第17話:罪滅ぼしの方法
空気が凍る、重々しいぐらいに凍る。
「罪滅ぼしねぇ...勝治、お前に出来る事ってなんだ?って聞かれて、お前はすぐに答えられるのか?」
出来ない、出来るはずもない。
でもこれだけは自分の気持ちが逆流するのだ、まるでゲロってる時のような感覚。
次から次へと気持ちが逆流する。
「あぁ、分かってる。俺は無力だ、でもそれでもなんとか役に立ちたいんだ。迷惑をかけたのは知ってる。だからこそ罪滅ぼしをしたいんだ!」
沈黙が走る。俊介が何かを言おうとしていたが、発言に慎重になっているのが伺える。
「あのね勝治、別に貴方は悪くないの。根本的な問題として、俊介が貴方を神の試練に誘わなければこの問題は起きなかったの。でも私警告したよね? [自重しなさい]って、これの意味分かって無かったでしょう?俊介貴方も同じよ、やっぱり私の警告通りになったでしょ?」
先に口を開いたのはミレイ・ノルヴァだった。
「自重、知ってた。でも俺はその自重さえできなかった。そんな無力すぎる俺はどうやって罪滅ぼしすればいいんだよ。させてくれよ!」
気が荒立つ、テンパるとは違う。純粋な怒りがこみ上げてくる。
「その時点で自分が自重できてない事に気づきなさい、貴方は無力なんかじゃない、自分のせっかく持っている能力を無駄にしているだけ。バカなだけ」
気が荒立つ、純粋な怒りからくる気の荒れというのは、煽られるとまし、冷静さを欠いていく。
「誰が馬鹿だ!、未来を変えることの重要性は人間なりによく理解している。殺人鬼がその証拠だ。変える前は読めなかった記憶が読めるようになっているんだよ、コイツはもう無意識殺人なんかじゃない。ただの快楽殺人鬼に変わってるんだ」
俊介とミレイ・ノルヴァの表情に驚きが現れた、気づいていなかったようだ。
嬉しかった反面ちょっと悔しかった、先に気付く事が出来たのは嬉しいのだが、アイツ等が興味のない事ばかりに一生懸命になってるような気がして俺はとても悔しかった。
「よく気付いたな勝治、お前意外と冷静なんだな」
俊介から思ってもいなかったコメントが飛んできた。
「ただ同時にやっと見つけたよ、あれほどの行動を起こしたんだから、時間にズレが生じてるはずがない。でもどこがどうズレたか、なんてのは俺等でも分からなかったんだ。お手柄だな」
思ってもみなかった事の衝撃が、ちょっとしたコメントで連続した。
それこそ連続パンチを喰らったような感覚。
俺の思い過ごしだった。彼等が興味ないことだったのでは無く、純粋に彼らの気付けなかった事に気付いただけだったのだ。
記憶を改竄する能力。ミレイ・ノルヴァの言う通りだった、使い方次第だ。今まで散々使っていたのにこれほどまでに難しい難題に遭遇するとは、思ってもいなかった。
「お手柄?」
「あぁ、お手柄だ。これでなんとか言い訳作りができそうだ」
俺は嬉しそうな顔をしている二人に頭を下げた。
理解できない事が連鎖している。神の常識はそんな世界で、俺じゃぁそこに付いて行けない事ぐらいはもう分かってる。
でも俺はここについていかないと行けない。
そしてなにより罪滅ぼしをしたい。
「やっぱり俺に罪滅ぼしをさせてください!」
俺は2人に深く、頭を下げた。
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