ニューイヤーパーティ

夕方5時を過ぎた頃チャイムが鳴った。最初に到着したのは悠介と快斗でインターフォンのカメラ越しに慎が玄関のロックをはずし、上がってくるよう言った。丁度ちょうど其処そこへ波留子の娘達がそれぞれ夫や彼を連れて到着し、全員が集まった。

「凄いね皆んな、遅刻者なし。明けましておめでとう。」

波留子を始め仙、慎と順にハグや握手で挨拶を交わし部屋の中へと入って貰った。

「わあ、凄い料理。お母さんが作れる訳ないよね、その体で。って事はお二人がこの料理作ったの?」

「おせちは違いますよ。まあそんなに手の込んだものじゃないから。肉はバルコニーでバーベキューにしますね。」

「凄いや!仙が居なくなって我が家の食生活は貧しくなった。新しい料理担当者同じようなもんしか作ってくれなくてさ。今日は思いっきり食うぞお。」

「こらっ、快斗。いい歳して初対面の挨拶もちゃんとしないで。いやお恥ずかしいところをお見せしてしまいました。凛さんとは先日病院でお会いしましたが、私が仙の父、九龍 悠介ゆうすけ。これが仙の弟で、」

「九龍 快斗かいとです、初めまして。」

「あっ、早速さっそくのご挨拶有難うございます。では此方こちらも。私が波留子の長女 凛、結婚して今は小野 凛、此方が私の主人で、」

「小野 静馬しずま、静かな馬と書きます。義母ははには全く逆の暴れ馬だとよく言われてますが。ね、お義母さん。宜しくお願いします。」

「私は妹の高瀬たかせれい此方こちらは私の彼で、」

浅井優弥あさいゆうやです。怜とは今年辺り結婚したいと思ってます。宜しくお願いします。」

「へえ、そう言う話になってるんだ。良かったね、怜。」

「何言ってるの、自分は離婚したかと思いきや、こんな若くてカッコいい彼氏見つけちゃってさ。」

「ああ、その事なんだけど、‥」

「ハル、俺から言うよ。あ、今朝、初詣に行く前に役所へ行って婚姻届こんいんとどけ出してきました。なので、彼氏ではなく夫です。」

「ひぇっ。」「ウソ⁉︎」

皆んなが驚いているのを波留子、仙、慎の三人は面白そうに眺めていた。すると凛が、

「ああ、じゃああの署名がお役に立ったんですね仙さん、良かった。お母さん、仙さん、お目出度めでとうございます。慎ちゃん、今日から貴方、弟ね。こんなカッコいい弟と一緒に歩いてみたかったわ。宜しくね、弟君。」

「凛さん。はい、宜しくお願いします。そうか、俺姉さんが二人も出来たんだ。しかも二人ともハルコによく似てるし。」

「ウソ!嘘、嘘。お母さん、再婚したの。再婚するんじゃなくて⁉︎

えゝ、私先越されちゃったあ。ずるいよ、お母さん。」

「ごめんなさい。昨夜、と言うより今朝除夜の鐘の後に決めたから伝えるより今日会って直接言う方が良いと思って。私自身、急転直下の出来事で未だちょっと信じられないでいるから。」

そう言いながら頰を押さえた波留子の指に光る指輪に気付いた怜が、

「あゝ、何それ?その大きなダイヤモンド。それって、‥」

「直ぐには結婚するかどうか決められない、って彼女に言われちゃって渡しそこねてたんです。でも、今朝婚姻届を出した後にやっと渡す事が出来た。結婚指輪はこれから二人で探すか作るかします。お二人に承諾しょうだく得ずに俺の我儘わがまま通させて貰いました、すいません。」

凛と怜に向かって頭を下げる仙、そんな姿を見て慎も慌てて頭を下げ、

「俺一人で立ち会っちゃいました、すいません。」

と謝る二人に凛も怜も笑い出した。

「もういいですよ、お二人とも。お二人が本当に母の事大事に思ってくれているのは先日お会いした時によおく分かりましたから。妹のはやっかみ半分だから気にしないで下さい。」

「そうそう、ひがみ半分、羨ましいの半分。優弥、私にもあんな大きいのは無理でもなるべく大きいの買って。」

「えゝ、そりゃ無理だよ。俺の方が怜より若い分、社会人としてはぺえぺえなんだぜ、勘弁してくれよ。」

「泣き事ばっか言ってると放り出すぞ。」

「わあ、ハルコに似てる、似てる。やっぱり親子だ!俺の姉さん最強!!」

「何変な喜び方してるの、さあ皆んなでパーティー始めましょう。」

波留子の一言で乾杯の用意が始まった。凛や怜が持参したワインやケーキ、悠介達が持参したデザート類は冷蔵庫に入れ、シャンパンを注ぎ、バーベキューの火を起こし、準備が出来ると仙がグラスを持ち上げ、

「今日は我が家へお越し頂き有難うございます。では、新年を祝って乾杯!」

「二人の結婚を祝って乾杯!」

と悠介も続けた。

「乾杯!」「かんぱい!」「乾杯!」

うたへが始まった。

屋台で買って来たワインは大好評で、悠介や快斗は今度絶対その屋台へ連れて行け、とねだり出し、凛や怜も慎からそこの親父さんが仙と波留子のキューピッドだと聞かされるとやはり行きたがった。

じゃあ、今度必ず連れて行くから、と仙が約束して皆を納得させた。

仙がバーベキューでグリルしたTボーンステーキも大好評で、静馬や優弥も慎に習ってかぶりついた。皆それぞれに話したり食べたり飲んだりしている様を少し離れたバルコニーのすみでひっそり波留子は眺めていた。

「どうしたの、ハル。ちゃんと食べなきゃダメだよ。椅子持って来ようか。それとも食べる物取ってこようか。」

仙がワインしか手にしていない波留子にそう声を掛けた。

「うん、有難う。なんか凄く幸せだなあって思ってさ、神様に感謝しながら眺めてたんだ。娘達とマコちゃん、悠介さんや快斗も皆んな仲良くなれて良かったなあ、って思ってさ。」

「うん、そうだね。でもそれはきっと波留子が居るからだよ。波留子のおかげで今皆んなこうして此処にいるんだよ。ハル、愛してる。」

そう言うと波留子の横に並び彼女にそっとキスした。

「よお、お二人さん、熱いねえ。」

そう声を掛けて来たのは少し酔いが回ったらしい快斗。その声で一斉いっせいに注目されてしまった波留子と仙は慌てて少し離れた。

「あれっ、いつも俺の前だと二人とも平気でキスするくせに。照れてるよ、変なの。」

どっと笑いが起きて仙と波留子も笑い出した。

楽しい宴はまたたく間に時が過ぎ早午後十時半になろうかという頃、凛と怜がそろって、そろそろおいとましないと、と言い出した。二人とも翌日はパートナーの実家に行くので、と言い、必ず屋台に連れて行って欲しいと念押ししてもう一度皆で挨拶を交わし帰って行った。悠介と快斗も泊まる部屋も寝具もないから泊められないぞ、と仙に釘を刺され渋々しぶしぶといったていで帰り支度を始めた。慎が、

「今タクシー呼んだ。十分掛からずに到着出来るって言ってたから早く下に行ってないと。」

と二人の尻を叩く。

「一年の始まりを一緒に楽しめて本当に嬉しかった。不束ふそくな嫁ですがどうぞ宜しくお願いしますね、お義父さん、快斗さん。」

波留子にそう挨拶されて悠介も快斗も酔いが一気に覚めたようにシャッキリ立ち上がり、それぞれ波留子にハグをして慎が下まで送るからと二人に付いて帰って行った。

「波留子、疲れたんじゃない、結構立ったままでいたし。」

「うん、少し。でもこんなににぎやかで楽しいお正月のパーティーなんて久し振りで凄く嬉しかった。仙や慎と一緒に居られる事がこんなに幸せな事なんだって改めて実感出来た。有難う、仙。」

「波留子。俺の方こそ。こんな突然の婚姻についても非難もしないで祝って貰えてさ。慎も一人っ子からいきなり二人の姉とそのパートナーが増えて本当に嬉しそうだった。有難う、俺を選んでくれて。これから末長く宜しくね、奥さん。」

「はいはい、分かりました、旦那様。でも、私達の結婚の事は会社の人達には当面黙っておいた方がいいんじゃない。」

「どうして。」

「だって、あんまりにも短期間に色々あり過ぎて普通じゃない速さで物事進んじゃってるって言うか。それに、仙と結婚したなんて知れたらそれこそ私、玉の輿こし狙いなんじゃないか、ってうらまれそうだし。」

「何言ってるの、もし恨まれるとしたら俺の方だよ。 あんな怖い思いさせて、こんな怪我までさせて、誰が玉の輿だなんて言うんだよ。皆んなが波留子の事心配してたじゃないか。それだけだって波留子の存在が皆んなにとって大切な存在だって分かる。皆んなに黙ってると波留子にモーション掛けてくる奴が次々に現れるんじゃないかって苛々いらいらして俺が落ち着かないよ。」

仙の熱弁を聞いていて急に可笑しくなってしまった波留子が笑い出した。

「何が可笑しいんだよ。」

「だって仙ったら顔が怖くなってるし、こめかみがピクピクしてるよ。あはははは、ごめん。でも、それは仙の欲目よくめだと思うよ。まあ仙が皆んなに公表したいって言うなら公表すればいいよ。でも、会社での立場は今までと何も変わらないよ。貴方は私の上司で、私はその秘書。呼び方も今まで通り、部長にハルさん。で、会社でのキスハグは禁止。守れる?」

「ええっ絶対ダメ?」

「ドア閉めただけでも中でイチャついてるんじゃないかって思われちゃうでしょ。だから二人でいる時は極力オープンにしておかなきゃ。だからダメ!」

「じゃあもし内緒にしてたらいいの?」

「今まで程度までなら。」

「でも内緒にしてたらその指輪はめられないだろ。それに結婚指輪作ってもはめられないじゃないか。」

「あのね、すべてを手に入れるって事は出来ないのよ。何かを手に入れるには別の何かを手放さなきゃ。その覚悟が出来ない人は何も手に入れられないの。さあ、どうする、どうしたいの仙は。」

「凄え、ハルコ強い。確かにそうだよね、あれもこれも全部自分の物には出来ない。仙、部長だろう、決断力がないと部長職はつとまらないよ。」

下から戻って来ていた慎が波留子の言葉に同意して仙に迫った。

「確かにそうだ。うん、分かった。仕事始めの役員会で報告して、部内の社員にも通知する。会社にいる時はどんなに波留子にキスしたくても抱き締めたくても我慢する。それでも他の奴等が波留子にモーション掛けるのを黙って我慢するよりはマシだからな。」

「うん、なら仙の思うようにして。私は復帰したら今まで通り働くだけだから。」

波留子の言葉に大きく頷く仙。

「さて、大体の片付けは娘御達がやっていってくれたから後残りちょっと、やっちゃおうか。慎、手伝って。」

「はいはあい。」

「いい返事だねえ。お前、御年玉沢山貰っただろう。」

「うん。爺ちゃん、叔父貴、姉様二人、別に兄様達からも貰っちゃった。」

「へえ、そうなんだ。じゃあ要らないね。」

「ええ、そんなあ。ハルコ、そりゃないよ。」

「うふ、冗談よ。はい、介護の御礼も兼ねて少ないかもしれないけど、どうぞ。」

「お、やったあ。ママ、サンキュー。」

「こらっ、勝手にキスするなぁ。ほれ、ドラ息子、小遣い程度な。」

「おお、父上感謝。さっ、片付けちゃおう。」

そう言って動き出した親子の様子を眺めながら波留子はふと仙にナンパされたあの八月の夕暮れを思い出していた。あの日から未だたった四ヶ月程しか経っていないと言うのに自分はもうその時に知り合った相手と交際どころか入籍までして、自分が産むことのなかった息子の母になっている。人生百年とは言え、その半分以上が過ぎた年増女がこんな幸せをつかめるなんて本当にあり得るんだろうか。実は今までの事は総て夢で、突然目が覚めて自分は独りぼっちの独身女に戻ってるんじゃないのか、そんな考えが頭をよぎった途端、波留子は恐怖におののいた。

➖もしも、もしも今ある幸せが全部夢で目覚めた途端、総て消えて無くなっていたら、私はきっともう生きて行けない。きっと目覚めて独りきりだと判った時点で死ぬに違いない➖波留子はそう確信していた。それほどに今の波留子にとって仙や慎の存在は大きくなっていた。

「どうしたの、ハルコ。何処か痛むの、それとも何かあった。」

慎が直ぐ側に来ていてそう尋ねてきた。

「ううん、何にも。どうして?」

慎に聞き返した途端、自分の頰を伝う涙に気付いた。急いで手でぬぐうと、

「あらやだ、私ったら夢を見てたのかな。何でもないよ、マコちゃん。少し酔ったかな。ごめん、心配掛けちゃったね。何でもないから、ね、心配しないで。」

「う、うん、ならいいけど疲れたんじゃない。未だ完治までは遠いのに皆んなでワイワイ騒いじゃったから。」

「皆んなで賑やかなのは楽しかったよ。でも確かに、少し疲れた。湿布取替えて寝支度しようかな。」

「うん、その方がいいよ。明日は予定がないからゆっくり出来るよ。」

「そうだね。じゃあ明日はマコちゃんとマッタリしようか。」

「うん、しようしよう。じゃあハルコは着替えてきて。その間に終えちゃうから。」

「有難う、慎。」

そう言うと波留子は重たい身体を引きずるようにのそのそとした動きで寝室へ向かった。

「ハル、どうした?」

仙が慎に尋ねた。

「さっき俺達見ながらハルコ泣いてたんだ。どうしたのか聞いたけど酔っただけだって。凄く寂しそうな悲しそうな顔してたんだ。何かあったのかなぁ。仙、それとなく聞いてみてよ。ハルコのあんな悲しい顔、俺見たくない。俺まで泣きたくなったもの。」

「そうか、分かった。聞いてみるよ。あんまり心配するなよ。明日にはきっといつもの波留子に戻ってるよ。」

「うん、心からそう願うよ。」

寝室のドアをノックして仙が入るよ、と声を掛けた。ドアを開けると波留子が一人で着替えようと四苦八苦していた。

「あ、ごめん。ハル、一人じゃ未だ無理だよ。俺を呼ばなきゃダメでしょ。」

「あ、うん、ごめんねお願い出来る。腕が回せなくて、…」

「ちょっと待って。ほら、ゆっくりでいいよ、そおっと、ゆっくり、そお、ゆっくり。大丈夫だった。」

「うん、有難う仙。」

「何、こんなんでいちいちいいよ、礼なんか。」

「ううん、良くないよ。こうやってちょこちょこ手間掛けさせちゃってるのに貴方もマコちゃんもちっとも嫌な顔一つしないで優しくて、本当に有難いんだ。」

「波留子、どうしたの。波留子が物凄く悲しそうな顔してたって慎が。何かあったの。」

「ごめんなさい、マコちゃんに余計な心配させちゃった。さっきね、貴方達が片付けしてるのを見ててふと思い出したのよ、貴方にナンパされた時のこと。あれから未だたった四ヶ月しか経ってないのにこんなに幸せで、って。そしたら突然、これが全部夢の出来事だったらって、突然目が覚めたら全部消えて私独りきりだったら、って思ったら怖くなっちゃって。そしたら涙がいつの間にか溢れてたみたい。全然気が付かなかったの。」

「目覚めて一人ぼっちだったら、って思って泣いちゃったの。」

「ううん、その事で泣いたんじゃなくて、もしこれが全部夢で貴方やマコちゃんが消えて無くなってたら私はもう生きて行かれないだろうな、って思ってさ。」

「まさか死のうなんて思わないよね。」

「思った!仙や慎がもし夢で目覚めたら消えてた、なんて事になったら私生きて行けない。もう他の誰かを愛するなんて出来ないもの。そう思ったら泣いてたんだ。」

「嬉しいけど、物凄く悲しい事言ってくれるなハルは。でもじゃあ、波留子は死なない。だって俺も慎も夢なんかじゃないんだから。夢でこんな大怪我して痛みなんか感じるわけないだろう。しっかりしてくれよ。いい、波留子と俺は今日夫婦になったばっかりなんだよ、入籍早々縁起でもないこと考えちゃダメ!」

「うん。はい、分かった。ごめんなさい。もう二度とあんな事考えない。でもそれくらい幸せで、幸せ過ぎて怖いんだ私。バカだって思うんだけどさ。」

「波留子、波留子は幸せに遠慮し過ぎだよ。もっとどっかり構えて享受きょうじゅすればいいんだよ。俺がそんなおそれを打ち砕いてやる、いい。」

頷いて見せる波留子に仙は優しく抱き締めてキスをした。

「着替えてマコちゃん安心させなきゃね。それと、歯磨きしなきゃ。」

波留子がそう言ったので仙は彼女の着替えを済ませてやった。

「慎、波留子がさっき泣いてたのは幸せ過ぎてこれが全部夢だったら、って思ったら怖くなっちゃったんだって。全く、幸せ過ぎて怖いなんて、ハルらしいっちゃハルらしい余計な心配だよな。」

「そうだったの。でもハルコにしたら前の旦那さんと離婚して数日でナンパされて、そのナンパ男と四ヶ月後には結婚、って怒涛どとういきおいじゃない。怖くなっても不思議はないんじゃないの。まして十代二十代の若者じゃないんだもん、逆に怖くなっちゃうんじゃないの。仙がしっかりしてやらなきゃ。さっきのハルコの顔見てたらそんな軽口きけないよ、きっと。俺胸が締め付けられてるみたいだった。俺の方が泣きたくなったよ。女の人に、まして自分の大事な人にあんな顔されたら、俺焦りまくっちゃうよ。全力でその原因を払拭ふっしょくするだろうな。」

「慎、お前いつの間にか随分大人になったな。」

「何言ってんの、俺なんか未だ未だガキだよ。俺が心配したってハルコは強がっちゃうもん。やっぱり仙でなきゃ。頼むぜ父さん、やっと出来た大切な母さんなんだ、守ってくれよ。」

「慎。」

「あ、マコちゃん、さっきは心配かけてごめんね。やっぱ酔ってたみたいでさ、なんか幸せ過ぎて要らぬ事考えてクヨクヨしちゃった。でも、私マコちゃんの母だもんね、強くならねば。なんちゃって、もう大丈夫。心配してくれて有難う、マイハニーボーイ。」

チュッ、と慎の顔を自分に近づけ両頬にキスをした。

「元気になったんだね、良かった。じゃあ明日は約束通り、マッタリだよ。」

「うん、マッタリしようね、お休み。」

「お休みなさい。」

「仙、未だ寝ないの。」

「波留子はもう寝る?」

「うん寝る。疲れた。」

「じゃあ俺も寝る。では姫。」

仙が抱き上げた。

「ちょっと。止めて、下ろして。」

「波留子、痩せた。最初に此処へ帰ってきた時より軽い。」

「そうかなあ、変わらないと思うんだけど?」

「痩せたよ。まさかどこか悪い訳じゃないよね⁉︎ 我慢しないで言ってくれなきゃ駄目だよ。」

寝室に入ると仙が波留子を抱いたまま肩でドアを閉めベッドの上に彼女を下ろした、と波留子が仙の首に手を回し、仙と一緒にベッドへ倒れ込んだ。

「私が痩せたんならきっと、仙が愛してくれたから、かな。」

「 ホントに⁉︎」

頷く波留子。仙はそんな波留子に何度もキスをした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る