第5話 決戦!

事実は常に予想の斜め上をいく。

・・・神様、絶対おもしろがってるだろ?


2月20日(月)雨

決戦当日。勝負は15時から。

前日に先生から説明がありました。

病名は『総胆管結石による胆管炎』

胆嚢という袋に出来た石が総胆管という管に飛び出し、総胆管の出口のところをふさいだり外れたりしていたというもの。


で、今回は内視鏡(胃カメラ)を入れて石を取り出します。

内視鏡を口から入れ、胃を通り越え十二指腸まで突っ込みます。

十二指腸にある胆管乳頭(胆管の出口)からESTナイフと言うハリガネの様な物を突っ込み、その穴を切り広げます。

(胆管乳頭は1ミリにも満たない小さな穴なんだって)

そこから造影剤を流し込み(角度的にカメラは入らないから)細いマジックハンドの様な物で石を掴みとり出し完了、という予定。


考えられるリスク。

1、胆管乳頭にESTナイフが入らない。

十二指腸はでこぼこしてるから穴の位置、角度によってどうしても入らない場合もあるらしい。これが一番多いそうで、2割弱の割合で入らないんだって。・・・結構高いじゃん!!

2、ESTナイフで切り過ぎる。

十二指腸を切り裂いて外まで切ると小腸の内容物が外にはみ出し腹膜炎になる可能性があるそうです。大事件だ!

3、石が大き過ぎて取り出せない。

これは中で砕いて取り出すから問題ないみたい。

考えられるリスクはこんな感じだそうです。


ちなみに普通の胃カメラ(検査のみ)だと10分程で終わるし体を横にして丸まった状態でやるんだけど今回の場合、造影剤を入れる関係でうつ伏せ状態で30分程かかるみたいです。普通のよりかなりしんどいらしい。その分麻酔も強力でほとんどの人は覚えてないんだって。

完全に意識を無くす事はしないらしいけど。


15時、手術開始。

マウスピースを咥えさせられて、肩に筋弛緩剤の注射を一本。麻酔はずっと刺してる点滴から流し込まれました。

「のばさん、麻酔を流し込みますよ~。

リラックスして下さいね~」

・・出来るか、こんな状態で!

・・・ありゃ?

・・・・覚えてない?

ここから先の事、ほとんど覚えてません。

ただあまりえづいたりはしてなかった気がする。

いや、覚えてたんだ。意識があった事は覚えてる。意識があった事も覚えてる。

「手術後すぐにこれだけ軽口言える人は珍しい」って先生に言われたのは覚えてるもん。どんな事言ったのかは覚えてないけど。

それとストレッチャー(動くベッド)から自分のベッドまで自力で動いたのも覚えてる。

ああ、あの時の記憶が消えて行く。

手のひらの上の乾いた砂がサラサラ溢れるように記憶が頭の中から溢れていく~。もったいねー。こんな極上のネタ滅多に手に入らないのに!すぐメモしとけば良かった。

ベッドに戻って朦朧としたまま知恵友に連絡して・・いつの間にか寝てました。

一時間後ぐらいかな?先生が手術の経過について説明をしに来てくれました。


「のばさん、石、取れなかった」

・・・・なに~!石、取れてないだって~!

そうなんです。石、取れなかったんです。

ESTナイフは無事入って造影剤も入れた。

石は思ったより小さかったらしい。

で、いざ石を摘もうとしたら石が見つからない!どこにもない。散々探したけど見つからず撤退したらしい。

さすがのば!予想の斜め上をいく。

先生曰く「スルッと抜けたのかも知れないし奥の方に残ってるのかも知れない。

胆管と十二指腸を繋ぐ穴は広げたからそのうち出てくると思うけど、ちょっと待ってね、てへっ♪」らしい。

(てへっ♪とは言っていない)


いやいやいやいやいやいやいやいや、

あのね、石がね、詰まるとね、痛いのね。

寝返りも打てない程痛いのね。とてもとても痛いのね。

てへっ♪じゃないのね。

(てへっ♪とは言っていない)


そしてその夜、激痛が。

入院した時と同じあの痛みだ。

Kャン玉を握り潰された様なあの痛み。

多分また石が胆管に詰まったんだ。痛い。


痛い痛い痛い。

夜9時、耐えられず看護士さん呼んだ。

痛み止めの座薬を入れて貰った。

もう恥ずかしいとか軽口言う余裕もない。

美人の看護師さんが天使に見えた。

座薬を入れて貰った後の記憶がない。

気を失った訳じゃないと思う。いつの間にか寝ていたんだろう。

翌朝目が覚めると痛みはなくなっていた。

とりあえず詰まってたのは外れたらしい。

問題は石が外れただけなのか、それとも外に出たのか?検査をしなきゃ分からない事だ。

胆管から出てくれてたのなら問題ない。

まだ胆管の中にいるなら何とかしてくれい

頼むよ、センセ~!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る