」
「ありがとうございます。」
そう言うと竜人は姉妹たちと抱き合い喜びあっていた。するとギルドマスターから声がかかる。
「喜んでいるところ邪魔をして悪いが一つわしからも頼みがある。」
「何でしょうか。俺にできることなら何でもしますよ。」
「一つわしと手合わせをしてほしいのじゃ。もちろん、他の人には見られないように行うつもりじゃが。」
竜人にしても願ってもないことであった。この世界に来てからも鍛練は欠かさなかったし実戦も経験できたが、じーちゃんの様な規格外の者との戦闘訓練は出来ていなかった。
じーちゃんやねーちゃんなら、アースドラゴンでさえも余裕で屠ってしまうイメージしか浮かばなかった。
「わかりました。ご指導よろしくお願いします。」
そう言うと竜人たちはギルドマスターと共に地下訓練場に移動した。
訓練場に着くとギルドマスターは説明を開始する。
「ここの訓練場は特殊な結界を張ることができ、最大でSSクラスの攻撃にも耐えられるようになっている。あとこの魔道具を持っていてくれ。これは特殊な結界内で受けたダメージを肩代わりするものだ。ここには人も来ないように指示をしてあるので存分に力を出してくれ。」
○身代わりのブレスレット
特定の結界内にのみ作用する魔道具のブレスレット。一度だけダメージを肩代わりすることができる。
そう言うとギルドマスターは身の丈ほどもある大剣を持ち出した。竜人は鞘から「暁」を抜くとギルドマスターの前に立ち、お互いに向かい合った。
「兄さん、気を付けてくださいね。」
「お兄ちゃん頑張ってー!」
二人の声援を背に竜人の気合いも上昇していく。審判役を務める秘書が開始の合図をする。竜人は手始めに正面より斬りかかる様に仕掛け、大剣と刀がぶつかり合う。
「ほう! やはりなかなかの業物のじゃの。この剣とまともにぶつかりあって刃こぼれ一つ無いとはな。」
竜人は一旦離れると直ぐに左側から攻撃を仕掛け、上段、中段、下段と素早く打ちわけて隙をうかがうが、全て大剣に弾かれてしまう。
「どうした、こんなものなのか?」
そう言うとギルドマスターは大剣を振り払うようにして竜人を弾き返した。
(くそ、隙が見当たらない。まるでじーちゃんと戦っているときみたいだ)。
「来ないのならこちらから行くぞ!」
ギルドマスターが竜人に迫ると、大剣をまるで軽い棒を振るようなスピードで縦横無尽に仕掛けてくる。竜人は刀で軌道を逸らせたり躱したりしてなんとか凌いでいた。
だが、ついに躱しきれなくなり刀で大剣を防ぐことになり壁際まで吹き飛ばされてしまう。
(なんて馬鹿力だ。まともにやりあっても駄目か。)
竜人はついに気闘陣を発動させる。
柳竜人
○力S- ○魔力S ○俊敏S- ○賢さA+ ○生命力A ○魔法防御A-
「ついに本気になったようじゃの。」
ギルドマスターはニヤリと笑うと大剣を正眼に構え直す。正面から走り出した竜人は先ほどとは比べ物にならない早さで移動し、フェイントを入れると常人では見切れない早さでギルドマスターの背後に回り込むと「暁」で切りつける。
しかし、ギルドマスターは振り返ることなく大剣を背に回すと盾のように「暁」の攻撃を防ぐ。
それでも竜人は諦めず何度も位置を変えながら斬り付け続ける。
五分ほど離れては斬り付けを繰り返した竜人はやがて一旦動きを止めると鞘を拾うと刀を納刀して腰を低く構える。
(気闘陣を使っても決めきれないか)。
ベール
○力S+ ○魔力S ○俊敏S ○賢さS- ○生命力A- ○魔法防御A+
年により力が衰えたベールではあったが、それでも気闘陣を使った竜人よりも基本能力では上回っていた。
「そろそろ終わりにしようかの。」
ギルドマスターはそう言うと大剣を肩に担ぐと竜人に向かって突進してくる。
竜人はギリギリまでギルドマスターが向かって来るのを待つと、大剣を降り下ろすのに合わせ抜刀術を放ち刃がぶつかり合う。ピシッ、そう音を立てると大剣にはヒビが入っていた。
「それまで!」
審判役の秘書は竜人に軍配を上げると試合終了の合図をする。
「なるほど、攻撃を一点に集中して武器の疲労をさせ破壊を狙っていたか。」
「いえ、武器の性能差がなければ先にやられていたのはこちらです。」
竜人はとても勝ったとは思えずにいた。だがこの戦いには非常に有意義なものを得ることができたと心底思っていた。
気闘陣に頼った戦いではこの先必ず限界が訪れる。基礎の戦闘力の向上をしていかなくてはと感じていた。
「兄さんお疲れ様でした。」
「お兄ちゃんカッコ良かったよ!」
そう迎えてくれた二人に感謝の言葉を伝えるとギルドマスターの方に向き直る。
「手間を取らせてすまなかったの。お主ならばAランクの実力は確実にあるじゃろうが、経験がまだ足りん。取り敢えず三人ともCランクとし少しずつ経験を積んでいくとよい。奴隷解放の件は伯爵と連絡がとれ次第お主の宿屋の方に直接迎えを出そう。」
「いえ、ご配慮ありがとうございます。」
そして、訓練場を後にした一行は竜人たちはギルドカードを受けとると町へ買い物に出ていき、ギルドマスターと秘書は部屋へと戻って行った。
「どうじゃったかな、あの若者の感想は。」
そう尋ねたギルドマスターの問いに秘書は答える。
「まだ粗削りながらもその実力には目を見張るものがあります。あの見たこともない剣伎も見事でしたし、私も一戦してみたかったです。あと数年もして経験を積めばSSランクにも到達するやも知れませんね。」
「そうか、お主もそう思うか。アースドラゴンの襲撃といい、今のこの世界の情勢にいずれ必要となる人物に成やも知れぬの。」
今この世界では、魔物たちの発生や襲撃が活発になってきていていた。しかも、各地で高ランクの魔物まで確認されている。
それは昔、魔王が復活した時と状況が酷似していた。
「して、次は何処に向かうのじゃ」
「はい、西のネクベティー大陸に何やら魔族の目撃情報が入ったので確認に行って参ります。」
「そうか、いまさらお主に言うことでも無いかもしれぬが、気を付けていくのじゃぞローザンヌ」
「いえ、ありがとうございます。それでは。」
そう言うとローザンヌは部屋を後にする。ギルドマスターは一人部屋に残ると椅子に座り黙想をしていた。
ローザンヌ・・・ギルドマスターベールの一番弟子
○力S+ ○魔力S++ ○俊敏S+ ○賢さS- ○生命力S- ○魔法防御S
SSランク冒険者
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