第16話:罪滅ぼし

追っ手が来る...追っ手というとやはり神なのだろうか?


「追っ手の神ってどれ程の実力なんだ?」


「神じゃない、使い魔...天使っていうと分かりやすいかい?」


天使...使い魔...天使?


「う~ん、じゃぁその天使さん達はどれ程の実力者なの?」


空気が重い、二人共命の危険を感じているのだろうか?


「まぁ貴方からすれば神みたいなものよ、神の世界だと単純な物を司る神であればあるほど優劣が低く、逆に複雑な物を司る神は優劣が高いの」


「だからコイツエリートなの」

俊介は笑い飛ばした。


「実際問題今は神じゃ無いからエリートもクソもないんだけどね」


神程の神聖な立場でクソと....まぁ流石にもう慣れた。


「で、追っ手としてくるのはその単純なものを司る神」


「私の以前の部下たちも追っ手として来る事になると思うの、それが嫌だったからあまり過去の世界に干渉したくなかったのだけど、やらかしてくれたわね、勝治」


ショック


ショッキングと言ったりもするが、体感として感じたのはこの時だった。

衝撃とは違う。罪悪感とも違う。テンパるとも違う。

ただそこにあった感覚は、ショックそのものだった。


ここに来て俺はやっと、自分の過ちに気付いた。


「で、でも俊介達だってあの大男を....」


「私達が過去に移動している時点で時間には干渉することになるの、私が昔作った運命と時間の決まりじゃぁ、時間に触れた時点で運命に微妙なズレが生じるの。そのズレは完全に私のミスだったんだけど、偶然に偶然が重なって、時間を変えた時に起こる問題点を圧倒的に減らすことに成功したの。でもね、それのせいで元々死ぬはずのなかった季子が死ぬ事になりそうだったから私たちでそれを止めたの」


そう言ってミレイ・ノルヴァは深くため息をついて、冷たい視線でこう言った。


「本来の過去で、貴方は季子を押さえつけたりしていないのよ?」


ショックの感情はとてつもない、それこそ無数の感情を産む。


怒り、悲しみ、罪悪感、そして狂気。


俺は俯き、考えた。

目の前が暗くなっていく、自分で自分を追い込んでいる。

自分の思考が自分を追い込んで行く。


この人達は自分の能力で感情のコントロールなんて簡単に出来るかもしれない。

俺は自分の無力さを知った。

彼等は神に匹敵する能力を持っているし、片方に関しては元女神だ。

自分はなんだ?

ただ記憶を改竄するだけ。事実をねじ曲げれるわけでもなく、新しい能力も発現させられず。ただ他の人間を見て

--あぁ、自分はほかの人が持っていないこんなに素晴らしい能力を持っているんだなぁ

といった優越感に浸っていただけどただの無力で醜い人間。


「罪滅ぼしがしたい」

俺の口が無意識でそう呟いた。

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