第10話:恐怖。

朝。なんの変哲も無い朝。

起きたとき、俺の体は動かなかった。

俊介が言うに、俺は3年間寝たきりだったらしい。

そりゃ体も動かなくなる。

しかし俊介はその間の3年間を消して一日の出来事にしたそうだ。

しかし、その話にはかなりの矛盾が残る。

・3年間経っているのに俺の体が全然成長していない事

・仮に戻ってたとしても寝たきりの無限ループが起こるはずという事

しかしどれもこれも俊介の一言で解決した。


「俺の能力なんだけどな、【ウッドソード・ロストブランク】って言うんだ。能力は望むもののパラメーターを0にする事。更にそのパラメーターを固定する事だって出来る。な?無敵だろ?」


つまり、俊介はその能力で僕の寝たきりの3年間を消し飛ばし、人間としての機能以外のパラメーターを0にしたまま固定したのだ。


無敵の能力、【ウッドソード・ロストブランク】....俊介は神の資格を持つ者なんて自分を紹介していたが、彼の能力は神の資格を手に入れた時に手に入れたものなのだろうか?


圧倒的な力。全てを覆すほどの能力。神になれば本当にそんな事が可能なのだろうか。

僕は改竄する直前に相手の記憶を【読む】事が可能なのだが。

その読める範囲はわずか1日前後程度だ。

彼の記憶が知りたい。どのような人生を送り、どのようにして【神の資格】を手に入れたのか非常に興味がある。


時間が経ち、学校が終わった。小学生の頃は明るいうちに帰れたのだが...今となっては帰る頃にはもう真っ暗だ。


暗い帰り道、毎日同じ道を歩いてるとは言え、朝と夜じゃ世界が変わったかのようだ。


「はじめまして、勝治。私は....まぁミレイでいいか、私は【ミレイ・ノルヴァ】元時と運命を司る女神よ」


平均より少し大きめの女性。

銀髪の無造作ロブ、目はピンクっぽい紫色の美しい目をしている。

その瞳は、冷たく光を放っているように見えた。


「元女神様が何故俺なんかの所に?」


彼女を前にすると何故か冷たいピリピリとした空気が流れる。

これが貫禄というやつなのだろうか?

いや、女神のオーラというやつなのだろうか?


「俊介いるでしょう、彼にした警告を貴方にもと思ってね?」


警告?俊介にも?彼女は俊介とどのような関係なのだろうか?

わからないことが多すぎる。

理解が追いつかないこの感覚はとても歯がゆいものがある。


彼女は指を鳴らした。その瞬間首筋に冷たい感覚があった。

冷たくひやりとした指に触れられる感覚。

勝治は後ろに気配を感じ、すぐさま振り返った。


「う~ん、みんな同じリアクションするのよねぇ...やり方を変えるべきなのかもね」


そう言って彼女は狂気じみた笑みを浮かべた。

何をしたのか?何をされたのか?理解が及ばない。

ただそこにあった感覚は。


恐怖。


「警告?何のです?」


声が震えてしまった。

今の一瞬で俺は恐怖を感じた。

そしてもっと恐怖を感じているのが、能力差だ。


何度試しても、彼女の記憶を読めない。


「貴方、自重する事を常に念頭に入れておきなさい、自重を忘れた時、貴方や俊介。最悪私ごと神に消される事になるわ」


自重....慎重とは違うのだろうか?

ここ2日間...いや3年と2日間か、ここ最近のいろいろな出来事のせいで理解が追いつかない日々が続いている。


「まぁ、警告は終わったし...そうねぁ...もし何か貴方が私を必要とするなら、私は貴方の前に現れるわ」


そういって彼女は再び指を鳴らし、姿を消した。後には声だけが残った。


「私は元運命と時を司る女神【ミレイ・ノルヴァ】の一部。貴方が私を本当に必要とするなら、私は貴方の前に現れる...」

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