第2話「始まりの情報」

 この世界でのやるべきこと。


 それはこの世界の情報収集だ。


 この世界のことは分からないことだらけだ。


「とりあえず街の人に色々聞いてまわるか……」


 街での情報取集をし始めてからすでに1時間が経過していた。

 今俺は、公園のような場所でベンチに座っている。


「結構分かってきたな」


 この短時間でこの世界のことがかなりわかった——ような気がする。


 まずアニメとかのように魔法があるわけではない異世界だということがわかった。


 少し残念な気がする。なぜなら俺の中では異世界=魔法みたいのがあったからだ。


 まぁほかにも異世界には、人間とは異なる種族がいるというのが当たり前だと思っている。


 その通りでこの世界にも亜人種が結構いるようで、聞いた話だと伝説上でのエルフやドワーフ、他にも猫の耳、しっぽを持ったコラット族に鳥の羽をもったモズ族。

 まだまだ数えきれないほどの多数の種族がこの世界では存在し人間と共存しているらしい。


 自分的には猫耳をもった種族などがいてほしいという期待を裏切られなかったのは正直嬉しい。


 だが代表的な亜人種は、ドワーフとエルフの二種族だった。


 まずドワーフという種族について。

 ドワーフは人間と似ているがだいぶ小柄で人間の半分くらいしか身長がない。


 特徴的なのはそのくらいでそれ以外は基本的に人間と同じとのことらしい。伝説上では力がとてつもないくらい強いなどがあるがそんなこともないとのこと。

 それを聞いたときにとても笑われたのがまだ心に傷を残している。


 次にエルフ。

 エルフは耳が長く、背中に羽が生えていて女はとても美しく男は長寿だそうだ。

だが女は違う長寿どころか人とほとんど同じ。それに個体数が少ない。だからか知らないがエルフの国では女が生まれたときは国中を挙げて祝福をするらしい。


 羽。羽があるからと言って飛べるわけではないらしい。

 だからといって飾りというわけでもないようだ。

 それに羽を他人に触られるのをひどく拒否するらしい。

 理由はエルフしか知らないらしく人がそれを知ろうとすることは禁じられているようだ。


 さらにその羽にはまだまだ秘密がある。


 なんでもその羽は結婚するとき、もしくは自分が異性を好きになった時に消えるらしい。

 その羽が消えたとき人との見た目の区別は、はっきり言って耳を隠されたら見分けがつかないらしい。

 なんて言うか、無駄なところに異世界感というかファンタジー感があるような気がする。


 あとは人間とエルフが戦争をしているということが分かった。


 ここは最前線から一番離れた街なので、平和そのものでそんな感じには全く見えないのだが、最前線の近くの街などは荒れ果てているらしい。

 なんでも、盗賊団が住み着いてしまうほどだとか。


 その戦争に対して、ドワーフはどちらの味方にもつかずにただ傍観しているようだが、どちらかと言えば人間に協力的だそうだ。


 なんでも人がエルフの森を焼いたのが争いのきっかけらしいが、それはもうかれこれ200年ほど前で人側がすでにエルフの首都を制圧しているため長きにも及んだ戦争も終止符が打たれるとのことだ。


「…………」

 その話を聞いているとき、俺は戦争どうのこうのなんてとてもじゃないがどうでもよかった。


 そんなことよりもその話を聞いているとき、わずかながら視線を感じていたのがとても気になっていた。

 だいぶ遠かったがはっきりと人影も確認していて少女だったのだけわかっている。


 そしてその視線はベンチに座っている今でもあった。


「そこにいる少女でてこいよー!」

 俺はその少女に大声で呼びかける。


 するとその少女は姿を見せた……が俺に目もくれずに俺の反対方向を歩いていや、走って逃げて行った。

 その少女は美しい銀色の髪をしていて庶民的な服装をしている


「お、おーい!」

 俺が声をかけても振り返らずに全力疾走していった。


「まぁいいか」

 もう会うこともないだろうし。


 少なくともこの時の俺はそう思っていた。


 しかしこの出会いのせいでのちに俺の暮らしが変わることになってしまうのはまだ誰も知らない。

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