聞いたことの無い地へ

「大分うっそうとしてきたな。それにしてもまさか橋?が有るとは思わなかった」

「お兄ちゃん、これ橋って言うと何か違う気もするから道で良いよ」

「この森入ってくると昼だってのに暗いな。そこまでではないけど」


周りの状況を説明しよう。とにかく暑く、妙に空気が湿っていてまるでサウナだ。でも、そんなんじゃない。


何かに会ったのかと聞かれると動物の遠吠えが怪しく聞こえてくるのみ。其れが魔物なのか動物なのか、まぁ、得体の知れない何かである事は間違いない。


そして所々に有る文明の跡。一体何があったのだろうか...とにかく今の俺たちにとっては謎すぎる場所で有る事には間違いないだろう。一番最悪なのは帝国の領地で有る事だけだが...


「あ、お兄ちゃん!さっき近くで音がしたよ!」

「⁉︎本当か!」

直ぐさま腰から剣を抜き何がきても良いよう腰を下げ退避体制を取りながら構える。どこから来るか分からない以上先攻が相手にあることは仕方がない。


妹の方に目をやり杖を構えた事を確認した。緊張で額から汗が流れ出るがそんなもの気にする訳にはいかない。


その瞬間、目の前に人間とは思えない速度で飛び降りたそいつはこちらを見る。

「誰だ...」

「わたしはフォッサだよ。あなたはどこからきたんだい」

「俺か?俺達はアラツ共和国の者だ。知ってるなら教えて欲しい」

「アラツ共和国?聞いたことがないちほーだね」

ここで俺が剣を構えていることを忘れていることに気がついた。多分、警戒してたのに出てきたやつがいきなり攻撃もしなかったからだろう。


でも、油断することはできない。相手が何者なのか分からない以上。妹もこちらを見ずに相手に集中している。

「失礼かもしれないがここはどこだ?あと、お前は何者なんだ?」

「ここは、ジャパリパークだよ。さっきも言ったよ。わたしはフォッサ」

「ジャパリパーク...?ん?」

ここでフォッサに尻尾が付いているのと、頭に耳が付いていることに気がついた。獣人...か?いや、でも...いやまさか。獣人は600年位前に絶滅しているはずだ。ジャパリパークなんて聞いたことも無いし、自分の前にいる以上嘘などでは無い。

「お兄ちゃん、ここ、色々おかしいよ」

表情には出ていないが得体の知れない何かに襲われているようだ。自分もそうだが。

「あの、フォッサ。この辺に街はないか?村でもいい」

「村?村なんてないよ。一人で生きていかないと、それがジャパリパークの掟だからね」

「おい、それは一体どう言う意味なんだ」

「まぁ、頑張ってね」

「な、おい!フォッサ!待って!ちっ、逃げられたか。敵ではないようだったけど、この先大丈夫だろうか」

「お兄ちゃん、食べ物とかどうしているのか聞けば良かったのに」

「あ...」

そんな俺の声は微かに動物の声のするジャングルの中で虚しく騒ついたのであったー


「はぁ、ちょっとだけ休憩を取ろう。少しだけだから終わったらこの橋を渡ってみることにするか」

「うん。結局聞き出せなかったね」

「しょうがないだろ。他にもいたけどあんな一生懸命自然の産物で家を作っているところに話しかける訳にもいかないし、いきなり襲ってきたら危ないから近づかなかったんだって」

「だからそんなこと言ってたらいつになるか分からないよ、キノコならちょくちょく取ってるけど...前みたいにお兄ちゃん吐くよ」

「...それを言うのはやめてくれないか。味思い出してまた吐くぞ…」


あれからフォッサに会った以外は全部すれ違っていた。そして共通しているものとして何かしら人間とは思えないものを持っているということだ。もちろん、自分や妹は立派な普通の人間だ。


「よし、水分補給もしたしここを発つぞ!」

「はーい!」

そして行くてにはどう見ても橋なんだけど縄で繋がれた木の板を川の上に浮かばせているだけ...のものがある。


「あれ?そこにいるのは?見かけないフレンズだね〜」

「フレンズ?」

前に現れたのは尻尾が生えていて、頭に耳が有るのは勿論のこと全体的に黄色?く、黒っぽい斑点が有る獣人だった。

「わたしはジャガー」

「後ろに持っているのは?」

「これは人を乗せるためのものだよ。のっていく?」

「まさか、川を泳ぐのか?」

「え?そうだよ」

「あははは...遠慮しておく。この橋は?」

「これは、かばんちゃんが考えてみんなで作ったんだよ」

「そのかばんちゃんって?」

急に妹が聞き始めた。ずっと杖構えてたのに。でもなんでわざわざ...。

「うーん、サーバルとじゃぱりとしょかんに行ってるよ。でも、とっくに到着してるころだよ」

「「じゃぱりとしょかん?」」

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