2-5:ライチ2

翌日の昼休み、四人は昨日と同じく美術室に集まっていた。


「黒魔法使いの話だと、"漂白者ブリーチャー"は学校にいる、と言っていたんだよね」

「ええ」

「でも、信用して良いんですか?」


「そうだな、マモリちゃんはどう思う?」

「うーん、なんてゆーか、"漂白者ブリーチャー"のことは信用してもいいと思うよ。本音っていうの?嘘付いてるようにも見えなかったし」


「俺もそう思う。そもそも"漂白者ブリーチャー"と黒魔法使いは犬猿の仲だ。お互いに方向性が全く違うからね。おそらく、両方共リッカちゃんを狙っていて、お互いが邪魔なんだ」


「つまり、下手に動けないってことですね」

「そのとおりだ」

ミライの指摘は正しい。"漂白者ブリーチャー"も黒魔法使いも、共通の敵は

ライチ達だ。下手に動けば弱ったところを突かれて漁夫の利される。だから慎重にならざるをえない。


「じゃあ、無理に私達から動かなくても良いんじゃないでしょうか?」

「そーだよ。来たやつを片っ端からやっつけちゃえば良いんだし」

リッカとマモリの提案には一理ある。しかし、ライチはこう言った。

「いや、逆だ。相手が動けないからこそ、こっちから先に動こう」


「先にどっちかを倒すってことですか?」

「いや、それじゃ結局弱ったところを叩かれるのは俺たちだ」

「それじゃ、どうするってーの?」

「"漂白者ブリーチャー"に話をつけに行く」


「え!?」

ミライは驚くが、ライチは構わず話を続ける。

「まあ聞いてくれ。"漂白者ブリーチャー"が漂白をする理由はいくつかある。リッカちゃんを狙う理由次第では、味方になってくれるかもしれない。黒魔法使いに取られるよりはマシってことでね」


「つまり、リッカが危険じゃないってことを説明できれば」

「そううまく行けばいいけど、そもそも誰が"漂白者ブリーチャー"か分かってるの?」

ミライの言葉を遮るようにマモリがライチに話を振る。


「それについてはすでに調査済みだ。"漂白者ブリーチャー"の名は金峰 香希音(かねみね かきね)」

「それって、保健の先生じゃないですか。え?ということは、金峰先生も魔法使い……」


ミライが戸惑うのも無理はない。カキネはミライが入学した頃からこの学校にいる。つまり、リッカを狙ってやってきたわけではない。では、どうして動き出したのか。それを知るためにも会話は必要だ。


「どのみちこちらの顔は割れてるんだ。今日の放課後に結構だ」

「はい……」

未だに戸惑いが残るミライに続き、マモリとリッカも頷いた。

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