3
自身の執務室に戻ったソルドは、机の上に飾られた一枚の古い小さな絵――水晶を通し、光景を魔法で焼き付けた
「また見ておるのか?」
声の主はオッジだ。
ノックもせず、勝手に入ってくるのはいつものことである。
「何かあったのか?」
「ダーニャが辞めたそうじゃ」
「……そうか」
「引き留めんでいいのか?」
オッジが顎でしゃくった窓の向こうには、まとめた荷物を引きずりながら、肩を怒らせて遠ざかっていくダーニャの姿がある。
「彼女が決めたことだ。わざわざ私が口を挟むことじゃない」
「辞めたのがアリスかジノであっても、同じことを言うたかのう?」
「……」
「ほっほっほ! お前さんはわかりやすい……海千山千の
「そう思うならば、お前がギルドマスターをやればいいだろう?」
「バカを言うな! わしは生涯現役と決めておるんじゃ!」
子供みたいに頬を膨らませるオッジには、実際、その力はある。
老いてもなお衰えぬ魔力は、ソルドには羨ましい限りだ。
すると、オッジの顔が急に曇り出す。
「……それがあやつとの約束じゃからな」
視線は手元の念画へと向けられていた。
「約束か……」
念画には、二十年前のルマディーノ杯で優勝した、今は無き飛箒ギルド『ピッカルーガ』の面々が写っている。
「……なら守らないとな」
前列に並ぶ出箒者には、若き日のソルドとオッジ、そして優勝杯を無邪気に掲げるジノの父――カルロ・リーベンの姿があった。
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