2-8:ミライ2
マモリが『磁力』の特訓をしている頃、ミライもまた心理世界に入っていた。しかし、目的は新しい魔法の力でもなく、魔法の特訓でもない。自分の過去を探るためだ。
見慣れた公園、目の前には青橙色に輝くミライ。もう一人の自分であり、魔力そのものであり、力を与えてくれる存在であり、自我を奪おうとする存在でもある。
「ねえ、僕がリッカとした約束って、キミは覚えてないの?」
青橙色に輝くミライは首を横に振る。
「そうか。そうだよね」
魔力とは自分の感情であり、もう一つの自我であるとも言える。だが、その自我が目覚める前の記憶を共有しているかというと、それはまた話が違ってくる。
ミライは夕日に照らされた公園を当てもなく歩く。もしかしたらまだ、何か見落としているものが有るかもしれない。そんなミライは、公園の出口に向かって走る一人の小さな男の子を見つけた。
「あれは……僕だ」
心理世界は過去の記憶が全てある。幼いころの自分がいても、何らおかしくはないのだ。幼いミライは公園の出口に向かって夢中で走っている。1枚のカードを落としたことにも気がついていない。
「あ!おーい!落とし物ー!」
ミライが呼びかけるが、幼い自分にその声は届かない。そして、公園の外に追っていこうとしても、ミライは外に出ることができなかった。この公園がミライの心理世界の領域限界なのだ。
幼い自分が落としたカードは、橙色に輝いている。
「あのカードって、もしかして……」
ミライが恐る恐るカードを拾うと、一つの記憶が蘇った。
幼い自分に、幼いリッカが話しかける記憶だ。
「もし私が悪い魔法使いに捕まっちゃったら、ミライ君は助けてくれる?」
「うん!」
「やったあ!約束だよ!」
「うん、約束!」
「それから、もし私が……」
リッカが何かを言おうとしたところで、記憶は途切れた。それ以上は、何も思い出せなかった。
「約束……思い出した……!」
今まで忘れていたのが不自然なくらい、鮮明に思い出した約束。ミライは、次の日にリッカにこの話をしようと決めた。
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