第17話 畑作り

 密林の中に畑を作るのは至難の業だ。

 まとまったスペースを確保することは何より、地面の中に埋もれた木の根等の除去など、障害が多いのだ。

 土を耕しつつそれらの作業を行うことは、素人には大変な重労働であると言えた。

 特に、セレヴィもミラノも肉体労働が得意な方ではない。彼らの手でこれらの作業を担当するのは、狩猟を行うのと同じくらいに苦労を伴うことであった。

 しかし、彼らもプライドのある大人である。作業を投げるという選択肢は、彼らの中には存在していなかった。

 2人は少しずつだが、丁寧に、地面を耕し作物を育てるスペースを作っていった。

 畑興しに邪魔な木の根は、2人で協力して取り除いた。

 そうして、小さいながらも畑と呼べる場所を、彼らは作り上げた。

 その場にしゃがみ込み、セレヴィは大きく息を吐いた。

「こ、腰が……やはり、慣れないことをすると身体がびっくりするようですね……」

「服が埃だらけよ……ああ、お風呂に入りたい。洗ってさっぱりしたいわ」

 ミラノは着ている服をばたばたとはたいた。

「とりあえず、こんなものでいいのかしらね?」

 彼らが畑として耕したのは、一辺5メートルほどの広さだ。

 巨木が連なる環境では、木をどうにかせずに耕すにはこれが限界だったのである。

 しかし規模は小さいが、日当たりは悪くはない。

 作物を育てるには申し分のない環境であると言えよう。

「貰った種、蒔いちゃいましょうか」

「凄い、畑になってる」

 ミラノが畑の脇に置いていた種入りの袋を手にしたところで、ロネが通りかかった。

「2人で作ったの?」

「そうよ」

「凄い、凄い」

 ロネは畑に近寄り、しゃがんで耕された土に指先を埋めた。

 土をくしゃくしゃと揉む仕草をして、ミラノが手にした種に興味を示す。

「それ、種? 植えるの?」

「ええ。手伝ってくれる?」

「うん!」

 袋から取り出した種をミラノから受け取って、ロネは畑の隅の方に移動した。

 指先で土に穴を掘り、そこに種を1粒落とす。

 元通り土を被せて、少し場所を移動し、同じ作業を繰り返す。

「♪~」

 鼻歌混じりに作業に勤しむロネを見て、うんと全身を伸ばしミラノは笑った。

「大人が負けてられないわね。もう少し頑張りましょ」

「……そうですね」

 ゆっくりと立ち上がるセレヴィ。

 そうして、3人は畑に満遍なく種を蒔いていった。

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