第4話追い出そうとしてくるそうですよ?
アルスは衛兵に連れられ村長の家に行く。その道中、村人が皆暗い顔をしているのに気付きアルスは衛兵に質問した。
「我の勘違いなら良いのだが、皆暗い顔をしておるな。一体何があったのだ?」
「ん?ああ、実はこの村はもう終わりなんだよ」
「終わり?どう言うことだ?」
「山賊や魔物が襲ってくるこの村に活気なんかあるはずもねえし、最近では近くにある森に危険度S+のキラータイガーがでたという。もう助からねえんだよ、この村は。だから旅人さんよ、離れるなら早いほうが身のためだぜ・・・っと、村長の家だ」
キラータイガー、どれだけ強いのだろうかとアルスは考える。一体アルスの中ではどんな厄災を想定しているのだろうか。自分が倒した魔獣がキラータイガーだと気付くのはもう少し後の話になる。
「おーい村長!見るからに怪しい自称旅人連れてきたぞ!」
「誰が見るからに怪しいだ!?」
「え・・・お前、気付いてねぇの?」
「え・・・我、そんなに不審者らしいか?」
「よくぞ参られた旅人よ。ここは終焉の村、フィス村である」
開口一番自虐から始まる挨拶をされ面食らうアルス。しかし、村長の自虐は止まらない。
「しかし、こんな何もない所へどのような用で?あ、死にたくなければこの村から道なりに進んでレーネの町に行くことを強く勧める」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。我はここに居れぬのか?皆から村から出ることを執拗に迫られてくるのだが」
アルスの疑問に一緒に来た衛兵の男が答える。
「いや、死にたいのなら別に良い。さっき道中でもいった通り、ここは山賊や魔物が襲ってくる村だ。もしキラータイガーがこっちに来なくても危険なことに変わりは無い」
「ウッセの言う通りじゃ。悪いことは言わん、ここから出て行くのが賢明じゃ」
この衛兵の男、ウッセという名前なのかとどうでもいいことを考えながらアルスは口を開いた。
「我は今身分を証明するものが無い。よってこの村の者として身分を明らかにしておきたい」
「お主、正気か?この村の者として認める為には村に最低3ヶ月は滞在してないと駄目じゃ。その時間があればレーネの町に行って銀貨一枚で身分証を発行するほうが断然早い」
村長がそう言ってくるが、アルスはきっぱりと断言する。
「金がない」
そう、金がないのだ。異世界の貨幣なんか持ってない。無一文なのだ。
「山賊や魔物は問題ない。広く浅く技術を持っておるから炊事洗濯、農作業、狩り、果ては鍛冶まで何でも出来る。どうだ?我をこの村に居させてくれぬか?」
「・・・もう何も言うまい。泊まる所はミーシャの家で良かろう?」
「おい村長!
「ウッセ。これは彼女からの要望なのじゃ。もし旅人がこの村に来たら私の家に泊めてほしいとな。幼いときから両親を亡くしたミーシャは村のために防波堤になろうとしてるのじゃろう。たとえ身を売ってでもな」
「そんな・・・」
「まあ、大丈夫じゃ。話す限りこの旅人さんはこの村の者として身分を明らかにしておきたいらしいし、下手なことは出来んじゃろ」
アルスの方をみて村長は言う。
「・・・分かった。村長がそうおっしゃるなら。おい、アルスと言ったな。ミーシャの家に案内する。付いてこい」
ウッセに連れられて村の中を歩き、ある家の前で止まる。
「ここがミーシャの家だ。くれぐれも、く・れ・ぐ・れ・も粗相の無いように」
手ぇ出したら殺すと言わんばかりの殺気を放って持ち場に戻っていったウッセを見ながらアルスは思った。
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最強の吸血鬼が異世界に行くそうですよ? 神々しい大根 @yashiron
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