第8話 ひまりとの関係Ⅱ
_________放課後。
「ありがとな、響奈。とりあえず話しかけてみるわ」
相談に乗ってくれた響奈に礼を言う。
「いえいえ、こちらこそ色々聞けて楽しかったよ」
「楽しかったってなんだよ。人が真面目に相談してんのに」
そんな響奈の冗談に笑顔で答える。…ああ、こうやって仲睦まじく話すのがラブコメってもんだよ?ひまりなんか全くラブコメ感無いわ。
「じゃな。」
「うん。」
ひまりは今部活か。武道館の前で待っていよう。
「何あの人?誰?」
グサッ!
「え、誰か待ってんの?きもっ!」
グサグサッ!
あ、あの〜ヒソヒソ話しているようですが、めちゃくちゃ聞こえてますよ〜。だから、めちゃくちゃグサグサくるんですよ〜。
「よし!門で待ってよう!」
すると、ヒソヒソ話してたやつらはビクッとして少し退いた。
「フッ、我が力にひれ伏すがいい!」
「え、何あの人厨二病?ぼっちが進化したの?」
グサッ!
…か、勝手に言っているがいいさ。グフッ!腹を押さえながら退散する俺の背中に何か刺さる発言があったが、聞こえない、…聞こえない。
_________夕暮れ。
よし、厨二病のまね辞めよう。ぼっちがさらに孤立してしまう。
「それにしてもあいつ遅いなぁ」
さっきから部活帰りのやつらがめちゃくちゃ見てきやがる。正直、はずいな。もう居ないけどまだはずい。
「では、さようなら」
お、来たかな?するとひまりは立ち止まり訪ねてくる。
「で、雄大君?なぜこんなところにいるんですか?」
ここからは真剣にいこう。
「用があるからに決まってんだろ」
本当に言っていいことなのだろうか。
「なんでしょう?」
いいや、今ここで言うべきことだ。
「俺に隠していることを話せ。主人の命令だ」
「珍しく真剣ですね」
「 聞かなきゃいけない事、そう思うからだ」
「分かりました。確かにそろそろ教えるべきですね。あなたのお父さんも混じえて話しましょうか」
なぜここで父が出てくる?
「?まぁ、わかった。とりあえず帰るか」
_________自宅。
ひまりが丁寧に父の部屋のドアをノックする。
「入れ」
「失礼します」
「なんだどうした?」
「私と雄大君との関係をそろそろ教えようかと」
「…そうか。雄大、お前は何も覚えていないようだな」
「なんの事だ?」
「お前とひまりはな幼馴染だ」
「…」
「そんなに口を開けていたら虫が入りますよ」
_________そして今に至る。
俺とひまりが幼馴染?はぁ?そんなお決まりのパターンありかよ…
「で、ご感想は?」
「お前はこんな時も平常運転なのな。感想とか言われても…、なんもうかばねぇよ」
「なんですか、つまらない」
つまらないってなんだよ。反応が見たかったのか。
「話がそれだけならもう行け。私はまだ仕事がある」
あれ?父は仕事していたのか?初耳だ。
「ん、じゃあ俺も部屋戻る」
父の部屋を出てからひまりに疑問を投げかける。
「で、俺とおまえが幼馴染だってことと、俺にだけ態度が違うってことに何の関係が?」
するとひまりは少し頬を赤らめて言った。
「…それはこうして接していれば気づいてくれるかと思って…」
だんだん語尾が小さくなっていったがなんとか聞き取れた。
「そうか、悪いなそういうのに疎くて」
「そうですよ。いつ気づいてくれるかドキドキしてたんですからね」
普通に言えばいいのに…。
「てことは、もうその性格に付き合わなくていいんだな。よかったよかった」
「はい?これはこれからも続けますよ?」
…はい?じゃあ俺が幼馴染ってことを知った意味は何処へ?
「最近雄大くんの顔を見るだけで何考えているか分かるようになったのですが」
ニヤニヤしながらそんなこと言ってきやがる。…怖い!
「…まぁ、なんだ。これからもよろしく頼むぜ!幼馴染として、げぼ…メイドとして!」
あっぶねぇ!下僕って言おうとしちまった!
ば、ばれてねぇよな?ちらりとひまりを見るとまたニヤニヤしていた。あ、これは終わりましたね。
「…今回は許しましょう。次それ言ったら縁切りますからね」
「了解」
「…」
「…」
なんか気まずい!なんでだ?とりあえず寝よう!
「じゃ、じゃあおやすみ」
「はい、おやすみなさい」
そうして俺は逃げるように部屋へ向かった。明日からこれまで通り過ごせるかな?
俺の下僕(メイド)のはずのあいつと立場が逆になっている ヤナギ @konosudarasiisekainisyukufukuo
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。俺の下僕(メイド)のはずのあいつと立場が逆になっているの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます