第2話 嫌いでも、彼女と

学校の授業中でもひまりの嫌がらせは終わらない。どんなことかというと、紐をつけた消しゴムをわざと落とし何も知らない俺に拾うように促し、紐を引っ張り椅子から落としたりしやがる。当然そんなことを周りに言えるわけもなく我慢するしかない。

昼休みになると、

「購買に行くのが面倒なので買ってきてください。」

「何爽快にパシってんだ!俺はパシリじゃねぇ!」

全くとんでもねぇやつだ。

「あれ?違いましたっけ?」

「はぁ〜。わかったよ。行ってくりゃあいいんだろ。」

「あら?クズのあなたでも優しいところがあるのね。」

「…」

そんなわけないだろ。これ以上話していても疲れるだけだからだ。それに誰がクズだ。俺にクズ要素なんて全く…あんまりないだろ。

「…で、何が欲しいんだ?」

「そうですね…。じゃあトリュフと松坂牛が入ったサンドイッチを3つほど。」

「俺にどんだけ金使わせる気だ‼︎一体それいくらだよ‼︎」

素直に接してやっているのにやっぱサイテーだ。

「3つで72000円ですね。」

「それマジであったのかよ…」

怒る気も失せたわ。

「ふふふ。冗談ですよ。一緒に行きましょう

。」

「そうかい」

俺はひまりと一緒に購買に向かった。



購買に入ると、結構混んでた。中でも一際目立っていたのは何かに群がっている奴ら。何かときになって見ていると群がりの中心にいた人がこちらに気づいた。

「お〜、ひまりさんと雄大君じゃないか!」

この人だ。この人は神楽姫野。2年生の先輩だ。この人もまた青い瞳に薄い紫色の腰まで伸びた綺麗な髪のたいそうな美人で今もこうして周りに人が群がっている。その上地味でぼっちの俺を無視せず仲良くしてくれている

「こんにちは、姫野先輩」

くっ、その笑顔を俺にも見せてくれ!

先輩が2、3言話すと群がっていた奴らが散っていった。

「それで五十鈴見高校には慣れたかな?」

そう、ここは五十鈴見高校だ。県の中では、結構頭がいいらしい。てことは、俺はI.Q65ぐらいだろうか。何それアホなほうじゃん。

とりあえずアホな俺が突っ込んでおこう。

「いや、まだ授業今日からですから、慣れるわけありません。」

「そうですか?私は慣れましたよ。アホな雄大君と違って。」

「勝手に心ん中読んでんじゃねぇ。」

「ふふふ。やはり2人の会話を聞いていると面白いな。」

そう、先輩には昨日初対面なのにすでにひまりの性格の悪さがばれている。ひまり曰く、

「あの人の前で素で喋れるんですからいいんじゃないんですか?」

らしい。

「「そんなことねぇ(ありませんよ)」」

「ほら、息もぴったりじゃないか。」

俺の全力の罵声とひまりの目が笑ってない笑顔をもろともせず笑顔を見せる。…この人は将来大物になるかもしれない。

「お?また人が集まってきてしまったな。それではまた。」

そういうと先輩は小走りで去っていった。そのときちょうど予鈴が鳴った。

「んじゃ、俺たちも戻りますか。」

「待ちなさい。」

このやろう。今命令しやがったな。しかもめっちゃニヤニヤしてやがる。嫌な予感しかしねぇ。

「まだ私の昼食を買っていません。」

「やっべ。」

すっかり忘れてたわ。

「はぁ。仕方ありませんね、では帰りがけに何か買ってくださいね。」

黙って頷くと、先に行ってしまった。あいつなんやかんや言って結構優しいんだな。でも、俺が何か買うのは決定らしい。いくらあるかと財布を確認すると、チャリン。…600円しかねぇじゃねぇか。家に寄ってから買いに行くか。

キーンコーンカーンコーン。

やっべチャイムなりやがった。仕方ない後ろからこっそり入ってわざと見つかりみんなのウケをとれば授業中は怒られないだろう。いやそんなわけない。俺はひまりと姫野先輩以外友達と呼べるやつはいない。普通に怒られておこう。とぼとぼ歩いていき、教室に入った。一瞬注目されたが、すぐ前に向き直る。は?と思っていると先生が寄ってきた。

「具合大丈夫か?」

「は?…ええ、まぁ。」

「そうかじぁ席につけ。」

ひまりがなんか言っといてくれたのか?まぁとりあえず授業に集中しよう。

「お前先生になんか言ったのか?」

「ええ。橘君が調子のってどか食いしてお腹壊したので授業に遅れます、と。」

「説明はともかく、ありがとな。」

一応礼を言っておく。

「そんなこと当たり前じゃないですか。私はあなたのメイドですよ。」

「お、おう。そうだな。じゃあ普段からもうちょとメイドらしく接してくれ。」

念を押しておくと、

「ご主人様、さっさと起きやがれください。おい、遅刻すっぞですよ。…こんな感じですか?」

「前よりひどくなっとるわ!なんで引きつらせた笑顔で命令と敬語を混じらせて使うんだよ!気持ち悪いわ!」

「そうですか。では元に戻しますね。」

「そうしてくれ。」

「あ、そういえば今日は部活があるので約束のため終わるまで待っていてください。」

「…」

「そんなあからさまに嫌そうな顔しないでください。約束は約束です。」

「明日じゃだめか?」

きっとダメなんだろうなぁ。

「だめです。あなたのせいで昼食を食べ損ねたんですよ。もうお腹ぺこぺこです。」

「わかったよ。」

「では、ついてきてください。」

そういえばひまりが部活やってるところ初めて見るな。少しワクワクしながらひまりについていった。

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