迷えるジャパリパーク

煜焔

始まりのプロローグ

「え⁉︎一体これは...魔法?」

「シルエ、俺も分かんないぞ。どこだ、ここ?訳が...だいたい魔法って...転移魔法か?そんなもんは神話だろうが」


俺たちはさっきまで戦場で死闘を繰り広げていた...わけではないが、少なくともこんなに日も出ていなかったし、このようにのんびり出来るような場所であるはずもない。


こんなにぼーっとしてたら今頃ここに俺たちはいないだろう。ただの一般兵だ。しかし、このような場所に来てしまった以上そんなもの関係あるはずもなくー


「兄、ちょっと周り見てみよう。何か見つかるかも」

「まぁ、基本だなそれは。まず分かんないとこ来たら周りを探検だな。ん?近くに湖があるな...水はなんとかなるか...」

「じゃあ、れっつゴー!」

「っておいおい待て。勝手に一人で行ったら危ないだろ」

その後、小走りで追いついたが妹のシルエはかなりマイペースだ。こんなことは日常茶飯事、それなのに軍事学校では俺より好成績を取っていた。まぁ、良いんだか悪いんだか...


「やけに静かだな。これだけ自然豊かなら動物の1匹や2匹いたっておかしくないんだがな...」

「ほんとだよねー。なんでこんなにいないんだろ?まぁ、一番考えられるのは天敵がいるとかだけどね~!」

「何かお前妙にテンション高いな。こんな非常事態だってのに」

「だって私戦うの嫌いだし?」

「そりゃあ誰だって同じだろうな。実を言えばこんな開放感のある空間に来てこんな天国のような場所にずっといれたらーなんて思ってたりしてたが...食料が無ければ別だ!そこは俺にとっての地獄になるぞ!ってマジで食料見つからなかったらどうしようか...」

ヤバい、こんなこと考えたからお腹が痛くなって来た...想像するんじゃなかったよ...

「ほんとお兄ちゃんネガティブ思考過ぎるよ」

「うるさい、可能性が有るってだけで心配して何が悪いってんだ!その少しのリスクが怖いんだよ」

「あ、見て見て、椅子発見!」

「は?椅子だって?本当か?って走り出すな」

「これだよ、これこれ!ボロボロだけど」

(本当にあったな)

「ボロボロっていうか、今にも脚が折れそうになってて使えそうにないな。腐食しててキノコまで生えてる。だけど、見たこともないキノコだな。毒さえ抜ければ食えるか...?」

「えぇぇ⁉︎それ食うのお兄ちゃん?前毒抜きの魔法失敗したやつを食って腹壊したよね?」

「...まぁそうだけど今は非常事態d...」


言おうとした瞬間右から飛んでくる強烈な威圧。あれ?妹より俺の方が強いよな?俺が剣士で妹は魔術師だ。近接戦闘ではかなう自信がある。遠距離戦闘はそもそも此方から攻撃できないため逃げ惑う選択肢しか無いが。

「はいはい、よっぽとの事がなけりゃ食わないって。こんな得体の知れないキノコ好んで食うもんじゃ無いしどうみても」

まだ、威圧のこもった目で見てくるよ。あっち向いてくれ!と、茶番が終わったところで。

「結局ここがどこなのか全くと言っていいほど分からなかったな。食糧も全然見当たらないし...はぁ」

「動物いなかったね。なんでだろう?」

「やっぱり...天敵じゃないのか?」

(嘘だろこんなの。帝国軍に両親を奪われて、人を殺す覚悟なんてやっぱりなかったけど、復讐するために軍に入ったというのに。初陣で、何の功績も上げられずに終わっちゃうなんて...それはないだろ?神様!)


朝が来た。空から暖かな日光が差してくる。そよ風が自分の体を撫でた。

「あ?いつの間にか寝てたのか...俺」

グゥゥ...

お腹が鳴った。そりゃそうだ。昨日は軍のテナントで食った朝食以外何も食っていないんだから。こんなんどうしろってんだ。何か食いたいなぁ。そんな素朴な欲望の思い出さえ、誰にも届かなかった。あ、妹がいたか。ってあれ?そういや妹はどこにいったんだ?

「おーい!妹!シルエー?」

ゴツンッ

「痛っ!て、何だ?」

「そんな大声で叫んで貰わなくてもここにいますよ!」

と、言いながら登場した妹の手には昨日のキノコが握られていた。え?さっきの音は何のフラグだったの⁉︎

「硬いものでも持ってると思ったの?ザンネンでしたーハズレです。手を硬化させただけでした!」

(いや、何方かと言えば林檎とかでも持って来たのかなと思ってたんだけど...)

「で、何でキノコ?」

「それがね!毒抜いて焼いて食べてみたらすっごく美味しかったんだよ!」

え?あのキノコあたりだったのか?なら、俺のおかげって事か。

「本当か!俺の分は...?そのキノコか?」

「...ないです。毒抜きはしてあげますから後は自分で煮るなり焼くなり好きにして下さい」

「は⁉︎へぇ、なるほど。初歩の魔法しか使えない俺に火を出しキノコを焼けと?」

「お兄ちゃんだもんね!できるよねそれくらい?」

「無理」

こんな会話をしているうちに腹の限界がきそうになったので、椅子に生えてたキノコと同じやつをなんとか森の中でも見つけ出して焼いてもらって俺はお腹を満たすことが出来ました。

「キノコオンリーは流石にないわ。味付けでもあればなんとか耐えられたかも知んないけど...おぇぇぇ!ゲホッゲホッ」


安静にー


「湖から水は補給出来たか?」

「もちろん!」

「てな訳で早速外を探検しに行くぞー!」

「おー!」

新たな出会いへのカウントダウンはもう始まっていた。でも、その出会いが良い方向に傾くのか...悪い方向に傾くのかは、誰にも分からないー

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