第6話

 首都に向けて出発した一行は順調に街道を進んでいた。そんな馬車の中では楽しそうなミーナの声が聞こえていた。

「アルー、お手」


 ミーナはお手をした犬の背中を撫でながら笑っていた。エリスも最初は遠慮がちだったが段々とミーナに釣られ動物たちに構い始めた。


 そう、ミーナはすごく動物に好かれる体質で家には犬の「アル」、リスの「クー」、鳥の「ピピ」の三匹を飼っていた。


 最初は旅の邪魔になることを危惧したエリスが動物たちを放そうとしたのだが、ミーナが大泣きしながら抵抗していたため困り果ててしまい、そんな状況を見た竜人は同行を許可したのだった。


 その時ミーナから「ありがとう、竜人お兄ちゃん」と言われ悶えてしまったのは秘密だ。

 (たく、隆司にでも知られたら何て言われるかわからんな。今度は妹の方のシスコンとか有らぬ誤解を受けそうだ)。


 そして二日目の野宿の準備をし(二人は馬車に敷き布団と毛布をかけ、竜人は外にテントを張って)、夕食を食べ終えてからいよいよ奴隷契約をする運びとなった。


 やり方は隷属の指輪を付けて奴隷紋に登録者の血を付けるというものだ。まずはエリスから登録するため竜人は腕にある奴隷紋に血を付ける。


 するとまばゆい光と共に竜人から五百円玉大の珠が出て来てエリスの体へと吸い込まれていった。その珠には仁と漢字で書かれていた。


「今のは何だ? あれが普通の事なのか? こんなことが起きるとは聞いていなかったんだけどな。」

「私も聞いたことありません。仮契約の時も特になにも起きなかったんですが・・・・・・」


「体には何か異常はないかい?」

そう聞いたが、エリスは特に変わったところはないとの答えだった。


「エリス、ちょっとステータスを見せてほしいんだけどいいかな?」

 奴隷の主人はそのステータスを確認することができるのだが、エリス本人の本人の了承を得てから竜人はステータスを確認した。


エリス 人間 15歳

能力値

○力C ○魔力B+ ○俊敏C ○賢さB+ ○生命力C+ ○魔法防御B

装備

○杖、ローブ

特殊技能

○回復魔法 ○補助魔法 ○結界魔法

所属

柳竜人の眷族(奴隷)


○回復魔法・・・ヒール、メガヒール、ギガヒール、エリアヒール、キュア、エリアキュア、リペア


○補助魔法・・・クリエイトパワー、クリエイトマジック、クリエイトプロテクト、クリエイトマジックプロテクト、クリエイトクイック


○結界魔法・・・エリアサークル、サンクチュアリ


○ヒール・・・生命力を回復する。メガ、ギガと威力が上昇する。エリアヒールは広範囲回復魔法で威力はヒールと同等。


○キュア・・・毒や混乱、恐怖等の状態異常を回復


○リペア・・・身体の欠損を回復する。重度になるほど消費魔力は上昇する。


○クリエイト・・・力、魔力、俊敏、防御、魔法防御が一時的に上昇する。


○エリアサークル・・・結界を張り物理、魔法の攻撃を防ぐ。ただし使用者の魔力以上の攻撃力に対しては破られることもある。


○サンクチュアリ・・・魔物の侵入を防ぐ聖域結界を張る。人間に対しては効果はない。


(どういうことだ? 一応奴隷にはなっているようだが、眷族ってどういうことだ? それにステータスが以前本人に確認したときとは全然別物になっている)


「エリス、自分のステータスを確認してくれ。」

 そう竜人が言うとエリスはステータスと唱える。

「何ですかこれ? 以前と全然違うし、魔法も三種類も使えるようになっています。それにこんなに高位の魔法なんて使えるのは冒険者でもかなりの実力者出ないと使えないはずなのに。」


 エリス自身も驚いた様子だった。(これは俺のせいなのか?)そう考えた竜人は自分のステータスを確認する。


柳竜人 人間 17歳 異世界人

能力値

○力A ○魔力A+ ○俊敏A ○賢さB+ ○生命力B+ ○魔法防御B

装備

○神刀「暁」、皮の防具

特殊技能

○気闘陣 ○鑑定 ○メーナス言語

異能

○仁義八行

所属

眷族(奴隷)エリス


仁義八行じんぎはっこう・・・能力者は仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌の珠を使い眷族を八人まで持つことができる。眷族となった者は本人の資質に合わせた能力が覚醒され、引き上げられるステータス上昇効果は特大。


 (やっぱり俺のせいか。それにしてもこの異能、なんて里見八○伝だよ)。

 思わず突っ込みをいれた竜人はエリスに話し掛けた。

「エリス、どうやら今回のことは俺のせいみたいだ。」


 そう言うと自分の置かれた状況をエリス姉妹に説明をし始めた。自分が異世界から来たこと、行方不明の姉を探していること等を全て伝えた。


「今まで黙っていてごめんな。」

「いいえ、そんなこと会ったばかりの人に軽々しく話せることではないですよ。それにこれで竜人さんの 足手まといになることはないので嬉しいです。」


「ミーナも俺の眷族になってしまうがいいかな?」

「うん、私もお兄ちゃんの役に立ちたい。」

 そう言ってくれたミーナの頭を撫でると契約の準備をする。

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