第19話:2回目なら
殺人鬼の能力....彼女が俺と同じ?
不快ではないが恐怖はある。
相手の能力が分からない以上手も足も出ない訳だが、やはりこれだけは聞いておきたかった。
「なぁ俊介、今この地球上にどれぐらいの能力者がいるんだ?」
「それは勝治レベルの話か?」
人の名前を数詞みたいに使うな、と言ってやりたいところだったが、実際俺はそこそこ低いレベルなのだろう。
だって相手は【神の資格】を持つ者なのだから。
「勝治レベルだとざっと10~20ぐらいかな、でも実際全員が能力を自覚しているとは限らんぞ」
「え?」
思わず声が漏れた。確かに10~20と聞いて、自分の価値が薄れるようなショックはあったが、神を目指している自分にとって、その数なんて難易度指数みたいなもんだと思った。
それよりもその次の発言だ。能力を自覚していない奴もいる?
「貴方、能力を自覚したのは何時頃?」
ミレイ・ノルヴァのその一言でハッと気づいた。
言われればそうだ、俺の能力は生まれつきで、これがほかの人間にない異能力だと気づいたのは物心ついた頃になるのだが。
「最初から自覚してた訳じゃないでしょ?そういうタイプもいるし、自分の能力の使い方が分からない能力者だっている」
「例えばどんな能力者が居るんだ?」
思わず食い気味に聞いてしまった。自重を覚えろと言われたばかりだったが、なかなか難しい。
「例えば動物とコミュニケーションを取ったり瞬間移動したり自由に色を変えたりとか」
正直なんでもありだなと思った。でもそのなんでもありの中にもルールがあって、それが神のルールとなって、俺等はそれに違反したのだ。
ミレイ・ノルヴァと俊介が顔を見合わせて頷いた。
何のシグナルかさっぱり分からない。
「さ、行くよ」
首をぐるっと後ろに回して、ミレイ・ノルヴァは俺にそう言い放った。
首の骨大丈夫か?と聴きたくなるほどに曲がっていたが、大丈夫そうなので触れないことにした。
「え?行くってどこに」
俺が全部言い終わる前にミレイ・ノルヴァは指を鳴らした、地面から無数の数字が湧き上がり、俺等を包み込むように囲んだ。
その数字が四方発泡に散らばった。
時間は朝、さっきまで夜だったが周りはどう見たって朝だ。
「到着したのはいいがここに移動したのはちょっと間違いだったかもな」
時間移動して、最初に口を開いたのは俊介だった。
「ウッドソード」
俊介がそう唱えると地面から青いドアが生えてきた。
どうやら地面のコンクリにめり込んでいた石をこのドアに変換したようだった。
「ど○でもドアー!」
「いやいや、怒られるから。そんな22世紀の技術持ち込まれても困るから!」
俺は思わず突っ込んだ。
これ大丈夫なのか?と心の底から心配した。
ただこの場で一番心配というか怖いのがですね...。
ミレイさんめっちゃ真顔なんですわ....。
俊介は乾いた笑いをして、そのままドアに入った。
完全にアウトとはいえ、本当に何でもありだなと実感した。
ドアを潜った瞬間に、部屋が移動したと勘違いするほどに世界が違った。
俊介が作ったのはドアだけだったのに、くぐった瞬間場所そのものが変わるのだ。
ここまで不思議な気分を味わったのは初めてだ。
時間旅行とかも確かに驚いたが、それと同等かそれ以上に驚いた。
目の前に合計6人の男女、死体が3体あった。
一人は少女。2人のピエロの仮面をかぶった大柄な男に取り押さえられて、今にも殺されそうになっている。
そして地面には死体が3体。彼女のご家族だろう。
そして残りの3人。俺等だ。
俺と俊介とミレイ・ノルヴァ時間を戻したので、そこに俺等が存在してしまっているのだ。
「よぉ俊介」
俊介が真っ先に声をかけに行った。
ミレイ・ノルヴァは2人で顔を合わせたらニコッと笑ってそれで終わり。
俺は驚きすぎてどう考えても状況を理解できていない顔をしていた。そりゃそうだ。
「よ、よぉ勝治」
一応挨拶しといた。
「あ、ど、どうも」
どうやら同一人物とは認識されてないようだった。
ちょっと悪ふざけしてみようか。
「どうもじゃねぇよ、お前さん俺をなんだと思ってんの?」
ちょっと威圧してみた。勝治は状況が理解しきれておらず、目がぐわんぐわん動いていた。
俺が俊介達の目の前でこうなってたのかと感じるとちょっと恥ずかしくなった。
「俺...ですか?」
「ちげぇよ、お前さんふざけんなよ」
威圧に威圧を重ねて遊んでいたら、後ろから俊介に頭をチョップされた。
「違わねぇだろうが、ごめんな勝治。コイツはお前だ、俺らは何分か後から来たんだ。警告も兼ねてな」
なんだか妙な気分だ。俊介が俺に注意をし、俺をなだめたのだ、すごく奇妙だ。
「貴方達今から彼女を助けに行こうとするみたいだけどそれはやめることをおすすめする、失敗するのよ」
ミレイ・ノルヴァの警告にはなんというか恐怖を感じる部分がある。これは無意識でやってるのだろうか?
「失敗?」
過去の俊介が声を出した。
「あぁ、天界から追っ手が来るほど危機的な状況になる」
過去の俊介とミレイ・ノルヴァはどちらも状況を察したようで、二人で顔を見合わせて頷いていた。
この光景をここに来る前にも見た。
ただ勝治、俺だ。
自分に言うのも変な話だが、俺の目の前にいる俺は本当に情けない...。
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