第11話:神の正体
警告....見ず知らずの女性にいきなり警告され、命の危機を感じながらも気づいたときにはその対象が消えている。
そんな不思議な体験が、そんな理解できるはずのない体験を、今俺はしたのだ。
そしてその現象を理解できた。
【時と運命を司る女神】...重要なのは【時】だ。
彼女がさっき見せたパフォーマンスの種は【時】だ。
ふざけんな、時を自在に操れる?
神の資格を持つ者が異能力者達だとしても、あれはチートすぎるだろ。
俺はここ最近、普通では理解できないような事を連続で体験した。
しかし、それらは全て【神の常識】なのだろう。
ここまできてやっと俺は、神になろうとしているという事を理解できた。
しかしまぁ。ミレイ・ノルヴァ、あの人だけは敵に回したくないな。
「やぁ勝治、今帰りかい?」
聞き覚えのある声、俺を神の道へと無理やり持ってきた張本人のお出ましだ。
「あぁ、ちょうどいいところにいてくれた、ミレイ・ノルヴァについて聞こうと思ってた所なんだ」
彼の表情が変わる、予期せぬ事が起こったような、不快そうな表情。
「何?お前その名前どこで知ったの?」
当然の質問が帰ってきた、しかしこの質問は勝治の興味をより深くするものだった。
「さっき合ったんだよ、知り合いみたいだったけど誰?元女神様がなんで俺なんかに警告に来た訳?」
彼の表情に困惑が付け足された、こういっちゃ申し訳ないが、なんというか面白い顔をしている。
「何?あいつお前にまで警告しに来てんの?アホなんじゃないの?だから駄女神って言われんだよ全く....まぁ、出会ったなら仕方ないか。彼女は俺が【神の資格】を手に入れる為に殺した【殺神試練のターゲット】かな。もっとも、殺された後何とかして復活したみたいだけど。警告されたってことは、彼女が時を司る能力を持った状態で復活していることももう知ってたりする?」
「知ってる」
「だろうな、彼女は...あぁ見えてまだ完全体じゃない。本来の実力の半分、いや3/1ぐらいしか使えない。文字取り【時と運命を司る能力者】だ。彼女は神としての能力以外にも、異能力としての能力も持っていてな。能力の名前は【Lost Blank】自分の望む物のパラメーターをゼロにする能力だ」
「おいそれって...」
割と食い気味に話に入ってしまった。でも興味のゲージはもうマックスを超えていた。
次から次へと知りたい情報が増えてゆく。奇怪な気分だ。
「あぁ、俺の能力【ウッドソード・ロストブランク】の本家だよ。俺は神の資格を手に入れる為にまず異能力を手に入れないと行けなかった、まぁ厳密に言うなら異能力は異世界転移のついででもらったんだが...」
「異世界転移?というか、お前の能力って生まれつきじゃなかったのかよ?」
「人の話に割り込む奴だなお前は...いいか勝治、これだけはしっかり頭に入れとけ。重要なのは【情報】だ、相手が人間なら尚更。お前はその記憶を改竄する能力のせいで人から情報を聞き出す能力が劣っている。平均以下、クソぐらいだ。相手の人間からどれほど情報を引き出して、それをどう組み合わせるかで物事の勝敗は決まる。人の話に割り込んだ瞬間、そこでその情報は途切れるとだけ覚えとけ」
短気なのか?と思ったが、よくよく考えれば確かにそうだ。俺はこの能力のおかげで聞きたいことは記憶を改竄して聞き出せば良かった。なんというかこんな形で俺の弱点があぶり出されるとなんというか...言葉で言い表せないような気分になる。
「まぁ、話を戻そうか、天界ってのがあってな。基本的に神はその世界に住んでいる。お前らが日常的に神様と読んでる連中だ。そして天界が点になって2つの世界が結ばれている。一つは俺らが住んでいる【地球】の世界。そしてもう一つが【バーミア】と呼ばれる世界だ。わかりやすく言うと、【地球】がある世界と【バーミア】がある世界って感じだな。まぁそれぞれ異世界とだけ覚えといてもらえると助かる。俺はバーミアの世界でミレイ・ノルヴァに【ウッドソード】を引き出してもらった。能力は簡単【既にあるものを別の物に書き換える能力】だ、例えばそこらへんの車を」
そう言って俊介は右手を駐車場に停めてある車に向けた
「ウッドソード」
そう唱えた瞬間、車は光を放ち、あっという間に一枚の紙になった。
「拾って見てみな」
言われた通りに紙を拾って見た。紙にはこう書いてあった。
(これがウッドソードの能力だ、神の資格を手に入れると、自分の能力をアップグレードさせることも可能なんだぜ、ほら、地面にもう一回この紙を置けよ)
書き方に腹が立ったが、取り敢えず指示通りに紙を地面に置いた。
「ウッドソード・ロストブランク」
その瞬間その紙は再び発光し、今度は一冊の本になった。
表紙はこうだ。
(ネガティブック)
くだらないダジャレだ、しかしこれがただの本でないことはそれを手に取った瞬間に分かった。
圧倒的な負のイメージが体の中に流れ込んでくる。
目に違和感を感じた、反射的に目を瞑ってしまった。
目を開けたとき、驚いた。
下校中の生徒を見ただけで、そいつがどんな言葉を嫌うか、どんな言葉を言われたくないかが一発で分かる。
しかし俊介だけはわからなかった、おそらく神の資格を持つ者には通じないのだろう。
「どうだい?僕のウッドソードは最初は変えられるのは【物】限定だったんだけどね、物に【能力】を上乗せ出来るようになったんだ。この能力を手に入れてから...なんというか、無敵になってる気がしてね。無敵の人間が感じるのは【孤独】なんだ。だから勝治、君を神の道に選んだ...どうだい?これで一通りの説明は終わり。まぁミレイのせいで余計な事まで話すハメになったけどね」
聞き足りないことだらけだ、しかしこれ以上聞いても、常人の常識にしか慣れてない俺には理解できないという事だけは理解できた。
「はぁ....とりあえずで理解したよ、まぁ俊介がミレイの弟子にあたるんだってことだけは分かったよ」
「わかってねぇんだよなぁ....」
俊介の表情には微妙な笑みが浮かんでいる。
ひとつだけ理解した事、これだけは確かに分かった。
コイツの能力は本物だ。
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