22
ドン!
『や、やったかっ!?』
それは当然〝やっていない
四人はジノの姿がないことに驚きを隠せず、互いの顔を見合う。
『ど、どこにいったっ!?』
『あ、ああっ!?』
後方の一人が気づき、上空を指す。
ちょうど崖の上の高さにジノがふわりと浮かんでいる。
「ふぅ」
息を吐くジノ。
巨漢が四方から迫る恐怖はあったが、「せーの」のかけ声があれば、自ずとぶつかる
『く、くそうっ! これだから
美男子かどうかは関係ないが、悔しがる連中をこのまま置き去りにして先に進んだほうが良さそうだ。ジノは高度をそのままに加速しようとした。
すると、右から猛烈な気配を感じた。
確認するまでもない。
しかし、岩大蛇のほうが早い。身を屈める形で箒を倒すジノの穂先を掠めた。
「っ!?」
その猛烈な風圧により、ジノは
「うわぁああああああっ!?」
どうにか体勢を整えようとするが制御が効かない。右も左も区別がつかないまま谷底が近づいて来る。
(ええいっ!)
ままよ。
激突の危険も顧みず、強引に柄を引いた。
しかし角度が浅い。左側の壁が迫る。
「もぉういっちょぉおおおおおおっ!!」
ジノはさらに柄を引きつける。
あと半箒身のところで直角に近い軌道を描き、やや螺旋状に曲がりながらも、壁を回避する。
そして、そのままの速度で体勢を立て直し、先を急ぐ。
『ま、まてぇ!』
『あ、ああっ!? バ、岩大蛇がこっちに来るっ!?』
『う、うわぁああああっ!?』
『た、たすけ――』
四人の声はそれきり聞こえなくなったが、ジノは振り返ることはなかった。
★★★
一方、先頭を行くアリスたちは、そろそろ谷の出口に差し掛かっていた。
谷を抜ければ魔物たちに襲われる心配はなくなる。だが、安堵はできない。
(仕掛けるとすれば、ここね)
おそらく、この場にいる全ての者が思っているのであろう。
アリスとしてもここで先頭に立ち、一気に突き放しておきたいところであるが、先ほどの陣形――『アマーリオ』は最後尾、左は『オルコック』右に『ハインカーツ』そして〝風除け〟は再び『ノッティーユ』が務めるという、最も分が悪い位置にいる。
できれば、谷を抜ける前にジノが合流して欲しかったが、〝たられば〟は詮無きことである。
とにかく時機を見誤らないことに留意し、三人で上手くやるしかない。
「ウーゴ、オッジ」
『ああ』
『わかっておるわい』
全てを語らずとも理解している。二人の力強い返事が頼もしい。
そうこうしていると、ジャンビルの谷が終わる。
――今だ!
続くアロタオ砂漠に突入すると同時に全員が加速した。
『オルコック』と『ハインカーツ』は、それぞれ左右に膨らみながら、そして『アマーリオ』は『ノッティーユ』を飛び越えるかのように、大人二人分の高度を取りつつ、一列の〝
勿論、『ノッティーユ』も負けじと前へ出るが、一人、零れた。
ロメオだ。
一番前で〝風除け〟を担っていた彼は、低すぎたのか、盛り上がった砂に柄先を取られた。
転がるようにして落箒するロメオ。
咄嗟の判断で後続の三人は散開し、巻き込まれることはなかった。
流石は『ノッティーユ』言うべきであるが、一人減ったのは、またとない幸運である。
「行くわよ!」
『おうよ!』
『ここが勝負の分かれ目じゃな!』
オッジの言うとおりである。
魔力を惜しむことなく加速するウーゴに引っ張られるかのように、オッジとアリスは続いた。
そうして、永らく後世に語り継がれることとなる〝アロタオの
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます