第5話:How to 記憶神
心臓の鼓動が鳴り止まない、うるさいを通り越してもはや痛い。
頭は回っている、でも理解できない。
「君は【記憶を司る神】になれるんだ、でもなれない。なるには【殺神】をしないといけない」
「殺人....?」
やっと言葉が出た、少しずつではあるが落ち着いてきているようだ。
このイメージ空間に2つの文字が浮かんできた、その文字は石のようでもあるが、柔らかいイメージも抱けた。
殺 神
「違うよ、君の言ってるのは人を殺すって書いた殺人だろ?僕の言ってるのはこっち、神を殺すんだ」
「神殺しの試験はそう簡単じゃない。君は常人には体験できないし、理解もされない沢山の体験をする事になる。因みに、僕は【時と運命を司る女神】を突破してこの資格を手に入れた」
理解が追いつかないが、なんとなくで理解できてきた。
ひとつだけハッキリしていることがある、彼は僕を【神】にしたいようだ。
「察しがよくて助かるよ、僕は君を神にしたい」
俊介に内心を当てられてしまった。
伊達に神を自重してる訳じゃないようだ。
「僕は神になんてならない。俊介、君は僕の人生を知ってるんだろう?なら僕がなんで今日この時まで生きてきたかも知ってるだろうに」
「知ってるよ、君がどうしようもないヘタレチキンだからだろ?」
空気が固まる....
一気に息苦しい空間に変わった。
「うん、期待はずれだよ、君になら理解してもらえるかも...と思った僕が馬鹿だったよ、僕は罪滅ぼしのためにここまで生き地獄を味わってきたんだ、この気持ちはどうせ誰にも分からんよ」
失望もある、しかし何よりも怒りが溢れ出てくる。
そして何とも言えない歯がゆさがある。
「いや、君の気持ちは全部知っているよ、彼女に対する罪滅ぼしだろう?くだらんな、本当にくだらないと思う。うん、クソだと思う」
クソ?ふざけんなボロクソ言いやがって。
「事実だろ?罪滅ぼしってのはただの後付け設定に過ぎない。君の本当の気持ちを教えてあげるよ」
そうすると地面から一人の人間が生えてきた、忘れもしない...この姿は。
「勝治...私、貴方のせいで死んだのね...貴方の事は恨んでないけど、私の分まで生きるって言っても貴方所詮人間でしょう?寿命が来たら死ぬ。私の分まで生きるなんて出来もしない事考えないで、罪を償って死んだらどう?」
彼女は僕を睨み続ける、許されないことをしたことは知っている。
一人、また一人と沢山同じ人間が生えてきた。
沢山の同じ人間が、僕に向かって口を揃えて言う。
「この、ヒトゴロシ」
人殺しコールは鳴り止まず、数だけが増えていく。
耳をふさいでも音は消えない。
脳に直接音が入る最悪の気分だ。
僕の体の中を何かがすごい勢いで駆け巡る、恐ろしさの強い高揚感だ。
体中を蝕んでいくこの気持ちはなんだろう、絶望もある、悔しさもある。
悲しさもある、辛いという言葉そのものを体験している気分だ。
「うるさい、やめろ...ヤメロオォォ」
僕は右手を彼女に向け、彼女を発火させた
「ギャァアアア」
物凄く耳に響く悲鳴、二度と聞きたくないような最悪な響き...僕の中にある消えかけていた罪悪感が2倍にもなって帰ってきた。
バタッ
彼女が倒れた、もう悲鳴は聞こえない。
イメージ世界なので僕のイメージが最優先される。
しかしどんなイメージの仕方をしても彼女は元には戻らない
「わかったかい?これが君の本心だよ、彼女を何度殺しても構わない。君は罪なんかこれっぽっちも感じていない。君の感じてる罪悪感は空っぽそのものだ」
「そして人間の本性なんてみんなそんなもんだ、後付け設定の空っぽな感情でみんな動く。だから君の司るその【力】が必要なんだ、分かるかい?」
記憶を司る神....人間を超越した圧倒的な精神をすべての人類持ったなら、世界はどうなるだろう。
人知を超えた世界を僕が作れるのか?
「そうすれば、君は【生きてる理由】を、空っぽじゃない【理由】を手に入れられる。どうだい?殺神試験受けてみるかい?」
神になる....冷静に考えれば素晴らしいことじゃないか。
僕は神になる。そして世界を、人知を超えさせ、神の精神を人に与える記憶神に...なる!
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