第7話

「それじゃあミーナ右腕を出して。」

「はい、お兄ちゃん。」

 そう言うと右腕の奴隷紋を竜人に見せる。


 (さて、ミーナの場合はどうなるのかな)。

 一抹の不安を感じながらも奴隷契約を開始する。その瞬間先ほどと同じように光ると義の珠がミーナの体に吸収されていく。 早速ミーナに許可を貰いステータスの確認を行う。


ミーナ 人間 12歳

能力値

○力D- ○魔力C+ ○俊敏E+ ○賢さD+ ○生命力D- ○魔法防御C

装備

○ナイフ、ローブ

特殊技能

○幻獣使役 ○能力解放

所属

柳竜人の眷族(奴隷)


○幻獣使役・・・幻とされる獣を召喚使役することができる。


○能力解放・・・自身の魔力を幻獣に上乗せすることで能力を大幅に上昇することができる。


 (またしてもヤバそうな能力だな。しかし、確認はしっかりしとかないとな)。

 竜人はミーナに能力を使ってみて貰うようにお願いする。


「わかった! お兄ちゃん。う~ん、えい!」

 そう言うと次の瞬間にはそばにいた三匹のペット達が光に包まれて先程とは全く別の生き物のようになっていた。


フェンリル・・・巨体を持つ狼型の幻獣。攻撃力、素早さ、防御とバランスのとれた能力を有する幻獣最強種。氷魔法も使用できる。前身は犬の「アル」


カーバンクル・・・額に赤い宝石を宿した幻獣。防御に特化しその結界はあらゆる攻撃を防ぐとされている。前身はリスの「クー」


フェニックス・・・炎を身に宿し不死身とされる幻獣。その炎はあらゆるものを焼き付くす。前身は鳥の「ピピ」


 (うわ~、これはまた凄いチート臭い能力だな。これ下手すると俺の方が足手まといにならないか?)

 そう思いながらミーナにありがとうと言うと疑問に思ったことを尋ねる。


「ところでミーナ、この子達はこの状態のままなのかな?」

「うーんとねえ、元には戻せるみたい。戻した方がいい?」

 このままでは激しく目立ってしまうと考えた竜人は、戻して貰うようにお願いすると三匹は元の動物の状態に戻る。

 ただし、額部分には八角形の水晶のような石がはまっていた。


 動物たちは好きなときに幻獣へと変身できるとの事だったので、こちらからの指示や姉妹に危険があるとき以外の変身は極力控えるようにミーナに伝えてもらった。


 ミーナは幻獣たちと意志疎通ができるようで、一応こちらの言葉は理解できているのだそうだ。

 また、動物状態でもある程度までのステータス上昇効果やスキルの使用もできるらしく、見た目以上に強いらしい。


 (しかし、俺ですらこれほどのチート能力だと、ねーちゃん下手したらこの世界滅ぼせるほどの力を得ていても不思議じゃないな。頼むから暴走しないでくれよ。)


 そう願いながら今日は一日どっと疲れたので早めの就寝をすることにした。念のためエリスにはサンクチュアリを発動して貰った。


 朝まで持つものは魔力の半分ほど使用しなくてはならないそうだが、寝ている間にほとんど回復されるとのことだった。

 夜間の見張りは幻獣達がほとんど眠る必要がないとの事だったので(眠ることはできる)、何か異常があれば竜人を起こすように頼んである。


 翌朝、何事もなく目を覚ました竜人たちは朝食の準備をして、馬たちにも餌を与え再び街道を進み始める。


 十日ほどかけて三つの町や村を経由して少し大きめのアテルナの町にたどり着いた。

 立ち寄った場所で姉の情報は得ることができなかったが、それまでの間に幻獣たちと竜人が軽く手合わせをしたり、エリスには杖による棒術の護身術、ミーナには短剣の護身術などを教えたりした。


 また、エリスには馬車の操縦についても教えたり、姉妹に竜人の世界のことやこの世界のこと、姉の舞のことについて話したりとなかなか充実した日々を過ごすことができた。


 ようやくしばらくゆっくりできると思いつつ、門番に身分証と通行料を払い馬車を預けることができ、犬のアルも泊まれる今夜の宿を探すと二つ部屋を取った。そして竜人の部屋に姉妹を呼び今後の予定の話をする。


「さてと、今残りのお金が金貨一枚ほどになってしまったのでこの町で何か依頼を受けてお金を稼ぎたいと思います。」

「そうですね。この町は他より大きいですし依頼の数も多いと思いますしちょうどいいかもしれません。」

「私も冒険者になりたい!」

 ミーナは手を挙げると竜人とエリスに言った。


 一応ハーデの町の受付嬢のルシカに説明を聞いていて、奴隷でも冒険者登録はできるとのことだった。ただし、ランクはCが最上位となり主人のパーティーに加入していることが条件となっているのだが。


「今後の事を考えるとその方がいいかな。エリスも登録して大丈夫か?」

「ええ、少しでも竜人さんの役に立ちたいですしご迷惑でなければ。」

「やったー! みんなー私たち冒険者になれるよ。」

 そう言うとミーナはアル、クー、ピピと嬉しそうに抱き合っていた。


「ミーナ、危険なこともあるから俺やエリスの言うことをしっかり守るんだぞ。」

「うん。竜人お兄ちゃん」

 とても素直に返事をするミーナに「偉いぞー」と言って頭を撫でると動物たちに向かい話しかける。


「ミーナやエリスたちをしっかり守ってやってくれな」

 そう言うと三匹の頭を順番に撫で、動物たちもそれぞれ鳴き声をあげ了承の意思を示した。

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