第一章 機巧の目覚め

或る幼子の想い出

『おい、使徒様』

『なんだよ煩いな。僕達はこれから大事な大人の話をするの。子供はあっち行ってな』

『おれのだってだいじな話だよ』

『はは、がきんちょがいっちょまえにねえ』

『笑わないでよ。おれ、怒ってんだよ。……使徒様、いなくなるのか』

『うん? そうだよ。僕達はこんなぼろぼろの世界を直す旅に行かなきゃいけないわけ。あーあ、面倒だなあ。感謝してよね』

『うん。……うん。でも、使徒様。……無理するなよ』

『は?』

『楽しくないことなんかしなくていいんだぜ。使徒さまはおれよりは兄ちゃんだけど、おとなじゃないだろ』

『僕はもう大人みたいなものだよ。だから、楽しくないことも、やりたくないことも、全部やらなきゃいけないのさ。大人になるってそういう事だよ。おまえも誰に似たんだか知らないが、子供のくせにませててそういう綺麗な眼をするからね。今のうちにたくさん遊んでおきなよ。……僕には、できなかったからね』

『……いってらっしゃい』

『はいはい』






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る