第2-1 似非の証と男
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「や、やだっ!」
「お前はどうだ?さぁ早く
「怖いッ!やめてくだッ」
「証を見せろ、さすれば優しくしてやる」
190以上もある男に抵抗などは
片手で扱うのも
「うッ…、や、やめて…」
「どうすれば証を見せる?やはりこうか?」
「し、知らない!そんな事ッ、だ、誰かッ!」
空を掻きながらこの場から逃げようと必死にもがく少年を、面倒臭そうに己の元へ引きずり戻すと、
「!!ッ」
脳天から雷を喰らったかのように、一瞬動きを止まった少年は大きく瞳を見開いた。その目にはもう何も映っておらず、息をするのも、口を閉じる事も忘れ、一切の思考を止めてしまった。単純に男の動きに合わせて、少年の体は反射的微動が繰り返されていくだけだった。
男の小言と悲痛な少年の
「くッ…、やはりキツいな、全く入らん。こんな
「アッ!!!」
「む?…またか、誰かおらぬか!」
少年が
「こちらに…」
「また白目を
「
足音も立てず、置物のように部屋と同化し
(どいつもこいつも役立たずが。
このご老大、名は
芳虎帝の幼少期より仕えており、
宦官の中では
常に芳虎帝の傍で目を光らす
だらしなく寝そべる少年には目もくれず、竜君翁は
(証とやらは本当に存在するのか?帝は何を
表情一つ変えずに竜君翁は、特徴あるしゃがれた声で話を始めた。
「そう
「しかしだな、これで何人目だ?数百では済まんぞ?おぬしも熟知しておろうが、我はそう気が長い方ではないと…」
「
「それが万が一漏れ《も》ていたらどうする?その者がもし…。竜君中常侍よ、どうする責任取るつもりだ?」
「…帝よ、私めが今まで
150もない小さな体の竜君翁の気が一気に逆立った。
この時ばかりは
無表情が常の竜君翁の
どうしてこうも軽くその事を言うのか?
それとも
帝の仰せの事は単なる無茶や我が
悪気がないのは竜君翁も承知の上ではあったが、場所関係無くこの事を口に出す芳虎帝の無神経なところだけは頂けないと
芳虎帝への陰鬱いんうつ》な感情を言葉の中に
「そのような
「だからこそ我は
「…急いておられるのか?帝よ。それとも私めに何か…良からぬ事をお隠しになっておられるのか?」
芳虎帝の顔が一瞬、不満で
睨み合うように
竜君翁は普段物静かではあったが、一度事が起きると
相手がたとえ帝の立場であっても
「まぁ、そう気を
カカっと
自信に満ちた言葉は今までの経験と実践からもたらされるもの。
これくらいの事はどうにでもなり、今の己の力なら必ずどうにかして見せると自負していた。
「後は全て私めにお任せあれ。ささ、誰か居らぬか?帝はまだご満足ではない。早く
竜君翁はパンパンと二、三度手を
「竜君」
芳虎帝の
「…はは」
「いや…、みなまで言うまい」
「…」
「
風を切るように
その言葉を受け取る竜君翁は芳虎帝を見送りながら少し考えを
芳虎帝が竜君と呼び捨てするのは、
幼少期の頃より変わらぬ芳虎帝の癖にまた気づくと頭を抱えていた。
この頃芳虎帝から
(ムム…、帝が思った以上にイラついておられるようだ。これでは
目を閉じて
「おるか?」
一人の黒づくめの
竜君翁の背後に天井より
かの者の名は
年齢も体格・
竜君翁は土師の気配を
土師は竜君翁の仕草と同時に側に
「竜君翁、
「抜か《ぬ》かるでないぞ。これは今までとは異質で
「はい、
「たわけ!そんな事はどうでも良いわッ」
フンと目にも鼻にも掛けず、竜君翁は土師の発言に
その態度は芳虎帝と
横たわる少年を
「鼻から西方宦官共などわしは信用しておらぬ。どいつもこいつも
「私が竜君翁の意を察せず
土師はすぐに竜君翁に謝意を言い終わると同時に一礼し、竜君翁をこの場に残しそのまま風の
竜君翁の思考は更にめまぐるしく動いていく。
(この件が無事成功すれば、我が一族は
今までの
だが、甲の国と言う
竜君翁は部屋を後にする際、ほんの少し
その
麗人 キノエ 秦 鰻(はた うなぎ) @nerom
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