第3話 初めて見る彼女の姿

待っていろ、と言われたので言う通り武道館の前で待ってやる。そしたらあろうことか、こんなこと言いやがる。

「そんなところで暇を持て余しているなら一緒に練習に参加しませんか。」

ひまりの胴着姿初めて見た。なかなか似合っている。

「このやろう、運動苦手なの知ってるくせに。」

「ぐだぐだ言わずランニング行きますよ。」「おい、待てよ。…今制服脱ぐから。」

「おや、素直に付き合うのですね。」

「お前は俺をなんだと思ってんだ。」

「前にも言いましたが、クズだと思っています。」

「はぁー。」

「雄大君、何か悩み事でもあるんですか?良ければ相談に乗りますよ。」

やけに真面目な顔で言っているが悩みの種はお前だ、ひまり。

「いや、その悩みが日常化してきてるからな。…て、聞いてねぇし。」

いつの間にか先に走って行ってしまった。一応走るとするか。ていうか、こんだけひまりと関わっているのに、俺全く注目されてねぇし。そのうち逆に嫉妬で溢れて俺がいじめられそうだ。やっべ、余計なフラグ立てちまった。

「お願いします、神様。どうか明日俺の上靴をお守りください。」

「何を祈っているのですか?」

いつの間にかひまりは一周してきたらしい。

「別に余計なフラグ立てちまったから神様に祈ってるわけじゃねぇぞ。」

「丁寧に説明してくださってありがとう。」

「ふっ、俺は親切だからな。」

「そんなに触れられたくないんですか?嘘つくほど。」

「…は?なんでわかるんだ?」

「なんとなくです。あなたをいつも見ているからかもしれません。」

「…」

「そんなに口を開けていたら虫が入りますよ。どうしたんですか?」

「いや、お前がうやむやにするのは珍しいなと思ってな。」

「あなたもよく私を見ているのね。」

ひまりが恥ずかしそうに俯く。少し顔が赤い気がする。だが、顔を上げるといつも通りだ。

「まぁ、あとは見学しながら待っていてください。」

「…おう。」

なんかラブコメっぽいイベントだったな。

日が傾き始めると、ひまりが制服姿で出てきた。

「さぁ、行きましょうか。」

俺は彼女の歩みについていく。

…なんかこれ逆じゃね?

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