第3話「it might lead us down a rabbit hole to figure it out」

「我々の世界は今、危険な状態にある。その認識は良いかね?」

(何を話すかと思ったらたかがそんな事か・・・)

「はぁ・・・ここに来れる人なら確実に知ってるかと。」

「エネルギー危機に大気汚染・・・だが誰も、その問題を指摘しない。なぜ大衆は知らないと思う?」

「一つは、戦争とその復興でそんな事気にしていられなかったこと。もう一つは・・」

「「」でしょ?」

そういうと博士は機械の影から顔を出してきた。


あの戦争の前、一時学会を騒然とさせたある事件があった。

原因は、学会の総会である女性博士が「昨今のエネルギー・食料問題を解決する手段」として「結界間移動説」を提唱したことが始まりだった。

その内容のばかばかしさから、学会では関係書類を抹消、博士を永久追放とした。やがて、博士の存在は戦争の影響もあり完全に忘却された。

・・・がこの博士、実にしぶとい人で「たかが学会から追放されただけだし、むしろ研究に集中できる!」と前向きに受け止め、そこからはま~さ~に、ノンストップ!例え戦争が起ころうが「!」救助部隊が来た際言った第一声が「ピザならそこに置いといて」という始末!

そんな、マッドサイエンティストにニートとマイペースを掛けたような人で社内で二番目に人気な女性。それがこの人「連子博士」だ。


「そう!さすが博士!」

「あ!博士、いつも通りの格好ですね。」

「や!久しぶり・・・ん~何日ぶりかな?」

「仕事と有給休暇、合わせて一週間ほどですよ~はい、離れる」

「え~一週間ぶりなんだからもう少しハグさせてよ~」

「はいはい、そのすぐハグする癖、直した方がいいですよ?」

と言いながらも実は、社内の男性陣に大人気な理由の一つはこの「ハグ」でもある。その威力は絶大で「俺博士がハグしなくなったら会社辞めてテロリストに転職するわ」と漏らす社員すらいる。

もちろん、その理由は・・・

「嫌だ!で?頼んでいたものは?」

「はい、海軍特別捜査班の最新エピソードの録画です。」

「やったあ!」

「ネタバレしますけど、それ途中で放送休止中です。」

「え~次は何時からなの~」

「確か・・・五月からです。」

「あのーお二人さん、続けていいかな?あと博士、彼に計画の説明を早く・・・」

「そだね。では改めて・・・これは「スキマ221号」異世界に行ける装置だよ。はい!説明以上!」

「え?!」

「じゃ!スイッチいれまーす」

「待てや!」

≪スキマ~テレポーター~起動~開始~あと~30秒ぐらい~≫

「え?なんで」

「早く、ドラマが見たいんだけど・・・」

「もっと具体的に説明してください!」

「あーわかった。さっきも言ったように、世界は危険な状態だ。残された道は二つ。このまま死ぬか、それとも生きる為不可能へ挑むかだ。だが「もうこの星に住めないなら!」「この世界に我々の居場所がないなら!」これが我々「霧雨財閥」の答えだ!」

「まさか異世界に植民地を作れと!?」

≪テレポーテーションまで~15秒~≫

「違う!まあ半分はそうだが・・・ともかく!「協力国」を見つけてこい何ならゴブリンでもエイリアンでも構わん!」

「は!?正気ですか?!」

「お前はケーキを作るパティシエに正気を問うのか?」

「え?あ、いや・・・」

≪じゅうびょおおう!!≫

「もちろん狂っているにきまってるじゃないか!」

「あああああやっぱりかああああ!!」

≪テレポーター開始準備完了。付近の職員は至急、休憩室へ向かってください。今日のおやつはマカロンです。≫

「うわ!どうでもいい情報!!」

「テレポート開始!良い旅を!!」

「じゃ!頑張ってねー」

「うああああぁっぁあああああああああ!!」

(絶対帰ってきたらあの二人ぶっ殺す!!!)


「会長あんなこと言ってましたけど「あれ」本当なんですか?」

「え?半分は嘘だよ」

「え」

「え?」

「人類滅亡は?」

「ん~来るかもね。ま!なんとかなるっしょ!」

「・・・」

「・・・」

「ねえ会長」

「んーなに~」

「彼、装備も何もかも持ってない気がするんですけど」

「あ、やっべ」

こうして、俺の悪夢の異世界旅行が始まったのだった。

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