第19話 作物を育てよう
ミラノとセレヴィは呆然としていた。
ロネは目の前の出来事に驚いているようで、畑の傍らにしゃがみ、しげしげとそれを眺めている。
そこに、アノンがやって来た。
「どうした」
「……どうしたもこうしたも……」
セレヴィが呆気に取られた様子のまま答える。
控え目に指差された先を目で追ってみれば、そこには畑が。
「種を蒔いたのはつい先程なんですよ。それなのに……」
畑からは新芽がずらりと顔を出していた。
彼らが種を蒔いてから1時間も経っていないのにも拘らず、である。
それを特に驚いた風もなく見つめるアノン。
「これは血眼者の能力の影響だ」
植物の生育を異常促進させる血眼者の能力が畑にも影響を及ぼしているのだと彼は言った。
通常では成長に1年必要とする植物も、この環境下では1日とかからずに育つのだ。
それは、収穫をすぐに行えるということで。
異常な環境ではあるが必ずしも悪い方向にばかり物事が転ぶのではない、ということなのだ。
「明日には収穫できるだろう」
「成程……環境を上手く利用しようということですか」
顎に手を当てて、ふうむとセレヴィが唸る。
「すぐに食糧が確保できるのは、確かに助かりますね」
「収穫したら、次に植える分の種とかは取っておいた方がいいのよね?」
「そうだな」
畑の中心に跪き、作物に手を触れるアノン。
「クレテラが調達してくる物資には限りがあるからな。自分たちで調達できるなら、それに越したことはない」
「分かったわ」
ミラノは手に付いた土をはたいて、畑の傍から離れた。
「そろそろ食事の時間よね。仕度しないと」
「戻ります?」
「ええ。もう此処にいてもやることないし。皆食べっぷりがいいから、多めに仕込みしとかないと」
とはいっても、今のところ鹿肉以外にまともな食材はないのだが。
「ロネ、帰るわよ」
「畑仕事はおしまい?」
「うん、終わり。食事の仕度するから、手伝って」
「はーい」
ロネは作物に触れるのをやめて立ち上がる。
それに伴い、アノンもゆっくりとその場に舞い上がった。
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