第15話 合格者への贈り物

 目の前から光が収まる。

 リフィアが目を開くと、そこは国王の間だった。


「へ?」


 マイは気が動転して、変な声が出た。

 王座には闘気を出して座っている国王がいた。


「よく来たな最初の卒業者よ」


 国王が口を開く。

 その言い方だと、魔王が言っているように感じる。

 まあ、今の魔王が言うかどうかは知らないが。

 おい、メイドさんたち、笑ってないで止めてあげろ。

 俺も笑いをこらえるのに必死なんだぞ。


「とまあ、冗談は置いといてだな、よく来た。まあそう緊張しないでくれ」


 国王は完全に止まっている二人に声をかける。

 いやいや、誰のせいだと思っているんだよ。

 その声掛けにハッとしたのか、二人は気を取り直して、膝をついた。


「「無礼を申し訳ございません」」


 まあ、最初にその言葉が出てきてしまうよな。

 あんな登場の仕方をされたら俺以外の誰でもああなる。


「そうかかしこまってくれるな、むしろこちらがすまなかった」


 国王がそう言って闘気を消して頭を下げた。

 すぐに二人が「いえいえ、おやめください!」と言って頭を上げさせていた。

 何故にこうも流れて行かないのだろうか?


「お前たちは見事試験をクリアした、褒美をやろう」


 しっかりと王座に座りなおした国王が手を鳴らす。

 すると近くにいたはずの近衛たちがいろんな武器やペンダントを持ってきた。

 杖や剣、刀や魔導銃など、いろいろのものが並んでいた。

 ちなみにもちろんあれも全部俺が作った奴だ。

 この国にあんな大層なものはおいてなかった、宝物庫の中身も大したものがなくて使えなかった。

 それで国王に頼まれて仕方なく(楽しかったなんて言えない)作ったのだ。


「こ、これは!」


 リフィアが驚く。

 まあ、普通の魔法使いたちが見たら驚くのも無理がないだろう。

 どれを見てもしっかりと魔力を込めて作られているからな。


「それはとある方が作ってくださった一級品だ、好きなのを選ぶといい」


 国王がさらっと言う。

 おい、俺が作ったっていうのはばらすなよ。


「「ありがとうございます」」


 リフィアとマイはあれこれ考えながら話し合って考えていた。

 まあどれもよくできてると思うから、ぶちゃっけどれを使ってくれても構わないのだが、やはり作った者の意思は通じないか。


 俺はそんな二人を見ていると、国王が俺を手招きしていた。

 流石に二人の前で国王と話するわけには行かないので、念話にすることにする。


『国王様、聞こえますか?』


 国王は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに理解してもとに戻る。


『もしかして、念話か?』


『はいそうです、もちろん考えていただくだけで話が通じます』


『おお、それはありがたい』


 国王はいまだあれこれ言っている二人を見つめて微笑んだ。


『あの二人は若いのによく頑張っているな』


『ええ、まああの魔法学校で育ったのですからそうなるでしょう』


 じゃないと国王があの施設を作った意味がなくなる。


『しかし、少なからずとも勇者の手も入っておるのだろう?』


『ええ、まあ』


 俺も二人の方を見る。

 二人とも自分の魔法の相性などを話し合っていた。

 そこにあるやつはほとんどが全属性対応だったはずなんだがな‥‥

 あの二人はいいコンビだ。

 多分しっかりとこの国を守ってくれるだろう。


『それで勇者様はどうするおつもりで?』


 どうするかな。

 まあ、今の魔物たちの動きが知りたいし魔大陸に行くか。


『とりあえず、魔大陸に行くしかないかと』


『魔大陸ですか‥‥確かあそこは死の霧で誰もいけないそうですが』


 死の霧‥‥魔王が、残した人間だろうが魔物だろうが、生きている者すべてを消してしまうと言うやつか。

 しかし、それがまだ残っているとは思っていなかったな。


『そうなのか』


『まあ勇者様ならいけると思いますが』


 おいおい俺はそんな超人じゃないぞ。

 確かに不死の魔法を開発したり、人を生き返したり、魔力を一割しか出していないのに通常の人間レベルまで出てたりしてるけど。


「国王様、私はこれでいいですか?」


 俺がそう、心の中で言い訳していると、リフィアが選び終わったようだ。

 まあマイの方はまだ迷っているが。


 リフィアが選んだのは、魔道具の一つ、杖だった。

 もちろん普通の杖ではない。

 杖ははめられている魔石によって効果が変わる。

 赤い魔石なら火属性、青い魔石なら水属性、みたいな感じだ。

 今回は俺が特別に作ってはめたから、全属性、つまり虹色に光っているはずだ。


「うむ、それを選んだか、いいだろう、少しこっちに来てくれ」


 国王はリフィアを自分の手前まで来るように言う。

 リフィアは緊張しながらもしっかりとした足取りで近づいた。

 側近が手元から国王に一つのペンダントを渡す。

 国王はそのままそれをリフィアに渡した。


「そなたにはこれを授けよう」


「これは?」


 リフィアはそれを太陽にすかしたり、じっくりと観察してりしている。


「それはな『通信石』だ」


 通信石とは

 名前の通り登録した相手と会話をするための魔道具である。

 とは言え、魔法の念話の方が使いが手がいいので昔はあんまり使われていなかった。

 念話石ともいえるか。

 今の時代では念話は珍しい魔法であるらしいから、俺が作ったのだ。

 流石に連絡が取れないのは困るからな。


「登録した相手と話せるようになる魔道具だ」


 国王は随分省略して言う。

 それで伝わるのか‥‥省略しすぎだろう。


「わかりました!早速使ってみます!」


 いやいや、理解できたのか?それで。

 リフィアはそう言ってそれを首の下げてマイの方へと戻っていた。

 どうやらもらったことを教えていたらしい。

 マイが何かキラキラした目で見ているが、それは別に珍しい物でもないし、別に全員分ある。


「主様、そろそろ」


 クロエが俺に近づいて耳元でそうつぶやいた。


「ああ、戻るか」


 俺は国王に念話で戻ることを伝えて、その場を転移で飛んだ。

 マイとリフィアは話し合いに夢中で俺の転移には気づいていなかった。

 まだ試験は終わっていないのだ、他の試験者を見てこないとな。

 俺とクロエはすぐに次の合格者を探し始めた。


 まあ、あの二人しか俺が監督官だって言うことはばれてないし、俺も少し戦いたかったが‥‥。




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