愛してるの名前

私がこの体になったのは、24歳の冬でした。


その日私は山で薪拾いをしていて、熊に襲われたのです。

私を囮にして、皆は逃げました。私はこの世の無情を見て、そして、


死んだのです。


そして次の日、村に帰りました。

変わり果てた私の様子を見て、皆は泣き叫び、母だけが抱きしめてくれました。どんなになってもあなたを愛してると言って泣きました。


されから月日は順調に過ぎ、十年、十一年と経ちましたが、私は衰えず、また腹も空かず、その内水と陽の光だけを浴びて寝て過ごすようになりました。


父が死に、母が死にました。

兄弟は年老いて、私に子供を、子供に私を任せてその内死にました。


順々に皆は死にました。私はその内施設に入れられて、結婚を9回して9人の子供を産みました。


皆何かに秀で、何かに劣っていました。

ある日、科学者がもう限界だと言って発狂し、施設の者を一人ずつ撃ちました。


一人、また一人。


私達は奥へ、出来る限り奥へ逃げて行きました。

科学者の笑い声が響きました。


最後の扉が開いたその時、一番勇敢な子が飛び出して、科学者ともんどり打ち、科学者を倒しました。


しかしその子も死ぬのです。


母さん私はあなたを愛していましたが、あなたはどうでしょう?と彼が息も絶え絶えに聞きました。


だから私は答えたのです。


私が何であろうと愛してくれたように、私もあなたを愛してる、例え人殺しであろうと。


そうして初めて抱き寄せて、頬ずりしました。


このたった一人を失い初めて、私は人を愛することを知ったのです。


思い出せば出すほどに、彼は周りをよく守り、闘っていました。


私は8人の子を連れ施設を出ました。あの子は施設と共に火葬しました。


私達これからどうなるの、と一番小さな子が不安がって泣いたので、母さんがいれば大丈夫、と言って額を合わせました。


歳をとらない不思議な子供達と私、世界は広大でした。


もうダメかもしれない、そう思うたびに、あの子と母の言葉が私を押すのです。


私はあなたを愛してる。例えどんな人間であったとしても。


私は子供達に名前を与え、私の名を思い出しました。


私の名は。

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