第8話

 翌朝、目を覚ました一行は宿屋で朝食を済ませると注文した昼のお弁当をアイテム袋に仕舞い冒険者ギルドに向かうことにした。

 クーとピピはミーナの肩の上に居て、アルはエリスとミーナの間を歩いている。竜人は二人の前を歩き冒険者ギルドのなかに入っていった。


 ギルド内は朝ということもあり依頼書の貼ってある掲示板の前には人だかりが出来ていた。取り敢えずは姉妹の冒険者登録をしようと窓口の方に向かう。


「いらっしゃいませ、担当させていただきますラウラと言います。本日はどの様なご用件でしょうか?」

「ええ、こちらの二人の冒険者登録をお願いしたいのですが。」

「わかりました。こちらの用紙に記入をお願いします。」


 そう言うと登録用紙を出してきたので記入を行う。記入した用紙を受けとるとラウラ竜人に確認をしてきた。


「お二人は竜人様の奴隷でパーティーに加入されるということでよろしいのですね?」

「はい、お願いします。」

「冒険者ギルドの説明の方はいかがいたしましょう?」

「いえ、そちらの方は以前聞いて居ますので大丈夫です。」

「それではお二人のギルドカードをお作りしますのてしばらくお待ちください。」


 それからしばらくして二人のギルドカードが渡される。ギルドカードにはFランクと記入されており、俺の奴隷との情報が登録されていた。


 ギルドカードを受け取ったので早速掲示板のEランクのところへと向かう。受けられるランクはパーティーメンバーの最上位のランクまでとされている。

 依頼には採取依頼、討伐依頼があり常時依頼と臨時依頼に分けられる。


 竜人たち一行は常時依頼の薬草採取と討伐依頼を受けることにした。常時依頼は特に申請は必要ないのでギルドから出ていくことにする。


 薬草についてはエリス姉妹が以前から行っていたことから、アルの嗅覚を頼りに探すことにする。

 魔物はピピに空からの探索をしてもらうことになった。クーにはミーナとエリスの護衛をお願いした。


 門番に身分証を見せて町の外に出ると、南東の森に向かって歩き出す。森の奥に進んでいきしばらくするとアルが吠えて先に進み出す。

 三人があとに続くと内服薬の元のルルナ草が群生している場所に出た。アルとピピに周囲の監視を頼むと三人は採取を始めた。


「竜人さん、あまり取りすぎてしまうとしばらく採取出来なくなってしまいますので、僅かに残す様にしてください。他の人の迷惑になってしまいますので。」


「わかった。それにしても結構生えているものなんだな。」

「ここは結構穴場みたいだよ、竜人お兄ちゃん。」

「そうですね、ここまで群生しているのは滅多に見ませんよ。」


 そう言って結構な量のルルナ草をアイテム袋にしまうと再び周囲の捜索を開始した。

 その後も順調に毒消しのエーギ草、稀少の魔力内服薬のノルス草の採取に成功した。


「いやあ、アル様々だな」

「前よりも見つかる精度が上がっている様に思います。恐らくは幻獣化してステータスが上がったことが影響しているのではないでしょうか?」

「アル凄いの?」

「ああ、ここまでの成果はアルのお蔭だな」


 それを聞くとミーナは嬉しそうにアルに抱きつくと体を撫でていた。アルも嬉しそうに鳴きながらミーナに体を擦り付けていると、ピピとクーも自分もというように鳴いていた。


 三人はしばらく三匹を可愛がっていると、ミーナの方から「くー」とお腹のなく音がした竜人はミーナの頭を撫でると二人に提案する。


「そうだな。結構頑張ったからお腹が空いてきたな。ここら辺で昼食にしようか?」

「わーい! 私お腹すいちゃった。」

「それではあちらの陽当たりのよい場所に準備しますね。」


 そうして、地面に敷物を敷くとお弁当のサンドイッチと水を用意する。アルには肉を、ピピとクーには木の実を用意してみんなで昼食を始めた。


「おー、このサンドイッチの肉は美味しいな、なんの肉なんだろう?」

「これはオークの肉だと思います。庶民には馴染みのある魔物の肉なんですよ。」

「美味しいねー」

 ミーナはアルたちに話しかけながらサンドイッチを夢中で頬張っていた。竜人はつい釣られて笑顔になってしまう。


 そして、午後の予定について話し合う。

「取り敢えず採取の方はこれぐらいにして、午後は魔物たち相手に戦闘訓練をかねた実戦をしようと思うんだけど大丈夫かな? もちろん無理のない範囲でやるつもりだけど。」


「そうですね。訓練だけでは何かあったときに咄嗟に動けないことにもなりそうですし、私は構いません。ミーナは大丈夫?」

「うん! 竜人お兄ちゃんもいるしアルたちも守ってくれるから怖くないよ。」

 そう言うとアルたちは当然というようにそれぞれ鳴き声をあげていた。


「それでは午後は討伐依頼を行う。陣形は俺が先頭でその後ろにエリスとミーナが付いて来て左右の警戒をしてくれ。一番後ろはアルが付いて、後方の警戒をしてくれ。クーは二人の護衛でピピは上空から監視をして、なにか見つけたら知らせてくれ」


 それぞれに指示を出すと皆から了解の合図を受け食休み後に再び森のなかを歩き出す。


 三十分ほど移動すると最初の魔物に出会う。

「こいつはゴブリンだ。戦闘能力は高くないが数が多く武器を使ってくる。油断せずにいくぞ。アルたちは幻獣に変身してくれ。」


「お兄ちゃん。ピピがゴブリンの数は六体だって言ってるよ。」

「わかった。ピピは引き続き上空から監視して追加があったら攻撃と連絡を頼む。クーは結界で二人を守れ。二人は奇襲を警戒して、もしそちらに行ったら無理せず防御に専念してくれ。アルは敵の後方から撹乱するように攻撃してくれ。俺は正面から仕掛ける。いくぞ!」


 竜人が指示を出すとそれぞれが行動を開始する。アルは幻獣に変身すると、ゴブリンたちの後方に回り込むと一体ずつ数を減らすように攻撃を開始する。


 圧倒的な実力差があるようで瞬く間に三体の討伐をしてしまう。竜人も暁を抜くと一気に距離を詰め一体目のゴブリンの首をはねる。

 弓持ちのゴブリンが竜人に向けて矢を放つも、あっさりとかわして袈裟斬りに倒す。


 最後の一体も竜人に向けて剣を降り下ろそうとするが、その前に横を走り抜けるとすれ違い様に首をはねてあっという間に最初の戦闘が終了した。


「終わったな。みんな無事か?」

「竜人さん、すごく強いです。」

「お兄ちゃんすごい。」


 二人がそれぞれ誉めてくれ、少し照れ臭そうに頭をかきながら暁の血を振り払うと鞘へとしまう。幻獣たちもそれぞれミーナ達のところに戻ってきて体を撫でられていた。


「ゴブリンは特に素材は存在しないから討伐証明の魔石を回収するか。」

 三人はゴブリンから魔石を抜き取ると穴を掘り死体をまとめると、森に燃え広がらないよう注意してピピに燃やして貰うことにした。


 それからしばらく周囲を探索し何度かの戦闘を繰り返した。主にゴブリンやコボルトと言った弱い魔物が中心だったが、オークも二体ほど刈ることができ素材はそれなりに売れるので、そろそろ引き揚げようかとみんなに伝えた引き返すことにした。


「今日は大猟だったな。これならかなりの金になりそうだな。」

「そうですね。今日の稼ぎだけでも一月分はあるかと思います。」

「やったー。今日はご馳走にしよう、竜人お兄ちゃん。」


 ミーナの言葉に竜人はそうしようかと伝えアルたちも嬉しそうに鳴く。

「今日はまた異世界の物語聞かせて。」


 ミーナは竜人から聞かされた昔ばなしやマンガが気に入って、寝る前にいつもいろんな話を聞かせていた。

 エリスも興味深そうに聞いていたので、満更でもないようだった。ミーナのお願いを快諾すると戻り始める。


 すると遠くの方から「ぐるらああああああーーーーーー」という咆哮が響いてきて、周囲から魔物や動物たちが次々と逃げていく様子が見られた。


「一体なんだ?」

 竜人は暁を抜くと注意深く様子を観察する。

「竜人お兄ちゃん、ピピが遠くから大きな魔物がすごい早さでこっちに向かってくるって言ってるよ!」


 ミーナが叫ぶとドシンドシンと地面が揺れるのを感じ、竜人も気配を感じとりこの早さでは避けられないと覚悟し見通しのよい場所に移動すると迎え撃つ。


「みんな戦闘準備だ。」

 そう指示を出してしばらくすると今まで見たことのない巨大な魔物が姿を表した。

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