第5話

 男たちを戦闘不能にした竜人に対してルシカが声をかけた。

「竜人様、ギルド内での戦闘は禁止なのですが・・・・・・」

「すみません。ですが降りかかかった火の粉を払いのけただけですけどね。」


「まぁ一部始終見ていましたからどちらに非があったかは明白ですが、ギルド員の中にはこのように血の気の多いものも居ますのでお気をつけください」

 そう言って気絶している男たちを見る。


「ところでこいつらの処分についてはどうするんですか?」

「はい、ギルド内での武器の使用は重罪ですのでギルド資格剥奪の上、犯罪者奴隷として処分されるのが通例ですね。」


「それは良かった。また絡まれるのは面倒ですからね。俺はもう帰ってもいいんですか?」

「ええ、構いません。あとの処理はこちらでやっておきますので」

 それを聞くと今度こそ竜人はギルドをあとにするのだった。


 再びエリス姉妹の家に戻ってきた竜人は、扉の前でエリスたちを呼び許可を得てから中に入った。

「いらっしゃい竜人さん」

「お邪魔します。」


 エリスとミーナに迎えられ先程までの出来事を忘れ気分良くなった竜人は、今後のことについて話し合うことにした。


 (やっぱりこのまま放置するわけにはいかないよな。もし二人を見捨ててねーちゃんに会ったとしても、その事がねーちゃんに知られたら絶対軽蔑されるよな。ヤバイ、そんなことになったら絶対死ねる)。


 もしここに地球にいる隆司がいたら「どう見てもシスコンです、本当にありがとうございました。」と突っ込みを受けるだろう事を考えながら結局以下のようにすることに決まった。


 一、他の誰かに奴隷登録をされないよう竜人が主人になるが、あくまで対外的であり三人の時は今まで通りに接すること。


 二、二人には姉を探すための旅に同行してもらう。ただし危険なときはどこかの町に一時的に待って貰う。


 三、姉探しと平行して奴隷解放の方法も探す。


 奴隷契約は奴隷商人が持っていた隷属の指輪があればできるとの事だったが、家にいるときにはまだしたくなかったので旅に出たときにすることにした。

 とりあえず今後の方針を決めた三人は、旅の準備が整うまではしばらく家に泊まらせて貰うことにした。


 次の日から竜人はエリス姉妹と一緒に道具屋で薬やテント、アイテム袋を一つ買い足し、調理道具を揃え、食料店で日持ちのする食料や塩や香辛料を購入した。


 武器屋では一通りの武器を購入してエリスは回復魔法が少し使えるとのことだったので杖を、ミーナには念のため短剣を持たせることにした。


 防具では竜人は動きやすい皮製の部位を守る装備を、二人には魔物の皮製のローブを購入した。着替えのなかった竜人は数着買うことにした。


 あとは、馬車の改装をお願いし、檻は外して売却し中を座れるようにしてクッションも敷き、八人ほどが座れるようにして、後ろに荷物がおけるスペースを確保する。


 また、座るところを可変式にして夜は布団を敷いて寝られるようにした。そして襲撃されたときに籠れるよう、内側に鉄板を敷いてドアには鍵つきの扉を左側と後ろにつけた。


 通気のため開閉式の窓はつけた。御者席と馬車の中にも扉で行き来出来るようにした。

 改装が終わったら連絡をお願いし、ついでに馬の餌も大量に注文しそちらは買い足したアイテム袋に水と一緒にしまう予定にする。


 これまでの代金で、盗賊討伐と商人たちのお金をほとんど使いきり、残りは金貨二枚程になってしまった。


 メーナスの世界では通貨はほとんど統一されていて、種類は銅貨、銀貨、金貨、金板、白金貨とに分けられ十枚ごとに次の貨幣と同じ価値になっている。金貨五枚ほどで一家族が一月暮らせるとのことだった。


 あとは姉の行方について何か情報はないかと聞き込みをしたがそちらについては空振りに終わってしまった。

 取り敢えず次の目的地についてもエリスと相談したが、やはり人の集まる首都に向かうのが良いだろうと決まった。


 メーナスの世界は四つの大陸からできている。最も北にあるのがナルウス大陸、東にはバスルド大陸、西にはネクベティー大陸、そしてこの町がある南のメルクヌス大陸である。

 

ハーデの町はコーデル王国に所属する一つであり、首都はヤムウェルといいここからは馬車で二十日ほどの距離にあるとのこと。


 途中でいくつかの町や村に寄って目指すことにしたのだ。そして十日が過ぎ準備をすべて終えた一行は首都を目指して出発するのだった。

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