第二章 救世主

或る救世主の嘆き

 皮膚を削ぐ。

 筋を削ぐ。

 神経を千切って、

 血管を握りつぶして、

 あらゆるところにぶつけてぐちゃぐちゃにしても、

 切断しても、

 何事も無かったかのように体は息を吹き返した。

 それなのに、それを見た人間を殺したら、そいつはすぐに動かなくなった。

 二度と動かなくなった。

 僕は化け物だな、と頭の中で錆びた声が聞こえる。

 それなのに、彼らはそんな僕を、神の使いだと、神そのものだと崇めた。

 とても気持ち悪い。

 気味が悪い。

 僕は僕の秘密を見たものを殺した。

 知られたくなかったから。広められたくなかったから。

 血に塗れた僕と、足元に転がる死体を見て、彼らは一様に言った。

 おお、どうか、怒りをどうかお納めください。

 この者達は神の逆鱗に触れたのだ。

 ならば死んで仕方が無い。

 神の御使いに魂を導かれ、

 この者も救われましたことでしょう。

 気味が悪い。気味が悪い。

 僕はそんな世界で生きなければならないのか。

 化け物なのに崇められ、いつか彼らを殺した罰を償うために、この世界から消えなければならないのか。


 こんな体に、生まれてきたかったわけじゃない。



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