第2話:謎の執行人

今日もいつも通りの退屈な一日が始まる。

僕の生命維持線であるこの【退屈】

僕の牢獄であるこの【退屈】


今日もいつも通りの退屈な一日が始まった。


始業のチャイムが鳴る。

教師が教室に入り出席を取る。

いつも通りの退屈な時間...でも違う。

今日は違う。


教師の隣に知らない人間が一人、黒板にチョークで書かれた文字が4つ。


「斎藤俊介です。転校生です、よろしく」


そりゃ転校生ってのは見たらわかる。

でも挨拶自体はとってもシンプルでツッコミ所がない。


「今日からうちのクラスに入る俊介だ、分からないことがあったら教えてやってくれ」


いたってシンプルの【退屈】な紹介。


「どこから来たの?」


ありきたりな質問が飛んだ。


「外国じゃないけど日本でもないかな、そんな所から。」


彼の発言に極端な違和感を感じた。

日本じゃない、だとしたらそれは外国だろうが外国でもない?

教師は何故か平然とした顔をしている。


クラス中がざわめく、そりゃそうだ。

純粋に興味が沸いた、彼の過去がすごく気になる。


「好きな食べ物とかってある?」


また平凡な質問が飛んだ。一気に退屈な時間に戻すこのクラスは、僕の心情を表しているみたいですごく不快感を覚える。


「エナジードリンク、とある店の【魔女の鼻水】って飲み物が一番好きだ」


いや、食べ物って聞かれてたよな...

それ以上に【魔女の鼻水】ってなんだよ...美味いのか?


「食べ物じゃないじゃん」

クラス中に笑い声が響く。


「僕にとっては食べ物だよ」

斜め上の切り返しに更に笑い声が大きくなる。


「席は.....確か勝治、お前の隣が空いてたよな、そこに入ってくれ」


僕の席は一番後ろで一人席だった、普通こういうのは男女で混ぜるもんじゃないのか?

男男になるけど...まぁ気にしないでおこう、個人的に彼にものすごく興味がわいた。


_____________________________________

時間が流れるのは早いもので、ちょっと様子を伺ってたただけでもう昼を過ぎていた。

特にこれといって変わった事はなかったのだが、今日が初登校のはずなのに、俊介は随分準備がよかった。


給食、退屈な人間生活において、3つの快楽の一つだ。

この時間をこの不思議な俊介と過ごす日が来ると、僕に予想できただろうか?


そろそろ頃合だ、やってみようか...

俊介の記憶を改竄する。


僕は彼の挨拶の時の記憶に【自分の過去を勝治に教えよる】といった命令感情を埋め込んだ。

手馴れたものだ、こうもあっさり改竄できるようになるのにどれぐらいの時間がかかっただろうか。


「なぁ俊介、僕に何か伝える事あるんじゃなかったのか?」


「ん?あぁ、君の能力は僕にはちっとも効果を成さないって事?」


待て、このタイミングでテンパって頭が回らなくなるのいは困る。

なんだこいつ....待て....ん?

今なんて言った?


理解できない。


ただ、退屈な人生という牢獄の鍵を見つけた事は分かる。


退屈すぎるこの人生の牢獄が、強大すぎる力でこじ開けられるような、そんな感覚。

神々しいような、それでいて闇の深そうな。そんな感覚。


「待て俊介、今なんて言った?」


「まぁ、君に説明するためにわざわざこっちに転校してきたんだ、ゆっくり話させてもらうよ」

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