第4話

 持ち物を粗方回収すると死体を片付け、盗賊たち八人を馬車の檻に閉じ込めた竜人は、エリスとミーナを御者席に座らせて馬車を走らせた。後ろに乗せて盗賊たちと同じ空間には居竜人の配慮からだった。


 (いや~馬に乗る訓練しておいて助かったな。取り敢えずの馬車の操縦はなんとかなりそうだな)。

 さすがの竜人も馬車の操縦はしたことはなかったが、馬の扱いはそれなりに出来るのでなんとか馬車を走らせていた。


「そうか、エリスは15歳でミーナちゃんは12歳なんだね。その年で二人だけでの生活は大変だったろうに。」

「いえ、両親は家と少しですが蓄えを残してくれていましたし、ミーナにも手伝いをしてもらっていましたから」


「そうか、ミーナちゃんはしっかりお手伝いができて偉いなぁ」

 そう言うとミーナの頭を撫でる。

「えへへ。」

 ミーナはそう言うと嬉しそうに笑っていた。(大分恐怖がなくなって落ち着いてきたな)。竜人は話をすることで段々と二人と打ち解けてきたと感じていた。


「竜人さんはどうして一人で旅をしているんですか?」

 さすがに様付けでは打ち解けにくいのと、何より竜人自身むず痒い思いを感じたのでさん付けで呼んでもらっている。


「ああ、ちょっと姉を探していてね。こんな武器を持っている女性に心当たりはないかい?」

 「暁」を取りだし鞘から抜いて見せる。

「すみません。心当たりはありません。」


 エリスは申し訳なさそうに答え、ミーナも「んーん」と首を横に振っていた。

「気にしなくて良いよ。そんな直ぐには見つかるとは思っていないから。」

 特に気にした素振りも見せず笑顔で答える。


 そうして三日間の移動を無事何事もなく終えてようやく「ハーデ」の町に着くことができた。門番がいるところまで進むと門番に止められる。


「止まれ。後ろの積み荷の確認をさせてもらう。」

 そう言うと後ろに回り檻のなかにいる男たちを見て竜人に話しかける。

「この男たちはどういうことなんだ?」


 そう聞かれたためこれまでにあった出来事を説明する。門番は姉妹とも面識があり苦々しく思っていたのだが、自分ではどうにもならないと思い竜人と奴隷二人分の通行料を取ると冒険書ギルドの場所の説明をして通してくれた。

 一応監視のため兵士の一人が付いてくることとなったが。


 冒険者ギルドに行く前に、一旦姉妹を家に送り届けると盗賊たちを引き渡してくるから待っていてくれるように頼み冒険者ギルドに向かう。

 ギルドに着くと兵士が先に中に入り事情説明をしてから戻っていった。竜人はギルドの受付まで来ると受付嬢と話をする。


「竜人様、この度は盗賊退治をしていただきありがとうございます。私はギルド受付をしていますルシカと申します。竜人様は冒険者登録の方はなされていますか?」

「いえ、ギルドに来るのは初めてです。登録の方をお願いしたいのですが良いですか?」

「もちろんです。それではギルドの説明をいたしますね。」


 説明内容は次のとおりだった。冒険者はSSS、SS、S、A、B、C、D、E、Fの九段階に分けられている。

 依頼は自身のランクまでの受注しかできないこと。

 依頼の失敗には罰金が課せられ、払えないときは最悪奴隷落ちになること。

 冒険者は各町にあり、お金を預けられ引き落としも自由に行える。


 また、ランクに応じて借金もできること(利息あり)、情報はギルドカードに登録される。

 Bランク以上になるには所定のギルドでランクアップ試験に合格する必要があること(ただし、Bランクからは指名依頼があり基本的には断れない)等の説明がなされた。


「竜人様が討伐された盗賊はCランクに相当する依頼でしたが、突発的な遭遇による討伐と、まだギルド登録がなされていなかったため特に罰則のようなことはございません。


 本来FランクスタートですがEランクからの登録とさせていただきます。それでは盗賊討伐の報酬と魔石の買い取り金の金貨10枚と銀貨二枚をお受け取りください。」


「盗賊たちのアジトには残党がいるようだがそちらはどうするんだ?」

「情報を引き出し次第新たな依頼として出されることになるでしょう。」


 竜人はアジト討伐に、行く気はなかったため良かったと思いつつ、討伐金と魔石の買い取り金にギルドカードを手に取った。


「他に何かご質問等はごさいますか?」

「いや、今のところは良いよ。また何かあったら尋ねさせてもらう。」

 そう言うと竜人はギルドから出て行こうとする。しかし、竜人の前に一人の男が立ち塞がってきた。


「おいおい、兄ちゃんのようなひょろい体したやつが八人相手に討伐したとか冗談だろ。大方金で雇った誰かに協力してもらってたんじゃないのか? お前でCランクの依頼が完遂できるなら俺はとっくにAランクになってるっての。なぁ?」


 そう言うと後方にあるテーブルに座っている男たちを見て声をかけた。後ろからは「全くだ」「ちげえねえ」との返事が返ってきた。


「仮にそうだったとしてもお前には関係ないことだろ。」

 竜人はそう言うと横を通過しようとしかたがさらに立ちふさがってくる。


「そういうわけにはいかないんだよ。弱いやつがランクアップして依頼を失敗するとギルド全体の信用問題にもなるんだよ。」

 そう叫ぶと竜人に掴み掛かってきたため、あっさりとかわすと首筋に手刀を落とすと男は意識を失い倒れてしまった。


「てめえ何しやがる」

 先ほどのテーブルにいた三人は怒りを露にして武器を手に竜人に襲い掛かってきた。

 

 竜人は剣や斧の攻撃をかわし続けると男の一人を掌底で顎を打ち上げ、二人目は鳩尾に蹴りをいれ、三人目は背負い投げをしたあと突きを放ち三人の意識を刈り取った。

 わずか数十秒の出来事に誰も止めることができず静寂がギルド内を支配していた。

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