第7話 ひまりとの関係Ⅰ
「…はぁ⁈」
俺の前には父とひまりがいる。
「おい、年寄り相手に大きい声出すなよ。」
「そうですよ。びっくりするじゃないですか。」
「いや、でも、はぁ⁈」
おれがこんなにも驚いているわけは今日の朝までさかのぼる。
「起きなさい。起きないと頭の上にイチゴジャムかけますよ?」
「はい、起きたぁ!」
「やっと起きましたか。」
「やっとって一回しか行ってねぇだろ!しかもイチゴジャムかけるってなんだよ、ベタベタになるし無駄になるだろぉ!」
「朝からうるさいです。」
くっ、事実だから言い返せねぇ!
「いや、でもおかしいぞ。イチゴジャムとか。」
「分かりました。次からブルーベリージャムにします。」
「それなんもかわんねぇぞ⁈」
「色も味も違いますよ?」
…これ以上やっても無駄だな。永遠に続く。
「わかった!もう行こう!」
「今諦めましたね。」
「あたりまえだ。」
「何が当たり前かわかりませんがいきましょうか。」
「ん?なんでふくれっ面なんだ?」
「べ、別になんでもありません!」
なんで怒ってるんだ?
「ま、行こか。」
_________登校中。
「そういや部活は慣れたか、もう入部届けだしたんだろ?」
「はい、慣れましたよ。先輩も優しくしてくださるし。」
「そうか。」
…なんだか今日は会話がはずまない。ひまりが静かだ。
「どうかしたか。なんかおかしいぞ?」
「そうですか?」
「そうだよ。」
「…雄大君が負のオーラ出しているからでしょうか?」
「ふっ、我がオーラを見破ったか。」
「というのは嘘で、ただ考え事をしていただけです。あと、その厨二病のまねまだ続けるんですか?」
「続けねぇよ。…多分。てか、お前が考え事なんて珍しいな。俺にははっきり言うし、日常生活充実してるじゃねぇか。」
「ん〜、そうなんですけどねぇ〜。」
「否定しねぇのかよ。」
「え?事実ですよ?」
「…そうですね。」
「なぜそんな言い方するんですか?」
「言い方が腹立ったから。」
「…そうですか、すいません。」
「お前笑顔で言うなよ。」
そんなこと言ってると後ろから声がかかった。
「おはよー、ひまりさん!」
それにひまりが笑顔で答える。
「おはようございます。」
いつも通りひまりに挨拶したやつは俺に挨拶せず先に行ってしまった。
「…なあ、ずっと不思議に思ってたんだけどなんで俺にだけ態度違うんだ?」
するとひまりは一瞬驚いたような顔をしてから少し顔を赤くして口を開けた。
「…それは、な、なんとなくです!」
そう言って走り出していった。
「おい待てよ!」
なんで俺があいつに振り回されてんだ?と考えながら追いかける。
_________学校、2時限目後。
あれからひまりが話しかけてこない。俺なんか変なこと言ったか?
「んー、わからん。」
悩んでいると後ろから聞き慣れない声がかかった。
「どうかしたのかい、橘君?」
振り向くと黒髪でショートカットのいい匂いがする女が座っていた。だが、俺はこいつを知らない。
「誰だ?」
話しかけてきたその女は苦笑した。
「誰だ、とはひどいな。確かにまだ会って日は浅いが名前と顔ぐらい覚えたらどうだい?音立響奈だよ。よろしく。」
「あ、ああよろしく。」
「で、何を悩んでいるんだい?」
これは知らないやつに相談していいことなのか?
「い、いや、別に。」
「別にって顔じゃないけどな。心配しなくてもいいよ。言いふらしたりしないから。」
俺はひまりのこと、そして今朝会ったことを話した。すると響奈は驚いた顔をする。
「君ひまりさんと仲良いの?どういう関係?」
なんかズイズイくるな。なんで最近の女子はこんな距離近いの?え?俺は下に見られてんの?ひまりだけじゃなく?泣いちゃうよ?
「…どういう関係とか聞かれても、どうなんだろな?」
俺は首を傾け考えていた。そんなこと考えたことなかったな。
「でも、いつも一緒にいるよね。」
「まだ会ってそんな経ってないのによく見てるな。」
「昔から人間観察得意だからね!」
「お前はぼっちか!自慢げに言うな!」
「ぼ、ぼっち?…どうなんだろね?」
「無自覚か!」
こいつは天然なのか?
「でも、今の話で大体理由はわかったかな。」
「え?まじ?」
「うん、でもそれが本当なら橘君が自分で気づかなきゃいけないな。」
「…そうか。ありがとな。」
そんなやり取りをしているとチャイムが鳴り、いつの間にかひまりも戻ってきていた。いつから聞いていたのだろう?だが今は授業に集中しよう。それから3時限目の後も響奈と話していた。
…午前中はこんな感じだった。あまり進展はなかった。
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